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ちょっと「方針」を転換しようかな・・また「フェアプレイ・プリーズ!」コラムも・・(2001年7月31日、火曜日)

どうも、ご無沙汰してしまって・・。ドイツでの国際会議から帰国した後、様々な「ビジネス作業」、「連載執筆」や「スポット原稿の執筆」などに追われ、どうしても「HPのアップデート」までたどり着けなかった湯浅だったのです。

 その間、「J(1&2)」、ナビスコカップ、アルゼンチンでのワールドユース、コパ・アメリカ、はたまたドイツのブンデスリーガまで開幕してしまって・・。もちろん試合は追いかけています。また様々なメディアに文章も発表しています。そんなこんなで、どうしても「自身のHP」までは・・ってな体たらく。

 でも、ここでハタと思い返しました。「オマエにとって一番大切なのは、湯浅健二のサッカーホームページではないか・・。それがオマエのオリジンなんだろう!?」。そうだ、その通りだ!

 ということで、今までは、自身のHPと他のメディアは、まったく別の内容(テーマ=普遍的な概念へのアプローチ!)の文章を起こしていたのですが(もちろん例外もあり!)、これからは、自分が納得する文章だったら、順次「自身のHP」でも取り上げるように方針転換しようと思いはじめたというわけです。さてどうなるか・・。ご意見をお待ちしています。

 また、ケースバイケースで、文章内に「写真」も入れることにしました。もちろん「該当する写真」があればのハナシですがネ。その「トライ」として、以前にアップした「トピックス」の文章、「ドイツ便り・・その(2)・・2001年7月9日、月曜日」をモディファイしましたので、そちらもご覧ください。

 こう書いたら、「リヌス・ミケルスと一緒に映っている写真も掲示して欲しい・・!」なんていうリクエストもでるでしょうネ(彼については、ドイツ便り・・その(3)を参照!)。もちろん、リヌスと一緒の写真もあります。でもそれは、彼に断ってからでなければ・・。まあそのうちに・・と考えていますので。

 さて、ではまず、その第一回目として、数週間前に「イサイズ」で発表した文章を・・

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 世界ユース選手権・・「Fair Play Please!」

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 「ア〜ッ!!」

 そのときボクは息をのんだ。左サイドから、フランスのペナルティーエリア内へドリブルで切れ込んでいくアルゼンチンのドミンゲスに対し、フランスのメンディーが「斜め後方」からスライディングタックルを仕掛けたのだ。

 アンダー20世界選手権(ワールドユース選手権)の準々決勝。フランス対アルゼンチン。後半28分のことである。

 ドリブルするドミンゲスが大きく「右側」へボールを押し出した。そのことで、ドミンゲスにすり抜けられ、「熱くなって」追いかけるメンディーにもアタックできるチャンスが生まれた。そして彼は、スライディングタックルを仕掛け、ボールをタッチラインへ蹴り出した。状況的、タイミング的には、「明らかに汚い(危険な)後方からのタックル」というわけではない。ただそのプレーが悲惨な結果を生んだ。ドミンゲスがボールを押し出そうと、右足を伸ばした瞬間のタックルだったから、その右足が、メンディーが伸ばした左足と接触し、絡み合ったことで「押しつぶされ」てしまったのだ。グニャッと、あらぬ方向へ捻れるドミンゲスの右足。

 テレビの画像は、その瞬間を明確にとらえていた。たしかに、タイミング的、状況的にはアタックできるシーンではあったのだが・・。ドミンゲスの右足は、完璧に骨折していたに違いない。ヒザ下の脛骨(けいこつ)、腓骨(ひこつ)ともども、メンディーの脛(スネ)によって砕かれて・・。フ〜〜ッ。

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 結果としての骨折については、もう不慮の事故としか言いようがない。だが・・

 ドリブルで切れ込んでいくドミンゲスには、熱くなって追いかけてくるメンディーのアタックモーションが見えていたことだろう。だから、ギリギリのタイミングでボールを押し出そうと(メンディーのアタックをギリギリのタイミングで外してすり抜けてしまおうと)「右足」を伸ばした。またメンディーは、タイミング的に「左足」でボールを突ついてクリアするしかないから、本来ならばタックルの立ち足になるべき「左足」を伸ばした。そして少し遅れたタイミングで、実際のアタック側の足になるはずの「右足」も振り込んだ。両足をつかったスライディングタックル・・

 そのとき「悲劇」が起きた。

 ボールを「チョン!」と押し出そうとするドミンゲスの「右足」と、メンディーの「左足」が、軽く接触したのである。ボールに触る直前に、振り出した足の動きを「止め」られたことで、自然のモーションとして、着地し「踏ん張って」しまうドミンゲスの右足。そして、コンマ数秒遅れたタイミングで振り込まれたメンディーの「右足」がボールをクリアする。ただ同時に、メンディーの「左足」のスネが、倒れ込むドミンゲスの、踏ん張ったことで逃げ場を失った右足首のあたりを「押しつぶして」いた。

 このシーン、ファールになることもなく、またレフェリーからカードが出されることもなかった。ただボクは、「伸ばした左足はボールに届かない!」、また「右足のタックルが間に合わない!」と感じたメンディーが、ドミンゲスの「ボールを押し出すモーションに入った右足」を「まず」抑えるために、「左足」を思い切り伸ばした・・と思っている。実際に、メンディーの左足が、ドミンゲスの「ボールを運ぶ側」の右足を「最初」にブロックしていた。もちろんファールである。ただ・・

 そこはペナルティーエリア内。ドミンゲスにボールを「押し出されて」しまい、その直後に振り込んだ右足が入ったら・・。それこそ、見事にドミンゲスを倒して「PK」ということになってしまう。そのことを「瞬間的」察知したメンディーの、「才能」としかいいようのない、実に巧妙な「コンビネーション」スライディングタックル。表面的な見え方では、きれいなタックルに映ったことだろう。だから「おとがめ」もまったくなかった。

 ただその瞬間ボクは、スライディングモーションに入ったメンディーの、「相手の足をブロックする意図」を見逃さなかった。そしてビデオを見返すことで、そのことを確かめた。

 もう一度くり返すが、「結果」は不慮の事故だった。メンディーが、ドミンゲスのケガまでも意図していたとは思わない。ただ、それが巧妙なファールだったことも事実だし、それが「斜め後方」からのスライディングタックルだったことで、「直後」に両者の身体が危険なカタチで絡んでしまうことは火を見るよりも明らかなことだった。メンディーは、それだけ危険なスライディングを仕掛けたのである。そして最悪の結果を招いた。これでドミンゲスは、少なくとも半年以上(骨折した部分にプレートを入れるだろうから、実質的には一年以上!)、プレーすることはできないだろう。

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 この大会は、「トッププロ予備軍」の世界レベルトーナメントでもある。世界各国のトップクラブからスカウトがやってくる。そして選手たちは、そのことを強烈に意識して(自らの市場価値を高めることを強烈に意識して)プレーする。だからなのだろう、肘打ち、手や腕を使った目くらましやつかみ合い、足とボールを「同時」にかっぱらってしまうような巧妙なタックル、バックチャージ、故意に身体をぶつけたり、足を引っかけることで相手をストップしてしまうなど、サッカー進歩の源泉ともいえる「美しさ」を殺いでしまう「暴力プレー」が目立つ。

 世界サッカーの次代を担う「若き才能」たちが、全力を傾注したプレーを競っていることは確かだし、もちろん美しく、エキサイティングなプレーもてんこ盛りだ。ただ逆に、「アンチ・プレー」も、目を覆いたくなるくらい多いことも事実なのである。

 ボクは、一人のサッカーコーチとして、相手のケガを誘発しないなど、節度ある『激しい』競り合いを全面的に奨励するし、積極的に要求もする。それは、(基本的には)選手たちの闘う意志の現れであり、「グラウンド上の真実」なのである。ただそれと、(意図的な)汚く、危険なプレーとは本質的に意味が違う。

 国際サッカー連盟による、『実質的な(現実的な)フェアプレー』へのアピールが不徹底だったのだろうか。周到に組み立てられた「レフェリングビデオ」を制作し、それを選手たちに見せることで、フェアプレーに対する(要は、必罰に対する)彼らの意識を高めておくなどの「事前の準備作業」が不十分だったのかもしれないと感じた。また、レフェリーが見落した「意図的」ファールも多かった。

 若い選手たちの大会だからこそ、そんな心理的な準備が必要なのだ。そろそろ、「副審(アシスタントレフェリー=以前のラインズマン)」にもホイッスルを持たせる(主審と同等のジャッジ権を持たせる!?)など、「新しいレフェリングシステム」にトライしなければならない時期にきているのかもしれない。

 サッカーが、より「狭く」、「スピーディー」になっている今だからこそ、暴力から「サッカーの美しさ」を守らなければならない。それがなければ、確実にサッカーは衰退への道を歩みはじめる。

 




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