トピックス


チャンピオンズリーグ準々決勝、そしてミズノスポーツライター授賞式についてチョット・・(2001年4月21日、土曜日)


チャンピオンズリーグでの準決勝進出クラブが決定しました。ということで、準々決勝でのポイントを少しだけ・・

 まず、マンU対バイエルン・ミュンヘン。この試合では、(多国籍軍であるにもかかわらずの)バイエルンの「ドイツ的なソリッド・サッカー」が目立ったことをまず書かなければ。というのも、バイエルンが「相手の強みを消す」という「傾向」のゲーム戦術で勝負に臨み、見事にそれが功を奏したからです。

 要は、マンUの「素早いボールの動き」、「ギグスのドリブル勝負」、そして「ベッカムの正確なアーリークロス」などをかなり意識し、全員が「彼らの勝負所にターゲットを絞ったディフェンス」を展開するという戦術でプレーしたということです(その統一された意思が見事!)。

 アンデションを「リベロ」にしたスリーバック、基本的には「サイドバック」という意識を強烈に持つなかで、チャンスには、味方中盤のカバーリングを信頼した「吹っ切れた攻め上がり」を魅せつづける両サイドバック(タルナート、リザラズなど)、イェルミースの効果的なカバーリング機能、エッフェンベルク、ヤンカー(ツィックラー)、ショルという攻撃要員がみせた積極的な守備参加・・。

 そして、マンUの攻めでの勝負所を完璧に抑え、「我慢ベースの鋭い攻撃」を繰り出します。第一戦(マンUのホーム、オールドトラフォードでの試合)では、試合の全体的な流れでは「五分」に見えて、「実際の勝負ポイント」という視点では、完全にバイエルンがイニシアチブを握っていましたからネ。

 第一戦でのパウロ・セルジオの決勝ゴールは(結局そのゴールが決勝点となって「0-1」で終了)、「数少ない一発チャンスを狙ったパウロ・セルジオの走り込み」が雌雄を分けました。エッフェンベルクのフリーキックが蹴られた時点から、(折り返しのセカンド・ラストパスが来ることを確信した)決定的スペース狙いのフリーランニングをスタートし、シュタム、ブラウンの「視線」がボールに張り付いていることを意識して、マンU最終守備ラインの「ウラ」に走り込み、そこへピタリの「ラストパス(フリーキックの折り返し)」が送り込まれたんですから・・。こんなチャンスメイクだったら、世界中のどんなディフェンダーでも防げないでしょう。もし、このような美しい攻撃までも防げるのだとしたら、サッカーでは点は入りませんよネ。

 またミュンヘンでの第二戦における、バイエルンの先制ゴールも、マンU「フラットライン」のウラを突いた見事な得点でした。

 右サイドから攻めるバイエルン。もちろんマンUの守備ブロックは、そちらのサイドへ寄せていきます。そして中へドリブルしたエッフェンベルク(・・だと思ったんですが)から、素晴らしい「ラスト・サイドチェンジパス」が、左サイドのスペースへ走り上がったタルナートへ送られたというわけです。もちろん、エッフェンベルクの「中へのドリブル」は「動的なタメ」。そして完全にフリーでそのパスを受けたタルナートから、ゴール前「ファーサイド」の(猫の額のような)スペースへ入り込んだエウベルへ、ピタリのラストパスが通ったというわけです。

 「あの堅牢」な、マンUのフラット守備システムの「ウラ突き」が見事に決まった先制ゴール。美しい限りだったのですが、それを見ていて思いました。「たしにかフラット守備システムの長所は多い・・でも短所(リスキーな側面)もある・・要は、ポジ・ネガを相殺し、残ったものがポジティブになるのか、ネガティブになるのかが議論の対象にならなければ・・どこかの国のように、ネガティブな現象『ばかり』を待って、『それみたことか!』という議論を展開することの、いかに低レベルなことか・・」。

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 さて他の試合で気づいたことを短く・・

 アーセナル対バレンシアですが、確かにアーセナルの「個人的な才能レベル」は、バレンシアよりも上だとは感じます。でも、それを補って余りあるバレンシアの「組織と個人のハイレベルなバランス」。

 特に第一戦で感じたことなんですが、アンリ、ピレスなど、素晴らしい「個人的」な才能を擁するアーセナルの攻撃が、何か、あまりにも「個人の才能」が前面に押し出されすぎている・・と。それに対し、バレンシアのゲーム内容は、本当にスマート。標榜するのが「全員守備、全員攻撃サッカー」だということを明確に感じます。

 たしかにアーセナルのホームでの第一戦は、アーセナルが逆転勝利を収めましたが、それでも「内容」的にはバレンシアの方が上だった・・と感じたのは私だけではなかったのでは・・!? そして第二戦のバレンシアのホームゲームでは・・(バレンシアが1-0で勝ち、アウェーゴール二倍のルールで準決勝へ・・)

 わたしにとっては「順当な結果」ではありました。

 レアル・マドリードとガラタサライですが、もうこれは完全に「チーム総合力の差」が結果に現れたというゲームでした。何といっても美しかったのは、サンチャゴベルナベウ(マドリードのホームスタジアム)で行われた第二戦での、ラウルが挙げた先制ゴールと三点目。ビデオがある方は、あのゴールでの、ラウルの「決定的フリーランニング」を何度も見て、これからのサッカー観戦のための「イメージ・トレーニング」を・・とお勧めしたい湯浅なのです(何てことを言ったら、湯浅HP読者の方々には高慢な態度なんでしょうが・・ごめんなさい・・)。

 ラウルが魅せた、一点目の「ニアポストスペース」へのフリーランニング、二点目の、(動的なタメを演出した)マクマナマンの前方スペースへの爆発フリーランニング。もう鳥肌が立ちましたヨ。

 まあ、とはいっても、ガラタサライ守備ブロックの「最終勝負での集中切れ(あの状況でマークの受けわたしをイメージしていること自体、世界トップに上り詰めることができないことの理由!)」があったからなんですが・・

 準決勝のバイエルン戦では、「ゲーム戦術に長けた」バイエルンのことですから、またまた「レアルの勝負所」をしっかりとイメージして守備に就いてくるでしょう。主導権を握って攻めるレアルに対し、しっかりと守って「蜂の一刺し」を狙うバイエルン・・という展開になる!? 期待しようではありませんか・・

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 さて、昨日おこなわれた「ミズノスポーツライター賞」と「ミズノスポーツメントール賞(競技スポーツ・地域スポーツの普及・振興に貢献した指導者の方々に対する顕彰)」の授賞式について短く・・

 スポーツライター賞の選考委員長、岡崎満義氏(雑誌ナンバーの初代編集長)が、選考の背景について熱弁を振るいます。

 まず、最優秀賞を獲得した「モンゴル野球青春白書」。異文化に飛び込み、野球を通じて現地の人々との人間的な交流を深めることで一人の日本人青年(著者自身)が成長していく姿を綴った青春期(四年間、モンゴルに滞在)。現代人が忘れてしまっているかもしれない「何か」について「爽やか」に考えさせる(誰でも心の深層に持っている『モビリティー』を思い起こさせる!?)作品に仕上がっている・・との評です。「とにかく、爽やかな読後感が・・」という岡崎さん言葉が印象的でした。

 私も、著者の関根淳さんとお話ししたのですが、本当に「爽やかな」方でした。私も、彼がモンゴルへ飛び込んだのと同じくらいの歳にドイツへ渡り、スポーツの「異文化接点パワー」の奥深さを体感しました。そして、多くの「生涯の友人」と知り合いました。そのことを思い出しながら、これまた「爽やか」な、関根さんの受賞の挨拶を聞いていました。

 さて拙著、「サッカー監督という仕事」ですが、前回のトピックスでご紹介した書評内容の他に、岡崎さんの評で印象に残ったのは、「たとえば、クリエイティブな無駄走り・・とか、心理的な悪魔のサイクル・・とか、サッカーに詳しくない我々でもナルホドと思えるようなキーワードがどんどん出てくるところも良かった・・」というところでした。

 このことについて、授賞式後の懇親会で岡崎さんと話しました。「現場のコーチは、そんな短いキーワードを創作する作業を日々おこなっているんですよ。その一言で、選手たちが覚醒し、ちょっと低調になりかけているプレー内容に格段の変化が出てくるような・・」、なんてことを言ったように覚えています。

 ところで、サッカー関連では、拙著の他に、永井洋一さんが書いた「絶対サッカー主義宣言(双葉社刊)」も候補にのぼっていたことを授賞式で知らされました。そして、「そうだよな、あれはいい本だから・・」と納得していました(もちろん私も読みましたよ。いや、面白かった!)。永井さんの「独自の視点」をベースにした現状認識と、理想型に関する方向性の提示、そしてプロセスにおける課題のヒントを探す作業。彼の、サッカーに対する真摯な姿勢に乾杯!・・ってなところです。是非、皆さんもご一読アレ!!!

 最後に、ミズノ両賞の選考委員で、水野スポーツ振興会会長、そしてミズノ社長の「水野正人」さんについて短く。

 とにかく、明るく、元気な方です。話しているだけで「元の気」が沸いてくる感じがします。コーチの原点は、選手に「元気を与えられる」ことだと思っている湯浅ですから、本当に嬉しくなってしまって・・。式場でマネージメントをしていたミズノの社員の方と話しても、異口同音に、「雰囲気が沈滞していても、あの方が現れるだけで、パッと座が明るく、元気になるんですよネ〜〜」なんて・・。いや、素晴らしいリーダーではありませんか・・

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 チャンピオンズリーグの試合に関しては、ビデオを見て気づいたところがあれば、またレポートしますが、何といってもまずは、日本代表のスペイン戦。今回は現地に飛べそうもないのですが、テレビ観戦で、できる限り・・と思っている湯浅です。では・・




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