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いろいろと考えさせられた準決勝・・イタリア対オランダ(0-0、イタリアのPK戦勝ち)・・(2000年6月30日、金曜日)


やっぱりというか・・、イタリアが、まずしっかりと守り、ワンチャンスが生まれそうな「状況」に対して鋭敏な感覚を研ぎ澄ますなかで、一発の危険なカウンターという「ワンチャンス」を狙うのに対し、やっとチームとしてチカラを発揮し始めたオランダが攻め込む・・といった構図。

 イタリアは、最終守備ラインを「五人」にして(つまりフラット気味のスリーバック)守備を強化していますから、「これはウラ取りは大変だな・・」なんて感じていました。それでも開始2分には、「三列目」から決定的スペースへ飛び出したコクーへ、二列目から下がってパスを受けたベルカンプから、素早くタテパスが出ます。最後は、イタリアGKのトルドが飛び出してきたことで、コクーのシュートがバーを越えてしまいましたが、早くもオランダが、イタリア最終ラインの「ウラ」を取ってしまったというシーンでした。

 それは、ベルカンプが戻り、後方からコクーが上がっていく「タテのポジションチェンジ」が理想的に機能したからなのですが、そのために、最終ライン中央のネスタが釣り出され、その「真ん中の空いたスペース」へ、コクーが飛び込んでいったというわけです。イタリアの守備は「フラット気味」ですから、その最終ラインの一人でも「釣り出せれば」、そこに「穴」ができる・・それを、ベルカンプ、コクーという「才能」が見逃さなかった・・というシーンではありました。

 最初の2分目のシーンでしたが、これからも「同じような」展開が続きそうなので、まずそのことをチェック、チェック! ってな具合です(でも結局、キレイなウラ取りは、あと一本くらいしかなかった!!)。

 その後はもう前述したような「基本的な構図」で膠着状態。オランダは、イタリアに「ワンチャンス」も与えません。対するオランダは、左から、右からと、どんどんとサイド攻撃を仕掛けるだけではなく、ロングシュートにトライしたり、14分には、天才ベルカンプが、ユリアーノを抜き去ってポストシュートを放ってしまいます。

 やっぱり、「強化守備」に対しては、サイド攻撃、ロングシュート、そしてたまには単独ドリブル突破狙いなど、コンビネーション(つまりパス主体・・組織プレー主体)の崩しに「個人的な変化」をつけることで攻めが危険なものになりますよね。とにかくオランダは強い!

 このベルカンプの決定的シーン、そして最初のコクーのシーン。そのとき私は、フム、これはフラット気味守備ラインの典型的なピンチかもしれないな・・などと思っていました。両方のシーンで、守備の一人が「置き去り」にされた後の「カバーリング」が遅いのです。ということは、彼らの「守備イメージ」のなかでは、より「互いのポジショニングバランス」が強調されてるということです。真ん中のネスタは、あまくでも「フラットライン要員の一人」であり、典型的な「リベロ」でも「スイーパー」でもない・・というのが彼らの守備コンセプト?!

 基本的には「構図」に変化はありませんが、前半の32分、それまでのオランダの「攻撃の変化」が功を奏します。左のゼンデン、右のオーフェルマルスなどによる「ドリブル突破トライ」によって、何度かファールで止めざるを得なくなっていたイタリア守備陣。そしてザンブロッタ(右サイドバック)が、またまたゼンデンのドリブル突破に、たまらず足を引っかけてしまったのです(右サイドでもオーフェルマルスの突破に、マルディーニ、ユリアーノもイエロー気味のファールをくり返していました・・)。これでザンブロッタは「二枚目のイエロー」。もちろん退場です。

 さて「ドラマの序章」です。

 前半37分には、クサビのパスが通った最前線のクライファートに対し(ペナルティーエリアのなかです)、後方からネスタがボールを蹴ろうと振り上げた足が、ボールには触れずクライファートの身体「だけ」を蹴ってしまいます。そして、そのことでクライファートがバランスを崩した・・ということでPKがオランダに与えられます。

 後方からの「プッシング(キッキング?!)」に相当するプレーですから、レフェリーによる正当な判断ではありましたが、ちょっと厳しすぎる?! この大会では、ペナルティーエリア内での「怪しい守備プレー」に対して審判が「決然」とファール(PK)をとる判断が目立っているのですが、これはもう、大会主催者の「UEFA」による指示としか思えない・・

 でも「ドラマ」は始まったばかりなんですヨ・・。そうです、オランダのキッカー、フランク・デブールのPKを、イタリアGK、トルドが止めてしまったのです。さて「ドラマ」が続く・・

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 同じような「構図」ですが、少しイタリアが、リスクチャレンジの勢いを増幅し、逆にオランダの勢いが減退してきたことを感じさせていた後半17分。またまたオランダにPKが与えられてしまいます。今度は、ドリブル突破(またまた攻撃の変化!!)にトライする、後方からオーバーラップしてきたダビッツ(この後方選手のオーバーラップも大きな変化の一つ!!)を、イタリアのユリアーノが引っかけてしまったのです。

 それでも、このPKを、またまたクライファートが、左ポストに当ててしまって・・。さて、どこまで続くんだろう「豊穣なドラマ」が・・

 この時点で私は、このままオランダはチャンスを潰し続け、逆にイタリアがセットプレー一発で逃げ切ってしまうのでは・・なんて感じ始めていました。

 「構図」は変わらず。イタリアの守備も、10人で闘っているにもかかわらず、徐々に落ち着き、ファールをするようなタイミングでの飛び込みも少なくなってきます(この落ち着きに大拍手・・これこそイタリアの真骨頂!!)。どんどんと攻め上がるオランダですが・・でも・・

 逆に、交代出場したイタリアのデルベッキオが、一発カウンター(これこそカウンターというロングパスからの一発)で、決定的なシュートまでいってしまいます。

 ちょっと(構図に変化なしということで・・)「中抜き」ですが、延長前半の9分にも、まったく同じカタチで、デルベッキオが決定的シュートまでいってしまいます。本当に数センチというギリギリのところで足先でボールをけり出すオランダGK、ファン・デルサール。この守備は奇跡としか言いようがない・・

 考えてみれば、オランダは組織的に押し込んでいくなかでチャンスをつぶし続け、同様にイタリアも、(彼らが狙っている)セットプレーヤカウンターなどでの「ワンチャンス」を潰します。さて一体、どんな結末が・・

 延長後半2分。左サイドで、クライファートとオーフェルマルスとの「本当にシンプルなワンツー」で、クライファートが完璧なタイミングで抜け出てシュート!! またまた、右ポストを僅かに外れていく・・。それが、最後のエキサイティングシーンになってしまいました。その後も、クライファートのヘディングシュート、セードルフの右足での中距離シュートはありましたが、彼らの「体勢」からすれば、「入る感じのする」シュートではまったくない・・

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 そして、結局ゴールが生まれることなく「PK戦」に突入してしまいます。

 さてPK戦。

 イタリアの一人目、ディ・ビアッジオが勢いよく最初のゴールを決めた後、オランダの一人目、前半のPKを、イタリアGKトルドに防がれてしまったフランク・デブールが登場します。さて・・

 そして、今度もトルドの正面に蹴ってしまって・・(完全に意識が高ぶっていますから、蹴ったボールが、狙っていた正面よりも右側へ少しズレ、先に動いていたトルドの正面へ飛んでしまったのです・・)。ノーゴール!!

 次はイタリアのペソット(交代出場)。確実に右サイドへ決めます。いま私は、「リアルタイム」で書いているのですが、雰囲気的には・・もう・・

 そしてオランダ二人目のスタムのシュートも、バーを越えてしまいます。

 イタリア三人目のトッティーは、ゆったりとしたシュートを「正面」へ・・。こうなったらもう「心理的にも余裕」のイタリアなのです。

 三人目のクライファートにはもう「プレッシャー」はありません。右サイドへ、ズバッというシュートを決めます。ただその後のイタリアの四人目、これを決めたら決勝進出! とうPKを蹴るマルディーニのシュートが、オランダGKファン・デルサールに弾かれてしまいます。またまた「大変な心理ドラマ」が・・?!

 ・・なんて思っていたら、次のボスフェルトのシュートが、トルドに止められて万事休す。とにかくこの試合でのイタリアGK、トルドは当たりまくっていましたよね。

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 一人ひとりの「才能」が相乗的に結集されたチーム力では、確実にイタリアを凌駕しているオランダ。(そのことをよく分かっているから?!)守備を固めてワンチャンスを狙うイタリア。でも、その堅守イタリアの一角、右サイドのザンブロッタが退場になってしまい、その後、二度のPKまで・・

 こんな展開ですから、雰囲気的には(感覚的な経験値としては)試合の行方を「感じ始めて」いた湯浅でしたが、本当に「それ」が現実のものになってしまうなんて・・(もちろんイタリアのPK勝ちのことです)

 でもまあ、これもサッカーですから・・

 さて、これで決勝はフランス対イタリアということになりました。そこでも、この試合と同じような展開になるんでしょうネ・・。フランスには、アンリ、アネルカ、ジダンという「稀代の天才」がいますから、この決勝の構図は、「天才のヒラメキ」対「ロジックな戦術」・・っちゅうことになるんですかネ・・(もちろん私は、イタリアチームの、天才的な守備のヒラメキに対しても大いなる敬意を払ってはいますがネ・・)




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