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これぞ「イタリア伝統のゲーム運び」・・イタリア対ベルギー(2-0)・・・・(2000年6月15日、木曜日)


いや見事なものでした。相手のフラストレーションを極限まで高めてしまう堅牢な守備。そしてそのことで出てくる「相手の集中の切れ目」を突き、どんどんと加点してしまう。これこそ「イタリアの伝家の宝刀」といった見事な試合運びではありました。

 相手は、スウェーデンを破って波に乗る、ホストカントリー、ベルギー。試合は、互いに攻め合う展開からの前半4分。まずイタリアが、右からのセンタリングに、後方から上がっていたマルディーニが飛び込んで決定的なシュートを放ちます。その最初のシュートは、GKにはじかれてしまいますが、詰めていたインザーギが再びシュート! 結局は、GKに防がれてしまったとはいえ、「ココゾ!」のタイミングで最終勝負場面に絡んでいったマルディーニに大拍手をおくっていた湯浅でした。

 そしてその一分後(前半5分)、右からのフリーキックの場面。アルベルティーニが蹴ったボールが、スッと後方から、マークする相手の眼前スペースへ飛び出したトッティーにピタリと合います。相手と競り合いながらのダイビングヘッドシュート。先制ゴール!! 開始早々は、守備の集中が途切れやすい・・そんな「勝負所」のセオリー通りを見事に踏襲した、イタリアの一連の攻撃でした。

 ただその後は、落ち着いてしまったイタリアに対し、覚醒したようにギリギリまでリスクにチャレンジしながら攻め込みはじめるベルギー。そして9分、中央でボールを持ったビルモッツから左サイドでパスを受けた「ゴール(選手の名前ですヨ)」が、左足で中距離シュートを放ちます。ゴール左側のバーを直撃!!

 その後のベルギーの「パワープレー」は凄かった。彼らは「ここが勝負!」と感じ、どんどんと後方からプレッシャーをかけてボールを奪い返しては「最終勝負場面」に絡んでいこうとするのです。「ゴール」が放ったバーシュートが、一瞬にしてベルギー選手全員の「マインド」を200パーセント以上も高めた?! 逆にイタリアのアクティブマインドは半減?! この「マインド逆転の時間帯」が「勝負所」だと、ベルギー選手全員が感じていたに違いないのです。ただ最後はムペンザのシュート(イタリアGKがかろうじてセーブ!)で、「スーパーアクティブマインドの時間帯」が一呼吸ついてしまいます。心理ゲームだからこその勝負所ではありました。ベルギーにとっては不運・・

 その後も、強引とまでいえそうな攻めをくり返すベルギー。対するイタリアは、完璧に「カウンター狙い」。彼らの伝家の宝刀です。「一点取れば、あとは守りきってやるさ・・もちろんワンチャンスがあれば・・それがオレたちの伝統なんだ・・」と、選手全員の「プレーイメージ」が一致していることを感じます。どんなチーム戦術でも、「選手全員のイメージが統一」されたら強い!!

 ただこの試合でのベルギーの勢いは、レベルを超えていました。前半20分には、これまた無理矢理のロングボールをベルギーのセンターフォワードが胸でボールを落とし、浮き球を「強引」にシュートしようとします。そのシュートはイタリア守備に阻まれてしまいますが、その「こぼれ球ゾーン」へ最初に飛び込んでいたのは、ベルギー中盤の「ダイナモ」、ビルモッツ。シュートは惜しくも外れてしまいましたが、この「ホストカントリーの執念」が、いつかは「イタリアの伝統」をうち砕いてしまうかも・・なんて感じていた湯浅です。

 ただそこからのイタリア守備は、これこそイタリア・・といった雰囲気を醸し出します。手など身体全体を駆使し、ベルギーの大迫力オフェンスをことごとく止めてしまいます。何度か、決定的なシュート場面を作られそうにはなりますが、「最後の瞬間」には、相手の「勢い」を殺いでしまうような、何か「見えない現象」が起きている・・?! 「イタリアの真骨頂」といった守備ではありました。

 そして後半20分。「試合の雰囲気」・・というか、イタリアの伝統的な戦い方(勝負に対するレベルを超えたこだわり!)を象徴するような追加ゴールが決まります。

 「気持ち」攻め上がり気味のイタリア。ただ湯浅は、ベルギーの守備ブロックに、少し「集中力を欠いた雰囲気」を感じていました。そして案の定というか、フィオーレの「その時点」でのマーカーが、インザーギとのワンツーのアクションで簡単に置き去りにされてしまい、まったくフリーで中距離シュートを決められてしまったのです。

 たしかに、ベルギーゴールの右サイドネットを揺すった、フィオーレの右足サイドキックシュートは見事の一言でしたが、それにしても、フィオーレの「仕掛けのワンツー」に反応していた(つまりフィオーレが狙うスペースをカバーしようと動いていた)ベルギー守備選手は皆無だったのですから・・

 これが「イタリアのゲーム運び」?! しっかりと「身体全体を使って」確実に守ることで、絶対に自由にプレーさせない・・、相手は攻め込むが、最後の瞬間は、常に「何らかの制限」を受けるから、うまく攻めを成就させることが出来ない・・、フラストレーションがたまり、集中力が低下していく・・、そしてイタリアの、ココゾ!の集中攻撃にアクティブに対処できなくなっている(足が止まり、ボール&プレーウォッチャーになってしまっている)自分に気づいたときには、時すでに遅し・・ってな具合ですかネ。

 これはもう「試合巧者」としか表現のしようがない?! ベルギーが、その術中に完璧にはまってしまったといった試合展開ではありました。

 そんなに美しくもなく、目立ったファンタジーも感じない・・、それでも、「結果」にこだわり続けることで勝負にはめっぽう強いイタリア。トルコ戦、ベルギー戦ともに、(先制ゴールを奪われたことで)相手がどんどんと攻め込んできたことも幸いしたように感じますが、これから「自らが組み立て、積極的に攻め込まなければならない状況(相手に先制されたり、最初から相手に守りに入られるなど・・)」になった場合の試合展開に興味がわく湯浅でした。




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