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いや凄いゲーム・・極限の闘いを「体感」したレッズ選手たちは、確実に「何か」をつかみ取った!?・・ナビスコ準々決勝第2戦、アントラーズ対レッズ(2−0)・・(2001年8月29日、水曜日)

さて、どこまで耐えられるかナ・・。はじまってすぐに、この試合の「構図」が明確になりました。そして思ったものです。さて、レッズは、この「守備的戦術」で、どこまで耐えきれるのかナ・・。

 レッズは、アントラーズのツートップ、柳沢と鈴木に対し、「トイレの中まで付いていく」というマンマーク戦術を採ります。速さと、うまさのある柳沢には、秀でた中盤ディフェンダーの石井が、また日本代表のシンデレラボーイ、鈴木には、ベテランの井原がタイトマークに付くという守備のゲーム戦術で試合に臨んだのです。

 最終ラインの中央でスイーパーをつとめるのは、才能の宝庫、山田(最後まで素晴らしく集中したプレーを魅せました)。両サイドは、右が内舘、左が城定。そしてその前で「トリプル」の守備的ハーフトリオを組むのが、土橋、阿部、そして鈴木啓太。「前」には、エメルソンとアドリアーノだけが残るという「超」守備的なゲーム戦術。

 様々なファクターを考えれば、まあ妥当なゲーム戦術かもしれないナ・・なんて思っていました。またこれだったら、「サボリ屋」のアドリアーノでも、スーパーストライカー、エメルソンとのコンビで「一発」のチャンスを作り出すかもしれないし・・。

 そんな守備的ゲーム戦術の背景は、第一戦で、レッズが「1-0」で勝利をおさめていること(引き分けでも準決勝に進出!)・・、相手のホームゲーム・・、アウグストという新戦力を獲得したこと等で、調子が格段に上がっているアントラーズ・・ということです。

 アントラーズは、この二週間で、急速に「チームとしてのまとまり状態」が高揚してきていると感じます。それには、何といっても、左サイドとして新加入したアウグストの活躍が大きいわけですが、私はそれ以外にも、ファビアーノ、熊谷、ビスマルク、小笠原の復調が著しいこと(アウグストによるポジティブな刺激!?)、そしてツートップコンビ、柳沢と鈴木が絶好調を維持していることを挙げなければ・・。

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 ただ、前半も20分を過ぎたあたりから、アントラーズの「前への勢い」が、ちょっと落ち着いてきます。もちろんそれに応じて、レッズの前への勢いが少し上昇カーブを描きはじめる・・。私は、その背景に、「あまり攻め込みすぎても、最前線でスペースがなくなるだけ・・、少し中盤で落ち着いて展開していこう・・」という、何らかの「ディレクション」があったのかもしれないと思っていました。たぶんそれは、ビスマルクか、百戦錬磨のアウグスト等によるのかもしれない・・。

 そんな、ちょっとした「ゲームの流れの変化」はあったのですが、全体としては、もちろんアントラーズが押し込むという展開に変わりはありません。とはいっても、たしかに素早く、広いボールの動きや、ボールのないところでの忠実な爆発アクションなど、ハイレベルなサッカーを展開するアントラーズですが、簡単には、「守備のやり方」がカチッと決まっている(一人ひとりが、守備での役割を明確にイメージできている)レッズ最終ラインの「ウラ」を突けない・・。

 そんな降着した展開がつづいていた前半のロスタイムのことです。まず井原が、鈴木への後方タックルで二枚目のイエローを受け、直後に、最前線から守備に戻っていたエメルソンが、ドリブルで石井を振りきった柳沢を引っかけたことで、これまた二枚目のイエローを受けてしまいます。

 これで後半のレッズは「9対11」で戦わなければならない・・。フ〜〜

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 後半のレッズですが、こうなっては「危険因子」そのものとしか表現しようのないアドリアーノに代えて、トゥットが登場します。また、中盤の土橋に代わり、ストッパーの池田学がピッチに立ちます。

 最終ラインは、山田をスイーパーに、石井と池田のストッパーコンビと、両サイドバックというファイブバック。その前で、阿部と鈴木の守備的ハーフコンビが、縦横無尽に動き回って積極ディフェンスを仕掛けつづけます(それによって、どれだけ最終ラインが助けられたことか・・)。

 そして、その守備ブロックの前に、トゥットが張るという布陣です。トゥットは、前方に「孤立したカタチで張る」のではなく、ボールを奪い返すゾーンの近くまで積極的に戻り、そこから攻撃をはじめようとします。これが効果的でした。ボールを奪い返した状況で、トゥットにボールがわたる頻度が高いのです(もちろんそこは、まだ後方ポジションではありますが・・彼の持ち味は超速ドリブル!)。ボールを奪い返して最前線へタテパスを送るのでは、トゥットにボールがわたる確率が、限りなく低くなってしまいますからネ。これは、チッタ監督の指示でしょう。クレバーな「緊急事態の戦術」ではありました。

 そして、レッズの「極限状態での闘い」がはじまりました。ところが、「二人」も退場させられているんだから、攻撃はトゥットに任せて、全員で「最高の集中力を維持するディフェンス」をしなければ・・、何て思っていた後半開始早々の2分、コーナーキックから秋田にヘディングを決められてしまって・・。

 ただ、そこからが凄かった。レッズが、感動的な「闘い」を展開しはじめたのです。一人も、本当にひとりも「気を抜く」ことなく、全員が、「次、その次」という、極限の「積極的意識」で闘いつづけるレッズの選手たち。それも、最初はディフェンスだけの「次・次」意識だったのが、時間が経つにつれて、阿部が、鈴木が、はたまた定城が、内舘が、トゥットの、ドリブルでの突進をサポートするなど、「マインドの高まり」を魅せるまでに発展していったのです。それこそ、肉を切らせて骨を断つというギリギリの闘いを制するトッププロのマインド。素晴らしい・・

 それでも、流石にアントラーズ。焦って、人口密度の高いゾーンへ突進していくような愚を犯すことは、あまりありません(何度か、愚を犯しているうちに学習した!)。常に、素早く、広いボールの動きをベースに、クレバーに、あくまでもクレバーに、レッズの「確固たるユニットにまで成長した守備ブロック」を攻め立てつづけます(何度か決定的チャンスも作り出した・・)。

 そんな「状況を冷静に把握した」サッカーを展開するアントラーズだからこそ、「身体の奥底に潜む最終エネルギー」までも使い切るようなレッズの「心の闘い」に対しても、最後まで安定した闘いをつづけることができたのです。そしてそれが、延長戦での長谷川のVゴールにつながります(ビスマルクのコーナーキックから)。

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 極限の集中力で、最後まで闘い切った浦和レッズ。私は、そんな極限の闘いを「体感」した彼らが、確実に「何か」をつかみ取ったに違いないと確信していました。今後の彼らの戦いが、より楽しみになってきたではありませんか。

 




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