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オーストラリア報告(6)・・本当に惜しい勝負を落としてしまった日本オリンピック代表・・日本対USA(2-2、PK戦、4-5)・・(2000年9月23日、土曜日)


中田がPKを外し、準々決勝で敗退・・。それは、「世界」で勝つことの難しさを象徴していたように思います。本当に残念で仕方ありません。彼らには、もっと「本物の舞台での経験」を積んで欲しかったのに・・。それでも、我々が、これほどまでに大きく期待を膨らませられるような(もちろん2002までの成長に対して)「立派な闘い」を披露してくれた彼らへ、心から感謝の意を表したいと思います。本当に、どうもありがとう・・

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 ゲーム内容は、紆余曲折ではありました。それについては、スポーツサイト、「スポーツナビゲーション」でもレポートしたので参照してください。

 試合に関する全体的な印象についてですが、まず何といっても、アメリカチームのガッツあふれるプレーに脱帽です。彼らは、本当にチーム戦術に忠実なサッカーを、全力を出し尽くして実行していました。カリフ、ヘイデュク、オブライエン、バジェナス、オルブライト、そしてトップ選手たちなど、優秀な選手もいましたし・・

 また彼らが、日本の戦術を、よく研究していたことも注目でした。リードされた後半早々には、スリートップにして、常に両サイドに選手を配置する(そのことで、両ウイングバックを引きつける)・・、三浦淳宏を投入した「日本の戦術チェンジ(フィリップの切り札)」にも、カウンターの芽をしっかりと抑えたりなど、確実なイメージをもって対抗してくる・・

 それでも日本チームは、高いフィジカル能力でしっかとした(分かりやすい・・直線的な・・)サッカーを展開してくるアメリカに対し、最後までよく闘ったと思います。それでも「戦術的な能力」では、明らかに日本チームの方が上。その象徴が、「スペース活用」についてのイメージと、実行能力でした。最初のころ、アメリカチームがビビっていたこと・・

 それでも、中村俊輔が担当する右サイド(日本チームからすれば左サイド)からの崩しが成功し出してからは、形勢が逆転します。それは、アメリカチームにとっても、自信を深めるキッカケになったのです。中村は、フィジカル的な部分で、かなり苦労していました。まあそれでも、落ち込むことなく、攻撃で実効あるリスクチャレンジを続けたり、「技術」で、何度かは相手の迫力突破を阻止したり、はたまた戦術チェンジの後も、しっかりと前後のバランスを意識しながら、危険なカウンター攻撃の仕掛け人になるなど、全体的な内容は高く評価できます。それも、ホンモノの世界との勝負だからこその(失敗をベースにした!)「発展」の結果なのです。

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 後半22分に同点にされ、相手が落ち着いたスキを突き、その4分後に、見事なゴール(酒井から中村へ、そして夢のような正確なセンタリングが高原へ・・)で再び突き放す・・。理想的な試合展開ではありませんか。そのとき、このチームは本当に強くなった・・と思ったものです。またその後も、アメリカの大パワー攻勢にも、後半最初の頃のようなドタバタ感がなくなり、戦術チェンジによる、素早く危険なカウンターを何本も決めたりして、本当に、これで試合は決まったな・・なんて思っていたんですが・・

 それにしても、あのレフェリー。誰がみてもアンフェアな笛を吹いている。下手なだけならば許せますが、明らかに「アメリカ」を意識していることを感じました。彼らに有利な笛ばかりが目立ってしまって・・。だから日本のカウンターの芽も、高原や中田が(後方からチャージされて)倒されることでつぶされてしまって・・

 もちろん最後のPKの場面については、何ともコメントのしようがありません。こちらは正確に見えているいるわけではないのですからネ。でも私は、「よし! ここまで苦しい展開になれば、彼らの経験レベルも、極大化する・・。そしてそれが次の発展につながる・・」なんて確信してはいました。

 そして延長での、何本もの決定的カウンター、そしてシュート。そのカウンターでは、中田、中村、高原のトリオに、後方から、三浦が(彼のドリブル突破能力はホンモノ!)、酒井が、稲本が、はたまた明神が積極的に絡んでくるようにもなりました。

 特に延長前半11分に放った中田のシュート(典型的なゴール右隅への『パス』!)が惜しかった・・というよりは、相手GKを誉めるべきか・・

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 私は、オリンピック代表が、明確に「何らかのブレーク」をしたと思っています。

 ホンモノの勝負の舞台。相手は世界の一流。だから様々なことが見えてきた・・。

 南ア戦では、相手のレベルを超えた突破能力に何度もビビる場面があったし、スロバキア戦では、守備をガッチリと固められて苦しみ抜いた。またブラジル戦では、限界まで気合いが入る「世界」に対し、(前半はじまった早々に失点したこともあって?!)吹っ切れた闘いを展開できたものの、結局は、流れのなかからは全くチャンスを作り出すことができなかった・・

 ただし、だからこそ、本当の意味での『差』を実感し、次の発展につながるさまざまな「課題」を発見することもできた・・。彼らが、自らの持てる力を限界まで発揮できたからこそ(それが『ブレーク』の意味の本質かも・・)、「ホンモノの課題」が明確に見えてきたということです。

 それについては、また別の機会に触れることにしましょう。何か、もうアタマが回転しなくなってしまって・・

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 これで私は帰国することにします。決勝は、日本でのテレビ観戦。それでも、まず、チケットも含めて、いろいろと予約してあったものを(最低限の違約金で!)キャンセルしたり、航空便を変更し、シートを確保したりなど、いろいろとやることが山積みなので、本当にすぐに帰国できるかどうかは不明です。

 もしかしたら、シドニーで準決勝を観戦してから帰国することになったりして・・。そのときは、「スペイン対USA」をリポートしましょう。アメリカが、「あの」スペインにどこまで対抗することができるのか・・それを見定めたい気持ちもあるので・・

 それにしても、これからアメリカは不気味な存在になりそうな予感がします。来週のサッカーマガジンの「1/4」コラムでも、そこのとこを書きましたので(日本戦の前に原稿を送りましたから、日本と対戦すること自体も知らない段階でした)、ご覧アレ・・

 それでは、明日からの「事後処理」のためのエネルギーを蓄えるために、少しは寝ることにします。お休みなさい・・




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