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「世界に対する自信の深化」をベースに、真の実力を「常」に発揮できるようになった我らが代表・・日本vsパラグアイ(2-0)・・(2001年7月1日、日曜日)


どうして廣山は出てこないの・・。最後まで、期待をもっていたんですがネ。新聞には、「たしかに積極的で自分主体のプレーを展開するようにはなったが、まだ彼は、日本代表のサッカー(そのリズム!?)に慣れてない・・」という意味の、フィリップの談話が載っていたんですが、まあそういうことなんだろうナ・・なんて思っていました。

 組み立て段階での「素早いボールの動き」に乗り切れず、彼のところで、「流れ」が少し停滞してしまう・・!? 彼の特徴の一つであるドリブル勝負を強くイメージし過ぎることで、常に一度キープしてしまい、それが結果としてボールのこねくり回しになってしまう!? この試合のパラグアイを見れば一目瞭然ですが、一つひとつのステーションにおいて、「ポン、ボ〜ン!」というリズムが見られず、どうしてもボールの動きが鈍重になってしまうんですよ。アチラのリーグでは、ボールの動きがスローだということの証明だと考えても差し支えなかったりして・・

 日本代表のサッカーの特徴は、何といっても、攻守にわたる「素早い組織プレー」。そのリズムに乗り切れない選手が一人でもいたら、全体的な「ダイナミズム」が地に落ちてしまいます。それが、物理的にも、また心理的にも、サッカーが「有機的なプレー連鎖の集合体」だということの証明というわけなのですが・・

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 試合ですが、皆さんがご覧になったとおり、日本代表が「チカラの差」を見せつける内容で順当に勝利しました。その本質は、チーム総合力の差・・、というか、選手一人ひとりの「戦術的な発想の差」といった方がシックリくるかもしれません(もちろん個人的な能力で差があるとは感じられませんでしたがネ)。

 もちろん、このパラグアイ代表は「二軍」ではあります(トップチームは、現在ワールドカップ南米予選で二位!)。また彼らは、「守ってカウンター」という試合展開に「強み」を発揮するチームですから(でも、日本代表が参加した前回のコパ・アメリカでは、彼らが主体になって仕掛けられ、内容でも完敗した!)、この試合のように、早い段階でゴールを決められ、「自ら仕掛けていく」しかなくなった状況では、うまく試合を組み立てられない・・ということもあったのでしょうが・・

 ボクが言いたいことは、どんな相手との対戦でも、日本代表が、「歪んだ」心理的ファクターに影響されることなく「現実の実力の差」だけを明確に感じさせてくれるようなプレーを展開できるようになったということです。超一流のフランスとやっても、一流半のフットボールネーション代表チームとやっても・・。そう、グラウンド上で彼らが体感する「現実」だけをベースに、ビビルことなく、またおごることもなく・・

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 前述した「戦術的な発想の差」という表現は、今年三月にパリで行われた日本代表とフランス代表のときに使ったモノと同義です。もちろんその時は、日本チームが「差をつけられた」わけですが、逆にこの試合では・・

 その差がもっとも明確に感じられたのが、パラグアイの攻めと、日本の守備ブロックが対峙する状況。パラグアイは、まったくといっていいほど、日本チームの守備ブロックを崩すことができないのです。ここでいう「崩す」というのは、ブロックを振り回して、守備の薄い部分を突いたり、最終ラインの「ウラ」を取ったりするシーンのことです(これについては、数日前にアップしたトピックスコラム、「フラット守備システムを語りましょう・・」を参照してください)。

 意図的に一方のサイドでボールを動かし、素早いサイドチェンジで逆サイドを突いていったり、ドリブルで日本守備ブロックの「バランス」を崩してから決定的なボールの動きで最終勝負を仕掛けていったり等・・そんなシーンがほとんどなくて・・。後半に交代出場したクエバスくらいでしたかネ、「守備ブロックのバランスを崩す」という意味で、少しは効果的な中盤ドリブルができていたのは・・。とはいっても、そのクエバスのドリブルに「連動」する周りの動きが皆無に等しかったから、彼の「仕掛けドリブル」も単発になり、最後は(余裕をもって!?)潰されてしまって・・

 守備については、戸田、稲本の守備的ハーフコンビが秀逸でした(もちろんフラットスリーも良かったのですが・・)。互いのポジショニングバランスを保ちながら、タテに抜け出そうとする相手選手については、「最終ラインからの指示」や「自分で人数バランスを確かめ」ることで、確信をもって「行かせ」たり・・、マークに付きすぎることなく、はたまた離しすぎることなく効果的なポジショニングをとったり・・、勝負所では、ボールのないところで最後までマークしつづけたり、爆発的なアタック(スライディングタックル等)を魅せたり・・、そして「読みベース」のカバーリングやインターセプト、はたまた協力プレスを仕掛ける・・。本当に安定していました。これだったら、最終フラットラインも、余裕をもって「勝負所」を絞り込めるはずです。

 まあ、この試合のパラグアイの出来だったら、(日本代表選手たちの、自信と守備テクニックの向上も含めて!)あれくらいうまく機能して当然かな・・なんて思います。何といっても、パラグアイのボールの動きの「停滞」は(ボールのないところでの動きの停滞も含め!)もうレベルを超えていましたからね。かといって(前述したように)パラグアイの選手たちが、中盤でのドリブルで抜け出せるわけでもないし・・

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 攻撃ですが、ここでも私は、小野伸二の「前気味の中央」をもう一度見たい・・と思っていたんですが・・。

 何といっても、コンフェデカップ決勝での「屈辱(後半、トップ下の中央に入ったけれど、ボールにほとんど触れずに交代させられてしまった!)」がありましたからネ。ああいうことがあったからこそ、必ずフィリップは、もう一度チャンスを与えるに違いないと思っていたんですよ。もちろん、その選手にキャパ(期待値)があれば・・のハナシですがネ。

 私は、「あの後」のレッズの試合を見ました(コンサドーレ戦)。そして思ったモノです。「小野は、あの屈辱を、実効あるバネにした・・」ってね。やはり彼は、インテリジェンスあふれる選手なのです。そのゲームがあった次の日曜日、テレビ埼玉の「レッズ・ナビ」という番組に出演したのですが、そこでも、もう誉めるしかなくて・・(斜に構えない湯浅の真骨頂!?)

 小野のパフォーマンスアップが、本当に嬉しかったんですよ・・。私は、フットボールネーションで(もちろん日本でも・・)、何百人という「天才と呼ばれる選手」たちが、「才能の墓場」へ誘われていくプロセスを(そこでのコーチ仲間の苦悩も含めて!)「体感」していますからネ。

 本当に、同じサッカー人として、「天才の覚醒」ほど嬉しいことはありません。拙著「サッカー監督という仕事(新潮社・・2000年度のミズノスポーツライター賞受賞作です・・)」でも、『ちょっと心配なスターたち・・』というタイトルで、小野のこと、そして柳沢のことを書いたのですが、その二人が、この試合での二ゴールシーンでの主役を演じてしまって・・。自分自身にとっての「観察・分析プロセス」に対する確認という意味でも書いておくことにしました・・(ご容赦アレ!)

 たしかに、与えられたポジションは左サイド。でも小野は、(戸田や稲本による効果的なバックアップがあったことで)そこから、何度も決定的な「仕掛けの起点」になっていました(もちろん実効ある守備プレーも魅せながら・・)。それについては、そのポジション(チーム戦術的な、基本タスク=役割)の方が、「まず守備からゲームに入る!」というベーシックな「姿勢」をより強く意識できたからこそ(=より頻繁にボールに触ることができたからこそ)のパフォーマンスだった・・と考えたいですネ。

 それにしても、美しい「決定的パス」ではありました。それも二本も・・。もちろん、柳沢の「確信のフリーランニング」と決定力にも、大拍手!!!

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 今回のトーナメントは、期待に反し、「いまの日本代表」にとっての「本物のチャレンジ」にはなりそうもありません。

 彼らには、もっともっと「チャレンジ・マッチ」が必要です。その意味で、夏に行われる、(願わくば、ベストメンバーの)オーストラリア戦(本当に強いチームです!)、11月に予定されている「世界トップチーム」との対戦に期待を込めましょう。もちろん、それらのゲームを、限りなく「本物の勝負マッチ」にするための「(心理)環境整備」が必要なことは言うまでもありませんよネ(フィリップや協会の、アドミニストレーション的なウデに期待!)。

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 さて、来週水曜日の「日本代表vsユーゴスラビア」の一戦ですが、日本対パラグアイの試合結果によって、ユーゴにも「優勝チャンス」が出てきました。ここで一発、優勝賞金を二倍に跳ね上げる・・!? まあ、そんな暴挙はできないにしても、十分な「準備時間」を持ったユーゴが、(ピクシーとサビチェビッチが協力した刺激によって!?)第一戦とは見違えるチームになることは必至だと確信する湯浅なのです。

 この試合ですが、湯浅が、ラジオの「文化放送」で実況解説をします。言いたいことが一杯あるから「しゃべり過ぎ」になってしまうかもしれませんが、バカな解説をしたら笑ってやってください。では・・




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