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完全にリールの術中にはまってしまったパルマ・・チャンピオンズリーグ予選ラウンド三回戦、パルマ対リール(0−2)・・(2001年8月9日、木曜日)

中盤の左サイドで(パルマのペナルティーエリアの手前15メートル)、リールがボールをキープ。そのとき、前方で、スパッと、タテのスペースへ抜け出た選手がいました。リールの「ランラン」。その時点でマークしていたのは(ランランを意識していたのは)、アルゼンチン代表で、パルマでも中盤守備ブロックのコアとして抜群の働きを魅せるアルメイダ。ランランは、一瞬、アルメイダがボールを見た瞬間を逃さずにタテの決定的スペースへ向けてスタートしたのです。相手マークから「消えた」ランラン。

 「名手」アルメイダの、ほんのちょっとした「油断」を突いた決定的な動きでした。そこへ、正確なタテパスが送られたことは言うまでもありません。「全員でしっかりと守り、ワンチャンスを確実にモノにしていく・・」という「チーム戦術」が浸透しているリールの選手たちは、そんな「千載一遇のチャンス」に対するイメージを、常に研ぎ澄ませているというわけです。

 そしてランランから、(リールのスーパーストライカー、バカリが引きつけた)パルマ守備ブロックとGKの「一山」を越えるセンタリングが送り込まれます。このセンタリングは、見方によっては「ミス」。体勢的に「仕方なく」蹴ったボールが「うまく山を越えてしまった・・」とも考えられなくはないのですが、でも、ランランが、まったくフリーで、左サイドの決定的スペースでボールをもった(最終勝負の起点になった!)ということだけは事実ですからネ。そしてそのボールを、これまた「忠実」にファーサイドのスペースへ詰めていたバシールが「ゴッツァン・ゴール」を決めたというわけです。

 チャンピオンズリーグ予選ラウンド三回線、パルマ(ホーム)対リール(フランス)。後半の立ち上がり一分、アウェーゲームを戦うリールが、先制ゴールを決めたシーンでした。

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 ホーム&アウェーで行われる「予選の三回戦」。「アウェーゲームでのゴール」は、(二試合を終了した時点での)勝ち点、得失点差が同じの場合には「二倍」に換算されます。パルマにとっては、本当に痛い先制ゴールを奪われてしまったというわけです。もちろんその後パルマは、目を覚ましたようにガンガンと攻め上がりはしますが、ガッチリとした守備ブロックを構成するリールのディフェンスを崩し切れなかっただけではなく、逆に、リールのエケールに「スーパーFK」を決められてしまって・・。結局パルマは、ホームゲームであるにもかかわらず、「0-2」という痛い、痛〜い敗戦を喫してしまったというわけです。

 二週間後の8月22日には、相手(リール)のホームグラウンドで戦わなければならないパルマ。「チャンピオンズリーグ本戦への参加」に、大型のイエローランプが点灯してしまって・・

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 言うまでもなく、パルマの「攻撃の核」は、中田英寿。だから、何とかチャンピオンズリーグ本戦へ進出して欲しいんですが・・。とにかく「状況」は、これ以上ないというほど厳しいものになりました。何といっても相手は、守備での「イメージシンクロ・レベル」が欧州トップクラスのリールですからネ。こんな「厳しい状況」であるからこそ、今シーズンのパルマの真価が問われる!? フム・・

 この試合での中田は、本当に厳しいマークを受けていました(何度、引っかけられ、押されて倒されたことか!)。それでも、前半や後半でのラムーシのチャンスを「カゲで演出」するなど、勝負所では、例によっての「実効あるプレー」を披露していました。

 とはいっても、全体的なパルマのプレーには、ちょっと「スムーズさ」が欠けてしまって・・。中田がイメージする「素早く、広いボールの動き」を演出する意識が、最後まで高揚しなかったのです。

 「リールのチーム守備戦術」は、本当に統制がとれていたことは事実です。守備でサボるような選手など一人としていない(常に彼らは9人で守備ブロックを構成していた!)・・、ボールホルダー(パスレシーバー)には、簡単に振り向けないような素早いタイミングで、常に一人は当たりに行く・・、そこでボールの動きが停滞した瞬間には「プレス・サポート」が急行するだけではなく、素早く「次のパスコース」までも「組織プレス網」を構築してしまう・・。いや、すばらしい組織ディフェンスでしたヨ。

 もちろん、パルマの「攻撃における組織プレー」が緩慢だったというファクターもあるわけですが、それでもこの試合に関しては、リールが魅せた、素晴らしく忠実でクリエイティブなディフェンスの方を誉めるべきなのかも・・

 何といっても、守備に入ったときの、リール選手たちの「バランスのとれたポジショニング」が素晴らしいんですよ。ボールホルダーを抑える者、「次のパスレシーバー」を抑える者、そしてその周りで、次のサポートやカバーリングに備えて微妙なポジション修正をつづける者・・。いや、本当によくトレーニングされたチームです。

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 この試合では、「二列目」の中田が常にハードマークされているということで、フランス代表のラムーシ、両サイドのジュニオール、バキーニが、どんどんと上がっていきました。それでも、ちょっと「単発」(だからリールのディフェンダーに抑えられてしまう!)。中田にボールを回し、そこで一度、(横や後方へ)ダイレクトでボールを動かすような「相手守備を振り回すようなボールの動き」を入れてから、次の勝負の仕掛け(決定的スペースへのフリーランニング)に入っても・・なんて感じていました。

 それがうまくいったのが、前半での、中田とラムーシのコンビネーション。一度中田へパスをまわし、そこでキープできる! と判断するまで「ボールなしのタメ」を入れてから、前方スペースへ爆発ダッシュしたラムーシのクリエイティブなフリーランニングが秀逸でした。もちろん、フリーで上がるラムーシへ、中田からのスルーパスが通されたことは言うまでもありません。そして、ラムーシからの「トラバース」ラストパスを、ミロシェビッチが「ニアポストスペース」で勝負! ミロシェビッチの「チョン!」と引っかけるシュートはうまくいきませんでしたが、そんな、リール守備ブロックの「忠実なディフェンスアクションの逆を突く」ボールの動きを「もっと」演出できれば・・

 また、前半終了間際のラムーシの絶対的チャンスも秀逸でした。右サイドのタッチライン際で、バキーニにボールをわたし、自身は後方バックアップにまわる中田。そこでバキーニは、突破するゾ! という姿勢から切り返し、まったくフリーになっていた中田へバックパスを返します。そこから中田は、逆の左サイド最前線で張っているディ・バイオの後方に空いた「戻り気味のスペース」へ、サイドチェンジ気味のパスを送り込んだのです。それが勝負に瞬間でした。パスが、まだディ・バイオへ届く「前のタイミングで」、そのすぐ「右側」にいたミロシェビッチとラムーシが、決定的アクションを起こしたのです。そう、中田のパスに視線を奪われていたリール最終守備ブロックの「ウラスペース(決定的スペース)」へ向けて・・。そこへ、ディ・バイオから、ダイレクトのラストパスが通されたことは言うまでもありません。でも、まったくフリーで蹴られたラムーシのシュートが、わずかにリール・ゴールの左ポストを外れていってしまって・・。フ〜〜

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 総合力では、パルマに分があることは明らか。でも、まだ彼らの場合は、次のプレー(全体的な組み立てのリズムについても!?)互いの「イメージシンクロ」が出来上がっていないと感じます。

 次のリール戦では、「何も失うものがない」わけですから、とにかく最初から最後まで、リスクにチャレンジしつづけて欲しいモノです。もちろん・・しっかりとした「組織プレー」をベースにしてネ・・。期待しましょう・・彼らのチームパフォーマンスの「大ブレイク」を・・

 




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