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WCヨーロッパ予選第二組・・極限の闘い・・でも結局オランダはパワーサッカー「だけ」になってしまって・・アイルランド対オランダ(1−0)・・(2001年9月1日、土曜日))

この結果、アイルランドが「グループ二位以上」を決め、オランダに残されたのは、二位になるための「理論的」なチャンスだけになってしまって・・(このグループの二位チームは、アジアグループの三位チームとの決定戦!)。

 とにかくアイルランドの、よくバランスしたハイレベルサッカーに対し、そして物理的・心理的な「リーダー」として鬼神の活躍を魅せたキャプテン、ロイ・キーン(マンUでも中盤の隠れた王様!)に対して、心からの拍手を送りましょう。タイムアップの笛を聞きながら、80年代から90年代にかけて、アイルランド代表監督として、彼らのサッカーを「一皮むいた」、イングランドの英雄、ジャッキー・チャールトン(「あの」ボビー・チャールトンのお兄さんですヨ!)に思いを馳せていた湯浅でした。

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 このゲームについては、時間を追って書きつづった(書きなぐった!?)ランダムコラムをどうぞ・・

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 もの凄い! これぞ、肉を切らせて骨を断つ闘い・・。それはそうです。何といってもオランダは、この試合に勝たなければ、(アイルランドとポルトガルの残り試合の相手を考えれば!)「事実上」ワールドカップ予選で敗退ということになってしまうんですからネ。対するアイルランドは、「引き分け」さえすれば、予選第二グループでの二位をほぼ手中にする・・。こんなエキサイティングマッチは、めったに見られない。

 ヌマンが、アイルランド選手の肘打ちに、顔面から血を流したシーンでは、オランダ監督、ファン・ハールが、もの凄い形相で「FIFAの第三レフェリー」に食ってかかる・・。

 ゲームの立ち上がり、アイルランドのホームゲームであるにもかかわらず、ガンガンと押し込みつづけるオランダ・・。その二分のことでした。クライファートが、最前線で相手からボールを奪い返し、完璧にフリーな状態から狙い澄ましたシュートを放ちます。でも、ポストの右をわずかに外れてしまって・・。次には、ゼンデンが一瞬フリーになり、前に出てきたアイルランドGKの頭上を抜こうと「ロビングシュート」を放ちます。でも結局、高さが足りずにアイルランドGKの正面に飛んでしまって・・。フ〜〜

 そんな絶対的なチャンスを外しつづけるオランダを見ながら、嫌な予感がしてきた湯浅でした。ロジックではないんですが、とにかく「入らない日」は、不思議にシュートが決まらないものなんですよ。それも、決定的に重要なゲームであればあるほどネ。

 そして、前半の15分を過ぎたあたりから、アイルランド守備ブロックが、オランダの「前への勢い」に慣れ、効果的なボール奪取をみせるようになっていきます。そしてそれをベースに、鋭いカウンターを繰り出しはじめる・・。それも、しっかりと中盤で「つなぎ」ながら、最後は、オランダゴール前での「空中戦」を仕掛けてくるのです。

 そしてゲームが膠着状態に陥ってきます。極限のテンションを包含する膠着状態・・。そしてオランダの勢いが沈滞しはじめ(中盤での守備が、消極的になっていく!)、逆にアイルランドが、自信あふれるプレーを展開しはじめます。単に放り込むのではなく、しっかりと中盤で組み立てながら・・

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 後半、まずシュートチャンスを得たのはオランダ。右サイドのゼンデンから中央のクライファートへわたり、そこからのバックパスをコクがシュートします。そのシュートを途中で「カット」したファン・ニステルローイが、そのまま振り向きざまにシュートを放ったのです。GKに、横っ飛びにキャッチされてしまったとはいえ、そんなロジックな組み立てからのチャンスを見ながら、やっとオランダが「落ち着いた攻め」をできるようになってきたな・・なんて思ったものです。何といっても前半は、最初の時間帯の「スピリチュアルパワー攻撃」以降、アイルランドの、バランスの取れた「組み立てサッカー」にタジタジでしたからネ。

 その後、オーフェルマルスが、左サイドからドリブルシュートを、また中央から中距離シュートを放ちます。両方共に惜しいシュート。直後に、ゼンデンに代わり、ハッセルバインクが登場します。彼の突破力に期待・・

 その直後の後半12分のことでした。アイルランドの右サイドバック、ガリー・ケリーが、オーフェルマルスへのバックチャージで二枚目のイエローを受けてしまいます。もちろん退場! これでアイルランドは、残りの30分あまりを「10人」で闘わなければならなくなってしまいました。それに対応してアイルランドは、前線のロビー・キーンに代えて、中盤ディフェンシブのスティーブ・フィナンを投入します。

 心の中ではオランダを応援している湯浅は、逆に「これはマズいことになった・・」と思ったものです。これでアイルランドの守備意識が極限まで高まり、逆にオランダの攻めが、前へ、前へと「直線的」になってしまうに違いないと思ったからです。そして案の定、戻り気味になるアイルランド守備ブロックに対してオランダの攻め(組み立て)が、「力ずく」になっていきます。それはマズい・・マズいよ・・

 もちろんオランダが押し込みはするのですが、あまりにも「直線的」。そこに攻撃の変化が見えてこないのです。要は、ベルカンプ、フランク・デ・プール、ロナルド・デ・プール、はたまたダービッツなどの「リーダー」が不在だということです。ボランチに入ったオランダのキャプテン、コクーも、ゲームの「流れ」を変えることができなくて・・。もっと素早く、広くボールを動かさなければ・・、サイドチェンジをもっと多用しなければ・・、パス&ムーブなど、もっとコンビネーションプレー活かさなければ・・、それでも、ボールのないところでの動きが、あれほど緩慢では・・なんて思ったものです。

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 それでもオランダには、何度も決定機が訪れます。

 後半16分のことです。アイルランド守備の重鎮、ストーントンが、低いボールを「ヘッド」でGKへバックパスしようとします。ただそのパスが「ズレ」てしまい、ボールはコロコロとアイルランドゴールへ転がっていってしまったのです。またそのシーンでは、突っ込んできたオランダのファン・ニステルローイが、バックパスを「外された」アイルランドGKに、「身体」でブロックされてしまって・・。PK!? いやいや、コロコロと転がったボールは、結局ゴールを外れていき、主審のホイッスルも吹かれることはありませんでした。フ〜〜、オランダは、ほとほとツイてないナ・・

 その直後、左サイドバックのヌマンに代わり、長身のセンターフォワード、ファン・ホーイドンクが登場します。これでオランダの選手たちは、前へのパワープレーを倍加させてしまうだろうな・・そんなことを思ったものです。

 そして実際に、より「前へ」重心が移動していった後半22分。やられてしまったのです。アイルランドの一発に・・。

 アイルランドの英雄、ロイ・キーンが、左サイドでボールをキープし、オランダ選手のハードマークを外します。そしてドリブルから、後方からタックルを仕掛けられながらも、中央の味方へパスをつなぎます。そこから、右サイドをフリーで駆け上がってきたフィナンへ。そしてフィナンは、一度切り返し、逆サイドでフリーになっていたマカティアへパスを通してしまいます。「ラスト・サイドチェンジパス」が、人垣の間隙をすり抜けていく・・。マカティアは、本当に落ち着いていました。そして右足で、オランダゴールの右上角へダイレクトシュートを決めたのです。素晴らしい・・

 ここでオランダは、左サイドで爆発的な突破力を魅せていたオーフェルマルスに代え、ファン・ブロンクホルストが入ります。そうかな〜〜。オーフェルマルスの突破力は、確実にアイルランドにとって驚異だったはずだけれど・・

 そして、オランダの「力ずくの直線攻撃」に拍車がかかり(単独ドリブル勝負からの放り込みばかり・・)、アイルランドの「緑の壁」にはね返されるシーンがくり返されてしまって・・。

 それでも、後半33分には再びオランダがビッグチャンスを迎えます。全員が戻ってゴール前を固めるアイルランドに対し、その「外側」をボールを動かしながらチャンスを狙うオランダ。そして中央でボールをもったコクが、中距離シュートを放ち、それがこぼれたところを、ファン・ニステルローイが詰めてシュート! アイルランドGKが弾いたところを、別のオランダ選手が、ゴール前5メートルのところでまったくフリーになっていたクライファートへ・・。でも、クライファートのダイレクトシュートは、アイルランドゴールの右ポストをかすめてしまって・・。また最後の時間帯、クライファートが抜け出し、左足でフリーシュートを放ったり(ゴールを大きく越えてしまう!)、ファン・ニステルローイが、完璧なヘディングシュートを放ったりしましたが(右ポスト際を僅かに外れる!)、結局はノーゴール。フ〜〜

 残念ではありますが、それも、偶然と必然が交錯する「歓喜と落胆のドラマ」のうち・・ということです。

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 これでオランダは、四年間「世界の舞台」から遠ざかることになるでしょう。そして、ファン・ハールが描いていた「オランダサッカーの進展プログラム」にも黄信号がともる・・!?

 さてこれから、ドイツ対イングランドの試合を観戦することにしましょう。

 




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