トピックス


進歩に対する「強固な意志」を実感させてくれる日本代表に乾杯!・・日本代表対ウズベキスタン(8-1)・・(2000年10月18日、水曜日)


いやな感じだな・・。開始4分、日本がPKをハズしたときのことです。西澤が蹴ったのですが、相手GKにとって取りやすいコースのボールが、簡単にはじき出されてしまったのです。

 そのとき誰もが、中盤からのマンマークを徹底するウズベキスタンのゲーム戦術に、「これでヤツらは勇気づけられ、もっと集中するに違いない・・。いくらボールを動かしても、そこには常にディフェンダーがいる・・。ボールを動かすことの第一義的な目標である、フリーの起点を作り出すことがままならなくなる・・」、と心配になったはず・・でも・・

 その2分後。中村の、例によっての「ニアサイドスペース」を狙ったフリーキックに西澤が飛び込み、相手GKに当たってこぼれたところを、「こぼれ球の王様」、森島が蹴り込んで先制ゴールを奪ったのです。

 これは、日本代表の「十八番」。ニアポスト勝負のボールを送り込み、「おとり」の選手とは別に(オリンピックでは稲本が、おとりを務めていた・・)、そこに入り込んだ選手が直接シュートするか、「スリップ・ヘッド」で流し、二人目、三人目がそれを狙う・・それです。

 それを「狙い目」にすることができるのも、中村、名波という「スーパー・キッカー」がいるからです。彼らの「正確なカーブキック」は、本当に超一流。そして、だからこその「レシーバーたちの、確信ベースの全力ピンポイントフリーランニング」。見応え120%じゃありませんか・・

 これは、勝負の試合では、「セットプレー」が重要な意味を持ってくる・・ということを如実に証明したゴールでもありました。というのも、このゴールを境に、ウズベキの集中力が、徐々に(そして二点目以降は急激に!)減退していったからです。

 前半14分に高原がセットアップした二点目のゴールは、見事の一言。フェイントとカットで相手を翻弄した高原が、グラウンダーセンタリングの原則どおりに、相手GKと、相手最終ディフェンダーの「間」を抜くラストパスを送り込み、その「間隙スペース」に対する「シンクロしたイメージ」を持っていた西澤が、「ちょっとした動き」で、そこへ入り込んだのです。目の覚めるような「流れの中でのゴール」ではありました。

 そして三点目は、またしてもセットプレー(CK)から。これも見事に、彼らの「意図」が結実します。正確にニアポストへ蹴られたボールを、爆発ダッシュで飛び込んだ中澤が「スリップ・ヘッド」で流し、中央の高原がヘッドで決めたのです。中村の正確なカーブキック、そして中澤の飛び込みに大拍手でした。

 これで、実質的に試合は決着してしまいました。それ以降のウズベキの守備は、もうズタズタ。最終勝負局面での忠実マーキングが、うまく機能しなくなってしまっただけではなく、中盤での守備もまったく消極的。だから、攻撃の押し上げにも鋭さを欠いてしまって・・

 それにしても、日本代表の中盤でのアクティブ守備には、感嘆しきりでした。これこそ、いまの日本代表の強さの源泉!!・・そんなことを思ったものです。積極的な守備が、次のアクティブな攻撃のベースになる・・それは世界の常識ですからネ。稲本、名波、中村、明神、はたまた森島の「協力したダイナミック守備」や、積極的に戻って守備参加する高原や西澤。彼らの意識の高さに乾杯!!

 それにしても、決定的なシーン(最終勝負の局面)における、ツボを心得たスピーディーなボールの動き・・。それが、どんどんとレベルアップしていると感じます。ボールホルダーの意図と、レシーバーの意図が完璧にシンクロしているから、決定的スペースを、面白いほど突いていける・・。とにかく、最前線や、二列目選手たちの「飛び出しタイミング」の早さに感嘆しきり。それこそ「積極的なパスを呼び込む動き(クリエイティブなムダ走り)」ではありませんか。頼もしい限りです。

 それは、ウズベキスタンのディフェンダーが持つ「イメージ」を、完璧に凌駕しています。だから彼らは、決定的なフリーランニングに付いていけずにファールを繰りかえしてしまう・・

 「ボールの動き」では、日本代表は、間違いなく今大会随一のチームです。

 さて、名波と中村のポジションチェンジ・・。これも、ウズベキスタンの守りを混乱させました。それはそうです。中盤のキーマンだと思っていた選手が、急にいなくなり、別の選手が、それも「タイプがちょっと違う」うまい選手が組み立ての中心になっちゃうんですからネ。そしてまた・・

 この試合での「名波と中村のポジションチェンジ」には、既に「あうんの呼吸」が感じられました。「相互レスペクト」・・つまり「本当の意味での相互信頼関係」とでも表現できそうです。う〜〜ん、素晴らしい・・頼もしい・・

 もう一つだけ気づいたことを・・

 それは、これだけの大量リードでも、彼らのサッカーの内容に、最後まで「大きな変化」を感じなかった・・ということです。最後まで、守備に集中を欠くことなく・・、また攻撃での積極性にカゲリが見られることもなく・・。彼らのイメージする具体的ターゲットは「世界」・・ということなのでしょう。そのステップを一歩づつ、確実に踏んでいく。そのために、どんな状況でも、どんな相手とでも、常に、攻守にわたる全力での「リスク・チャレンジ」の姿勢を崩さない・・

 進歩に対する強固な意志を実感させてくれる頼もしい日本代表チームに対し、乾杯!!




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]