トピックス


 

小野の発展にとって本当にいいことなんだろうか・・そんな疑問を抱かざるを得ない内容でした・・オランダリーグ、フェイエノールト対アヤックス(1−2)・・(2001年8月26日、日曜日)

「オランダのリーグは、上位と下位の「格差」が大き過ぎるからナ・・」。以前、友人のドイツ人コーチたちと、オランダリーグを話題にしたことがあります。今年7月、ドイツのベルリンで開催された「フットボールコーチ国際会議」で再会したオランダのコーチ連中も、「たしかにそうだナ。アイントホーフェンやフェイエノールト、アヤックスなんかと、中堅以下のクラブとの差が大きすぎるから、どうしても上位チームは、安易なサッカーに走りがちになってしまうんだよ。運動量豊富なチームプレーじゃなくて、足許パスばかりをつないだり、ドリブル勝負とか、一発ロングボールを主体にして攻めるとかサ・・」なんて嘆いていたりして・・。

 (ここ数週間で観たゲームも含め)この試合でのフェイエノールトのサッカーも、そんな「近年のオランダリーグの概観」を踏襲した内容でした。

--------------

 試合は、ホームのフェイエノールトが「見かけ上のペース」を握り、アヤックスが実効あるカウンターを仕掛ける・・という展開。でも、守備ブロックを固めるアヤックスに対し、前述した「単調な(変化に対するアイデアが欠如した)攻め」をくり返すフェイエノールトだから、そう簡単に相手守備を崩せるはずがありません。要は、素早く、広いボールの動きを主体にするクリエイティブなパスプレーが見えてこないから、(最終勝負ゾーンにおいて)ある程度フリーでボールを持つ選手を作り出せない・・ということです。

 一つ、ひとつのステーション(ボールホルダー)のプレーが遅い・・、ボールがないところでの動きが、まさに鈍重・・、そして足許パスをなつぎながら、単独勝負や一発ロングパス、ロングシュートやアバウトセンタリングをくり返す・・。

 それに対しアヤックスの攻めは、クレバーそのもの。(アウェーということで!)ゲームの戦い方として(ゲーム戦術として)守備を固めていますから、「前線の選手の数」が少なくなるのは当然。逆にいえば、だからこそ、チャンスがあれば「誰でも」、後ろ髪を引かれることなく最終勝負まで絡んでいける・・ということです。途中でボールを奪われても、後方の守備ブロックはカッチリとしていることで、十分に戻る時間がありますからネ。

 アヤックスは、ボールを奪い返した選手(直接そのシーンに絡んだ選手)をスタートポイントに、その選手も「確実に参加する」という決まり事を忠実に遂行しながら、本当に鋭いカウンターを仕掛けつづけました。もちろんカウンター(気味の)攻撃ですから、思い切りのよい単独ドリブル勝負で突っかけていかなければならない状況がほとんど・・。彼らの得意とするところではありませんか。

 そしてアウェーのアヤックスが、後半18分に先制ゴールを挙げてしまいます。もちろんカウンター。右サイドバック、トラベルシの攻撃参加から(フェイエノールトの前気味の左サイド選手、レオナルドが、途中で追うのを止めたから、彼のドリブルの勢いを加速させてしまった!)、正確なラストセンタリングを受けたズラタンが「ゴッツァンゴール」を決めたのです。トラベルシの突破ドリブルは、それは、それは迫力がありましたヨ。

 そしてアヤックスは、先制ゴールをお膳立てしたトラベルシが二枚目のイエローで退場になったにもかかわらず、後半36分には、今度は18歳のファン・デル・ファールトが、抜群のスピードで左サイドを突破して追加ゴールを決めてしまいます。もちろんこれも典型的なカウンター。

 その後、フェイエノールトのトマソンが一点を返しますが、時すでに遅し。直後にタイムアップのホイッスルが吹かれたというわけです。

 アヤックスは、忠実にゲーム戦術を実行し、そして結果を残しました。それに対し、ホームのフェイエノールトは・・

--------------

 フェイエノールトの攻めで目立っていたのは「足許パス」。(暑いこともあって!?)運動量がままならなかったから・・?? いや、いや・・。あれは、選手たちの「ベーシックなイメージ」が、そのままグランド上のプレーに現れたと表現するのが妥当だと思っている湯浅です。何といっても、タテやヨコに素早くボールを動かすことで相手守備ブロックを振り回し、その薄い部分を突いていこうとする「発想のカケラ」さえ感じなかったんですから・・。

 また、選手たちのタテやヨコのポジションチェンジがほとんど見られないことも目立ってしまって・・。最前線の選手が「戻り気味」にタテパスを受け、その動きで空いたスペースを二列目の選手が使う(タテのポジションチェンジ)・・、サイドの選手が中へ切れ込んでいくことで、タッチライン沿いにスペースを空け、そこを次の味方が使う・・等々。

 広く認知されている(ここ数年における)オランダリーグ全体の問題点とはいいながら、ちょっと暗澹たる気持ちにさせられたモノです。

----------------

 さて、後半から登場した小野伸二。良かったですよ、最初の15分くらいまでは・・。

 まず、後半早々に飛び出した、トマソンへの「ダイレクトでの」ロングラストパス。小野にパスが出された瞬間に、トマソンがスタートを切っていたわけですが、そんなアクションからも、小野の才能に対する「期待度の高さ」がうかがえます。その後の小野は、右サイドでの鋭い切り返しから決定的なシュートまでいったり、ワンツーから抜け出そうとしたり、はたまた積極的にフリーランニングを仕掛けたり、また守備でも、最後までボールのないところでのマークをつづけるなど、これは・・と思ったモノです。

 それでも結局、時間が経つにつれて「チーム全体のマインド」に呑み込まれてしまい、「足許&足許サッカー」に加担するようになってしまって・・。彼を中心に、チームのダイナミズムが「活性化」するのでは・・という私の期待は肩すかしをくらってしまったというわけです。

 もし、選手たち全員が意識する「決まり事(=チーム戦術)」が、今回の試合内容と合致するのだとしたら大問題。あのサッカー(選手たちの戦術的な発想)は、確実にモダンサッカーに逆行するものです。もしそうだとしたら、小野の発展にとっても百害あって一利なし・・!?

 リーグが進むにつれて、フェイエノールトのサッカーが活性化することを、願って止まない湯浅でした。

 




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]