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オーストラリア報告(3)・・苦しみ抜いて手にした勝利・・日本vsスロバキア(2−1)・・(2000年9月17日、日曜日)


いま、現地時間で午前三時。スポーツナビゲーションや報知新聞の原稿、はたまたサッカーマガジンの記事を上げたところです。

 この試合の総括は、スロバキアという優秀なフットボールネーションが「守備固め」で向かってきたら、簡単に崩せない・・、だから勇気をふり絞った極限のリスクチャレンジが必要・・、その意味でも、この試合は良い経験になったはず・・といったところでしょうか。

 もちろん、人数をかけ、徹底的に守備を強化するチーム戦術の(ある程度優秀な?!)相手に対抗するのは、いくらチカラの差があったとしても簡単ではないことは分かっているのですが・・、それでも、上記メディアに載せた文章の骨子は、(私の期待値も含めて・・)日本チームに、強化守備戦術を崩すだけの「変化」が足りなかった・・ということにしました。

 パス狙いだけでは、彼らの組織された守備ブロックを崩せるはずがないから、しっかりとボールを動かす組み立てをベースにしながら、「より」、中盤からのドリブル突破トライ、ロングパス・サイドチェンジパス、はたまたロングシュートなどの攻撃の変化が、決定的に重要な意味をもってくる・・それです。

 前半では、25分の、中村俊輔が魅せた「中盤でのドリブル突破」が秀逸でした。ただ、出てきた「変化」はそれくらい。(前半の)稲本が、守備にとって脅威になる「見慣れないヤツ」として、二度ほど前線へ顔をみせたり、中田ヒデが、何度も中盤からのドリブル勝負で、相手守備の崩しの芽を演出しようとはしましたが、やはり不十分(単発アクション?!)・・

 結局、チーム戦術的な「変化」によって「ゲームが動く」のを待つしかなかったことには、チト寂しい思いがしたものです。

 その「チーム戦術的な変化」とは、後半8分の、柳沢の代わりに酒井を投入することで、中田を「1.5列目」へ、また中村を二列目中央へ上げる(ワントップにする)という、例の「システム変更」のこと。そしてそのあたりから、明らかにスロバキアの重心が「前」へ掛かりはじめたと感じられるようになります。それも、前後の組織バランスが「少し」崩れ気味の状態で・・

 また、やっと三浦が、中盤からのドリブル突破にトライする(後半19分)など、日本チームにも、徐々に「マインドの変化」が感じられるようになります。ゲームが動いてきた・・これはチャンスがくるゾ・・、そんなことを思ったものです。

 そして後半22分、そんな「雰囲気のポジティブ変化」が現実のゴールとなって結実します。スロバキア選手たちが前へ攻め上がり、日本のペナルティーエリアまで迫る・・。ただそこで中澤が身体を張って守り、すぐに左サイドでフリーになっていた三浦へパスをつなぐ・・。三浦の前には、まったく一人のディフェンダーしかいない・・。そしてその後方には、太平洋のような広大スペースが・・

 あっ、そうそう・・ちょっと脱線して「三浦」についてですが、前半の彼の出来には、私は本当にアタマにきていました。右サイドだったから・・?! そんなのは何の言い訳にもなりません。何度彼が、勝負しなければならない場面で、安全パスを出して責任回避したり、足が止まるなど、プレーに積極的に参加しないシーンを目撃したことか。彼に期待されていたのは、右サイドでの積極的な突破チャレンジではありませんか!!

 彼には「天賦の才」が備わっています。また私は、最近の彼のプレーに、明確に「天才の覚醒」を感じていたものです。それが、肝心な「勝負の場」での消極プレー。本当に、アタマにきていました。ですから、このコラムの最初のところで「後半19分になってやっと・・」という表現をしたわけです。彼の能力には、本当にスゴイものがあります。ですから彼には、真摯に自分の基本的なプレー姿勢を見直して欲しいと思っているのです。

 もちろん後半22分の決定的ドリブル突破、そして正確なセンタリングは見事の一言。彼が持つ素晴らしい才能の証明です。だからなおさら腹が立つ・・

 この場面で(中澤からパスを受け、相手ディフェンダーと正対したとき)私は、「ここで勝負しなかったらサッカー止めちまえ!!」と大声で叫んでいました。

 最後になりましたが・・

 この試合は、カウンター狙いのチームに対し、カウンターで勝利をもぎ取るという皮肉な結果になったわけですが(スロバキアが全てを投げうって攻め上がったこともあって、その後も、追加ゴールを含め、何度もチャンスを作り続ける)、それも、前述の選手交代による「チーム戦術的な変化」があったからこそ・・と思う湯浅なのです。

 逆に言えば、チーム戦術の変更があるまで、「選手たち自身」では、十分な「攻めの変化」を演出できなかったということです(中村、中田ヒデ、はたまた稲本などのチャレンジはありましたが・・)。彼らに、そのことを明確に認識して欲しいと思う湯浅なのです。

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 さて、ブラジルとのグループリーグ最終戦。

 もう皆さんもご存じのとおり、日本チームは「グループ一位通過」か「グループリーグ敗退」かというところまで追い込まれました(大前提は、南アがスロバキアを破ること!!・・可能性は、限りなく大きい!!)。

 日本がブラジルに敗れたら、三チーム(日本、ブラジル、南ア)が「2勝」ということになり、得失点差、総得点で日本は三位になってしまいます(アトランタオリンピックの二の舞・・でも内容は段違いですがネ・・)。ですから日本は、ブラジルに勝つか、引き分けるしかないのです。

 素晴らしいことではありませんか!!! 若き日本代表が、世界の舞台で、ブラジル相手に、それも森岡、中田ヒデ抜きで、ホンモノの闘いを経験できる・・

 私は確信しています。勝負がどちらに転ぼうと、森岡、中田ヒデが出場停止だろうと、彼らが、ビビることなく、持てる「チカラ」を100パーセント(以上!)出し尽くすことを・・。そう、1998年11月の、対アルゼンチン戦のように・・

 そのためにも、三浦には、試合の後、ブッ倒れるくらいまで闘い切ってもらいます。スロバキア戦での、後半19分までのカッタるいプレーなどは、もう絶対に許されません。もちろん中村にも、酒井にも、高原、柳沢にも、稲本、明神にも、はたまたフラットスリーにも楢崎にも・・

 それは、プロとしての彼らにとって、(彼らの将来へ向けての)血となり肉となるはずです。

 そしてフィリップ。ギリギリの状況だからこそ、心理マネージャーとしてのウデが試されます。こんな「機会」はまたとないかも・・。彼にとっても、願ってもない「経験の場」のはずです。

 とにかく彼らには、我々が誇りに思えるような「立派な闘い」を熱望して止まない湯浅なのです。

 ガンバレ!!!!! 我らが「若武者」たち・・




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