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パフォーマンスが、どんどん「プラス方向へ」安定してきている日本代表・・日本vsユーゴスラビア(1-0)・・(2001年7月4日、水曜日)


「熱い&暑い」大分スタジアム「ビッグアイ」での、ラジオ文化放送の解説が終了した後が大変な作業になってしまって・・。コラムを二本も完成させなければ・・

 そして今(深夜)、大分のホテルで「スポナビ」の文章を、まず仕上げて送ったところ・・ってな具合。明日は、五時半には起床し(本当に眠ることができるのかな〜〜)大分空港、羽田空港、そして成田空港経由で、ヨーロッパへ出張です。ドイツサッカーコーチ連盟主催の「国際コーチ会議」に参加するためなのですが、今回は、ドイツの首都、ベルリンでの開催になります。インターナショナル招待コーチも含めた参加者の数も、たぶんニューレコードをマークするのでは・・

 私は、アジア唯一のドイツコーチ連盟の正式会員ですから「国際招待コーチ」ではありませんが、とにかく、世界中の「仲間」たちとサッカーを語りあってきます。もちろん「講演」の間に会場のいたるところで繰り広げられる「行間ディスカッション」のことです。また、一日のスケジュールが終わった後の夕食会も、「深淵なディスカッションの場」になります。いや、いまから楽しみで・・。

 ベルリンには本当にたくさんの思い出があります。私の親友(ドイツ人)は、1974年に、クルマのトランクに隠れて「ベルリンの壁」を越えてきた「逃亡者」でしたし、私も、彼の(当時の)東ドイツに残された家族に会うために(私の親友から託されたメッセージやお土産をわたすために!)、当時の「東西ベルリンの壁」を何度も越えたことがありました。「境界線」での通過作業は、数時間にもおよぶことがありましたし、そこでの、暗室のような部屋での「身元調査」や「身体検査」などなど、とにかく当時の東ドイツには、彼の家族とのコミュニケーション以外、良い思い出はあまりありません。まあそのことについては、また機会を見て・・。

 ドイツのことや国際会議でのことは、暫時レポートしますので・・

 さてそれでは、ユーゴスラビア戦を「ポイントを絞り込んで」レポートすることにします。

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 この試合、ユーゴスラビアは、日本の「良さを消す」という戦術でゲームに臨んできました。「あの」ユーゴスラビアが、相手を意識した「ゲーム戦術」を組んできたのです。まずその「事実」に、予想されたこととはいえ、感慨深いモノがあったことを書いておかなければ。つい10年前だったら、いくら「二軍」とはいえ、考えられない現象ですからネ・・

 ともあれ、基本的なチカラでは高いモノをもっているユーゴが、守備を固めてきたのです。スイーパーを入れたスリーバック(典型的なファイブバック=そのことで、両サイドの波戸と小野の攻め上がりを抑えるという対処戦術!!)。守備的ハーフから攻撃的ハーフまでが、たしかにマークの受けわたしはやるけれど、でも基本的には「早い段階」でマンマークへ移行し、そして最後まで忠実なディフェンスをつづけるのです。これでは、日本チームがチャンスの芽を生み出せないのも道理。

 ということで、ゲームは「最初」から膠着状態に突入してしまいます。

 もちろんそれには、厳しい「気候条件」という背景もあります。なにせ、気温30度ちかくに、湿度が80パーセント・・!! これは、スタジアムの上方にある文化放送のブースでの「計測値」ですから、グラウンド上の状況は、推して知るべし・・ってなところ。ということで、両チームともに、攻撃でのダイナミズムを醸し出すことができません。もちろんその意味は、「後方からの押し上げ(=リスクチャレンジ)」が活発ではなく、どうしても攻撃での人数が足りない状況になってしまうということです。

 それでもユーゴは、セットプレーにおいて、「秘密兵器」が、少しは輝きを放ちはじめます。そうです。ピクシー(ストイコビッチ)の『正確なキック』のことです。また、彼がボールを持ったときの「周りの動きのハーモニー」にも、目立ったダイナミズムが見られるようになっていきます。ピクシーが、攻撃の最終ゾーンでボールをもったとき、周りのチームメイトたちが、ある明確なイメージをもって、「ボールのないところ」でのリスキーな仕掛けプレーを展開するのです。そのイメージとは・・「ピクシーがボールをもったら、少なくとも、変なカタチでボールを奪われない・・そして必ず、走り込むスペースへ、トライの勝負パスを送り込んでくれる・・!」。

 それに対し、小野のオーバーラップからのセンタリング以外、目立ったチャンスを作り出せない日本。まあ「引き分けや、一点差の負けだったら優勝・・」という心理も少しはあったんでしょうがネ。この状況を打開するためには、とにかく、両サイドだけではなく、戸田や稲本の機を見た押し上げが不可欠なんだけれど・・なんて思っていたその瞬間、まさにそのプレーが飛び出し、このゲーム唯一のゴールが決まってしまうのです。前半20分のことでした。

 あのシーンでの、稲本と柳沢の「ワンツー」は、見事! としか言いようがないほどキレイに決まりました。稲本の、(柳沢の体勢をしっかりと意識した!)ズバッという「ワンのパス」だけではなく、柳沢の「倒れ込み」ながらのツーのパスも秀逸。そして稲本のスーパー中距離シュート・・。いや、素晴らしい。

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 その後は、またまた膠着状態のゲームがつづきます。それでも、たまに攻め上がるユーゴの攻撃に、彼ら特有の「チラカ強くクリエイティブな香り」を感じることはありませんでした。

 そして彼らのダイナミズムも、徐々に、厳しい自然環境に呑み込まれていきます。

 もちろん彼らは勝ちたかったんですよ。戸田が、ぶつかって倒れ込んだユーゴ選手に手を貸そうとした場面がありました。そのとき、そのユーゴ選手は、戸田の手を「余計なことをするな!」といった風情で、ビシッと払いのけたのです。そんな「小さなところ」にも、彼らの「意志」だけは感じていた湯浅でした。また、二〜三本は、決定的なチャンスを作りだしていましたしね(一度は、川口のスーパーセーブに助けられ、一度は相手のヘディングシュートミスに助けられた・・)。

 対する日本も、何度かのチャンスを決められずに結局「1-0」でタイムアップ。

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 この試合で、一番目立ったことは、まず何といっても、稲本の安定したパフォーマンス。何度彼が、中盤において自らボールを奪い返し(読みベースのダイナミックディフェンス!)、そこからの素早い攻めをリードしたことか・・(二度ほど、彼自身がドリブルで最終勝負までいった場面がありました!)。

 特に、小野が交代した後半は、中盤での守備だけではなく、多くの場面で攻撃までもリードしていました。海外にいっても彼は、決して「潰される」ことなく、逆に「発展」できるだけの能力を有したプレーヤーです(もちろん本来のチカラを出し切れるまでには時間が掛かるでしょうが・・)。頼もしい限りじゃありませんか。戸田と稲本の守備的ハーフコンビが、本物の「ダブルボランチ」として機能する日が待ち遠しくて仕方ありません(ボランチについては、以前のサッカーマガジンに書きましたが、ブラジルで使われる本来のボランチの意味を尊重し、安易にその表現を使うことを控えている湯浅です)。

 またフラットスリーも、森岡を中心に、本当に安定してきています。これについても、トピックスコラム、「フラット守備システムを語りましょう・・」を参照してください。

 また、最前線の柳沢、鈴木、はたまた森島も、相手の「ウラ突きフリーランニング」や、戻ってボールを受けたときの「ポストプレー」など、良いパフォーマンスを魅せていました。

 フィリップが標榜する「全てのポジションにおける理想的な競争環境」が整ってきたと感じます。本当にフィリップは良い仕事をしているじゃありませんか。そう、「創造的な破壊者」としてネ・・(これについても、今回のスポナビのコラムを参照してください)

 ちょっと疲れ気味・・。今度はドイツからレポートしますので、ご期待アレ。では今日はこのへんで・・




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