トピックス


ドイツ便り・・その(4)・・(2001年7月11日、水曜日)


さて、2001年の国際会議が終わりました。今年は、参加人数は900人くらい。ニューレコードです。それには、ベルリンという大都市の魅力、開催施設の充実、参加する顔ぶれが豪華だったこと等々、様々な背景がありそうです。

 まあとにかく、国際会議の「内容」が年々充実している(より現実に即したモノになっている)ことだけは確かです。何といっても、現場のコーチ連中の集まりですから、彼らがもっとも興味をもっている(具体的にイメージできる)テーマを優先するようになってきている・・ということでしょう。以前は、半分くらいの講演が「学問的」な研究発表の場になっていましたからネ。もちろん「科学(ロジック)」は重要です。ただ「学問」の方にベクトルが振れすぎたら、確実に現実が見えなくなってしまう・・。ということで、ここ数年は、ロジックをいかに「現場に活かしていくのか・・(逆に、トップレベルの現場で、実際にどのように理論を活用しているのか・・)」という視点が重要視されるようになってきているんですよ。まあ、当たり前の発展方向ではありますがネ・・

 組織側にしても、自分たちの「権威の高揚」をターゲットにしてしまったら、現実的なパフォーマンスの向上にはつながり難い・・ということが分かってきた!?(ちょっと言い過ぎかも・・ごめんなさい・・エヘヘ!) まあこれも、いま現在の「ドイツサッカーが置かれている状況」を反映した「現実的な(背に腹はかえられない!?)」動きではあります。何といっても彼らは、ドイツサッカーの「パフォーマンスダウン」を身にしみて感じていますからネ。現実的に、「どのように」すれば、以前のドイツサッカーが放っていた「光度」を取り戻せるのか・・

--------------

 今回の国際会議における講演テーマは、順を追って、「現代のコーチに要求される実践的な能力」、「サッカーで成功をおさめるまでの長い道のり」、「サッカーにおけるスピードとパワートレーニング」、「コンディショントレーニングという意味合いも含む、テクニック・タクティックトレーニング」、そして最終日の「2006年ドイツワールドカップへ向けて(パネルディスカッション)」。その講演の合間をぬって、「現実的なゲーム状況に即したシュートトレーニング」、「ゾーングループによる守備と、チーム戦術的なファクター」、「オフェンスにおける個人戦術」、「ゴールキーパートレーニング」、「中盤での組み立てエッセンス」・・といったテーマでの、トレーニングデモンストレーションが行われました(近くのスタジアムを借り切ったデモ)。

 どれも、より「プラグマティック(実践的)」な内容になっているわけですが、もちろんそこでは、会場の参加者との「Q&A」というか「熱いディスカッション」も交わされるというわけです。

-------------

 最終日の「パネルディスカッション」のテーマは、ユース選手をどのように育てていくのか・・。パネラー、そして参加者全員が感じている「ドイツサッカーの問題点」が、これ以上ないというくらいに「熱く」ディベートされました。

 パネラーには、ギド・ブッフパルトも参加していました。久しぶり再会。「会議が終わったら対談をやろうゼ・・」という私のオファーに、「もちろん、いいとも、会議が終わったら直ぐにやろう。時間をとるから・・」と快く応じてくれたギドでしたが、結局は、会議が終了した瞬間にテレビ局につかまってしまって・・。「ゴメンな・・」という一言を残して会場から姿を消してしまったという次第。彼とは、いろいろなことを話したかったんですがネ。まあ今度、機会をつくって長めの対談を企画しましょう。

 他のパネラーですが、まず何といっても、現在のドイツ代表チームのヘッドコーチ、ミヒャエル・スキッベが光っていましたネ(彼は、ドイツ代表監督、ルディー・フェラーのコーチですが、戦術的なことなど、彼が担っているタスクは重い!)。ミヒャエルは、今回の「U20世界選手権」(アルゼンチン)から帰国したばかりにもかかわらず、急遽ベルリンまで馳せ参じました。そしてエネルギッシュに、ドイツの問題点を語ります。あくまでも「ロジックと実践がうまくバランス」した内容を・・。インテリジェンスの高さを感じます。今度は、彼との対談も企画したいですネ。もちろん彼の立場は「ドイツサッカー協会」との契約コーチということで、話すことができない内容も多いんでしょうが、それでも、かなり深いところまでディスカッションできるはずです。

 その他では、メンヘングラッドバッハを二部から一部に引き上げた監督、ハンス・メイヤー、強豪のヘルタ・BSC・ベルリンの監督、ユルゲン・レーバー、FC・エネルギー・コットブスの監督、エデュアルド・ガイヤーなどが参加し、熱いディスカッションを繰り広げました。

 パネルディスカッションの内容の骨子については、来週にアップする予定の「Isize 2002 Club」で書く予定にしていますので・・

--------------

 もう一つ、最終日のテーマになったのが、サッカーのポータルサイト、「WWW.fussballd21.de」。

 これは、元のドイツ代表選手たちが提唱してはじまったホームページです。主な目的は、ドイツの子供たちに対する「サッカープロモーション」。会長は、ユルゲン・クリンズマンで、もちろんギドも参加しています。ドイツサッカーのスターたちが、子供たちをターゲットに、熱いメッセージを投げかけたり、サッカーをプレーする上での様々な「ヒント」を与えることで、彼らのサッカーに対する興味を喚起しようというわけです。

 世界中どこでも、子供たちの「グラウンド離れ」が大きな問題になっているんですよ。そんな状況に危機感をもった意識の高い連中が、自分たちにも何かできることはないか・・ということではじまったホームページ。このアイデアも、「誰もが情報発信者になれる」インターネットが普及してきたからこそ・・なのです。

 とはいっても、会場からは、「そんなことをしたら、子供たちがより部屋に閉じこもってしまうじゃないか・・。アンタたちスターは、そんなことに時間を使うんじゃなく、もっとグラウンドに出て、サッカーの普及に尽力すべだと思うけれどナ・・」などといった厳しい意見が飛び交ったりして・・。ただ全体的には、「とにかく何かをやらなければ・・、ということで、自分たちの利益などを度外視して自発的にはじめた積極的なアクションに拍手を送ろうじゃないか・・」といった意見でまとまったわけですがネ。

 さて、このホームページ。これから、どのような展開を見せるのか、注目していこうと思います。とはいっても、最初はドイツ語だけのようですから、注目ポイントがあったら、私が代わりにレポートすることにします。

-----------

 さて湯浅ですが、もう一日ベルリンにとどまり、明日には、フランクフルト方向へ移動を開始します。まだ何人かのコーチや、私のビジネス関連の人たちとも会う予定があるもので・・

 これでひとまず「ドイツ便り」はオシマイです。今度は、日本に帰ってから、今回の国際会議について、またその他で気づいたことについて、「ポイントを絞った」レポートを書くことにします。では・・




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]