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いや、素晴らしい・・日本代表vsクウェート代表(6−0)・・(2000年9月2日、土曜日)


まだオリンピック代表では一試合しか出場したことがない(3月のニュージーランド戦に途中から出場しただけの)ジュビロの西。その彼が、最終の「18名」に選ばれたこと、そして最終仕上げにとって大事な意味のあるクウェート戦で、いきなり先発でグラウンドに送り出されたこと。これもフィリップ・トルシエによる「チャレンジャブル」なチームマネージメントの典型的な現象・・といったところ。

 とにかく、(自身のマネージメントも含め!)積極的にリスクにチャレンジさせる・・サッカーの「質」を発展させる(自信を深める)ためにはそれしかない・・。フィリップは、サイドラインの外から西に対し「とにかく上がるんだ!」と声を掛けています。そして西は、攻守にわたって自信あふれる積極プレーを披露するのです。

 試合は、誰が見ても日本代表が攻守にわたって「内容的」に圧倒するという展開。「押し込んではいるけれども・・決定的なシュート場面を作り出すことがままならない・・」というのではなく、勢いを、どんどんと「具体的なシュートチャンス」に結びつけます。

 前半12分の明神のロングシュートからはじまり、高原が、柳沢が、西が、稲本が、中村が、中田ヒデが、はたまた後半には吉原が、平瀬が、本山が・・固いクウェートの守備を崩して、どんどんと「決定的なシュート」を放つのです。頼もしい・・

 フラットスリーの中心、松田が復帰し、中盤の「クレバー・バランサー」明神が、稲本のパートナーとして出場。そして「ヒデ」・・。中盤での攻守にわたるバランスは、かなりのレベルに達している・・それも中東の強豪、クウェートを相手にして(8人はフル代表の選手たち!)・・

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 この試合では、明神と稲本のボランチコンビが、攻守にわたって素晴らしく「実効ある」活躍を魅せました(モダンサッカーでは、やはりボランチがチーム戦術のコアなのだ!)。もちろん、何回かは、相手ボールホルダーとの「間合い」を開けすぎて「タイミング良い球出し」を演出されてしまいましたがネ・・

 この二人の「縦横のバランスの演出」は本当に秀逸。明神が「行けば」、稲本が残り、次の相手攻撃に対する人数バランスを取るだけではなく、上がり気味の両サイドの「後方スペース」もしっかりと意識するポジショニングを取ります(もちろん稲本が上がれば、今度は明神が・・)。

 特に、後半に魅せた稲本の「攻め上がりタイミング」は、もう素晴らしいの一言でした。彼が絡んだ決定的な崩しシーンを何度目撃したことか・・(クウェートの前への勢いが完全に消されてしまっていたこともありますが・・それにしても見事!)

 ボランチコンビはこの二人で決まり・・といったところです(個人的には、パープルサンガの遠藤も好きなんですが・・)。

 前半の日本代表の攻撃は、中田ヒデを中心に、両トップ(高原・柳沢)、両サイド(中村・西)、そしてボランチの一人が確実に絡んでいくという展開(13分の柳沢と高原のワンツーは見事!)。この試合では、グラウンドのほぼ全域を支配下に置いていますから、後方からの一発ラストロングパスというシーンは見られませんでしたが、それでも、素晴らしく活発なボールの動きから(チームプレーをベースに)「最終勝負の攻撃の起点」を作りだし、そこからラストパスが出たりワンツーにトライしたり、その「起点」自身がどんどんとドリブル突破にトライしたりと、本当に変幻自在。見ていて楽しいことこの上ありません。それも「あの」クウェートを相手にして・・

 組み立て段階での日本の「ボールホルダー」たちは、中田も含め、決して無理をせずにまず「ボールを動かす」という意識を持っています。対するクウェートは、ほとんどの攻めにおいてボールホルダーのところで「ボールの動き」が停滞してしまって・・これでは・・

 また、久しぶりの松田を中心にしたフラットスリーの出来もまずまずといったところでした(後半に交代した宮本・中澤と中田浩二のトリオは、一つ、二つと不安定なシーンがありましたがネ・・)。

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 「いろいろな可能性を試してみる・・」というフィリップの言葉通り、前半と後半ではかなりチーム戦術をいじります。中田を「半二列目」に上げ、中村を二列目に上げたのです(柳沢と交代した本山が左サイドを担当)。そしてそれがうまく機能します。

 クウェートの最終守備ラインは「リベロを入れるスリーバック」。前半では、柳沢、高原というツートップを相手ストッパーがしっかりとマークしているために、クウェート守備もある程度はうまくバランスして機能しました(とはいっても基本的なチカラの差があるから、日本がかなりチャンスを作り出しはしましたが・・)。

 ただ後半は、中田ヒデの縦横無尽の動きが、相手の守備ラインを混乱させました。それが(中田からのヒールキックを受けた)中村の先制ゴールにつながります。中田がボールをコントロール「しそうな」状況でスタートを切った中村。そのまま中田の「背後」を、円を描くように走り抜けます。そこへ中田からのベストタイミングのヒールパス。まったくフリーで、ゴール左サイド隅へ「パス」を決める中村。素晴らしくクリエイティブなゴールではありました。

 この試合では、中田ヒデが抜けた後に5点を決めたわけですが、そこで(中田抜きでも)鬼神の活躍を魅せたのが中村(もちろん吉原、平瀬の活躍も秀逸でしたが・・)。これほど出来の良いゲームは、中村にとっても久しぶりなのでは・・

 中田ヒデがいないと、相手を押し込んではいるけれども、最終勝負の場面における個人での積極リスクチャレンジ(ドリブル勝負、ワンツー勝負、タメなど)がうまく出てこないことから「決定的なシュートチャンス」を作り出すことがままならない・・そんな印象を払拭できなかった日本代表ですが、この試合では、本当に中村が「一皮も二皮も」むけた活躍を披露し、(交代した)中田ヒデの不在を感じさせませんでした。攻守にわたって「自分から」仕事を探すという積極的な姿勢を全面に押し出しながら・・(たしかに後半は、相手の守備が甘くなってスペースができたこともあったのですが・・)

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 中田が「一段階」前へ上がり、ワントップの後ろで中田と中村が「中央」でコンビを組んだ変幻自在なコンビネーション・・。この試合では、それも、この若き日本代表の「実効あるチーム戦術」であることが証明されました。強い相手の場合には、(中村と中田の高い守備意識をベースに)かなり効果的なシステムになりそうな感じが・・

 とにかく、ヤング日本代表の攻守にわたる「自信レベル」の高さを実感し(だから彼らのチカラが常に100パーセント発揮される!)、次のモロッコ戦が楽しみで仕方なくなった湯浅でした。彼らは世界の強豪ですからネ・・さて・・

 今日はこれからスカパーの生中継、ドイツ対ギリシャ(2002ワールドカップ地域予選)を解説するためにスカパーのスタジオへ向かいます。一日に二試合も「エキサイティングゲーム」を楽しめる・・コーチにとってこれ以上の刺激はありません・・




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