湯浅健二の「J」ワンポイント


1999年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第十節(1999年9月23日)

ヴェルディーvsエスパルス(0−2)

レビュー

 「J」第十節。まずは等々力で観戦です。でも、この後の試合(ジェフ対アントラーズ、そしてガンバ対レッズ)が、つまり「降格リーグ」の行方が気になって・・。とにかく、試合が終わったら直帰してテレビ観戦しなければ。

 ヴェルディーでは、久しぶりに石塚が帰ってきました。以前は「才能の墓場」に片足を突っ込んでいた石塚。李総監督の手腕で、本物のサッカー選手に生まれ変わりつつあります。ちょっと攻めが単調なヴェルディーの「ポジティブ・アクセント」になれるか・・(結局はアクセントになれず・・でも今日のチームの出来では、どんなスーパー選手が出てきてもダメでは・・?!)

 対する、首位のエスパルスはベストメンバー。彼らの「サッカー内容」を支持している湯浅ですし、試合を見るのも久しぶりですから、試合前から楽しみで仕方ありません。

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 ゲッ!、エスパルスが開始二分に先制ゴールを決めてしまった!!

 左サイドでパスを受けたアレックスが、左足のアウトフロントキックで(?!)大きく右へサイドチェンジ。パスを受けた澤登は、間髪を入れずに、右サイドをオーバーラップする市川へ。そこからのセンタリングに飛び込んだ安永が相手と交錯し、こぼれたボールがそのままゴールへ・・ってな具合。自殺点だったようですが、市川と安永の「勢いとカタチ」からすれば、それは「勝ち取ったゴール」です。

 試合がはじまって最初に気付いたことなんですが、足元への「鈍い動き」のパスを回すヴェルディーに対し、エスパルスのボールの動きは軽快そのもの、どんどんとダイレクト、ワンタッチでのパスをつないでしまいます。ヴェルディーの攻撃では、ポジションバランスはうまくとれているんですが、攻撃での「勝負所」に対する「イメージ」が全くシンクロしていないと感じます。そして誰もリスクにチャレンジしない・・これでは・・

 そして八分。今度は澤登が、左サイドからの直接フリーキックを、ホントに「直接」ゴールへ入れてしまいます。ニアポストを狙ったクレバー・シュートだったのですが、ヴェルディーGK、本並は、完全に「読み」のウラを突かれてしまいました。

 これで「2-0」なんですが、ヴェルディーの選手たちは、そのことを意識しているんですかネ。彼らの「斜に構える」サッカーにまったく変化が起きません。これは心理的な部分に関する私の印象なのですが、少なくとも「やる気のポテンシャル」には大きな変化が見えてくるべき・・と思うのですが・・

 相変わらずの「足元サッカー」で、まったく攻め手を見い出せないヴェルディー。対するエスパルスは、「しっかりと守り、鋭く素早い攻めを仕掛ける」という戦い方。森岡を中心とした「センター・スリー(ラインスリーではありません・・より確実に『ブレイク・ポイント』を意識しています)」、両サイドの市川とアレックス、守備になったら、その前にサントス、伊東、澤登がしっかりと「網」を引きます。

 そして攻撃になったら、「スパッ、スパッ」という心地よいサウンドが聞こえてくるような胸のすくボール回しから「攻撃の起点(タメ)」を作りだし、安永、久保山のツートップだけではなく、アレックス、市川、それに澤登などが、ヴェルディーの決定的スペースを狙います(前半は、特にアレックスのオーバーラップがツボにはまって・・)。コレは強い・・そんな印象を強くした湯浅でした。

 エスパルスの守備ですが、特に中盤の「自分主体プレー」が目立ちます。基本的なポジションはありますが、市川、伊東、サントス、澤登、そしてアレックスが、「オレが、相手の攻めの芽を摘みとってやる!」・・っていう「自己主張マインド」でアクティブ守備プレーを展開するのです。気持ちいいことこの上ありません。

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 「ハーフタイムの奇跡」・・そんな表現があります。ハーフタイムの更衣室で「何か」が起き、選手たちのアクティビティーがガラッと変わってしまう・・、そして攻守にわたって吹っ切れたスーパーバトルを展開する・・

 ハーフタイムでは、李総監督の「カミナリ」が落ちたに違いない・・、そして、そんな「強烈な刺激」を受けたヴェルディー選手たちが、前半とはまったく違ったダイナミックサッカーを展開する・・そんな期待をもっていた湯浅でしたが・・

 結局は「斜に構えるサッカー」に変化の兆しを伺うこともできませんでした。

 サッカーは「心理ゲーム」。彼らの「やる気のポテンシャル(モティベーション)」レベルで、サッカーの内容・質が、それこそガラッと変わってしまうもんなんですが・・。笛吹けど踊らず・・では、ベンチの「心理マネージャー」としての力量が問われても仕方ない・・?!

 逆にエスパルスは、、堅実・確実・クリエイティブな守備をベースに、攻撃における「ココゾ!」の勝負所で、「ワンツー」、「ワン・ツー・スリー」など、相変わらずのスーパーコンビネーションを見せつけます。勝負だと感じた「数人の選手たち」が、その「攻撃アクション」に「オレが!オレが!」と参加してくるのです。そのパワーと意図に溢れたフリーランニング。心地よい・・

 結局、最後までヴェルディーが生き返ることはありませんでした。後半も、中盤を過ぎたあたりになると、守備ももうボロボロ。マークも、カバーリングもいい加減そのもの・・ってな具合になってしまいます。負けるのは仕方ないとして、これほど「内容」が落ち込んでしまっては、心理的な悪魔のサイクルに落ち込んでしまう危険が・・

 ヴェルディーは、本当にチャンスらしいチャンスを作り出すこともできずに、いいところなく『ホーム』で敗れてしまいました。

 逆に、攻守にわたり高いレベルの集中を保った(最後まで「自分主体」で考え続けた・・)エスパルスは、チャンピオンチームに相応しい(?!)ポテンシャルを見せつけました。

 それにしても、試合内容が悪いヴェルディーが心配です。「改造中」ということですが、そろそろ「どのように改造するのか・・」という方向性が見えてきてもいい頃なのでは・・

 さてこの後は、注目のガンバ対レッズの試合をテレビ観戦します。ここのところ、「NHK」のカメラワークが大きく改善していると感じます。しっかりと「ボールがないところでのドラマ」まで見られるに違いありません。さて、急いで帰らなくちゃ・・

ガンバvsレッズ(1−2)

レビュー

 「降格リーグ」ライバル、ジェフが、ジーコという「ストロング・ハンド」に引っ張られ自信を取り戻したアントラーズに「0-2」で敗れました。

 彼らにとって、ジェフが負けたことが「心理的にマイナス」に作用しないことを願って止みません。もし彼らが、「よし!ジェフが負けた。ガンバに勝てば・・」なんて勝ち点を計算しはじめたら、またまた「心理的な悪魔のサイクル」に陥ってしまう危険性が・・

 もしこの試合でレッズが勝てば、勝ち点差は「3」まで縮まります。絶対に負けられないレッズ。主力のペトロヴィッチとザッペッラを欠く彼らが、どこまで「吹っ切れた」闘いをすることができるのか注目しましょう。彼らに、前節のグランパス戦のような「ある程度吹っ切れた戦い」を期待する湯浅です。

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 さて試合です。

 立ち上がりは、両チームともに注意深く・・というもの。レッズのプレーぶりからは、ある程度の「仕掛けトライ」に対する積極性を感じます。「まあ、立ち上がりはこれでいいか・・」ってな具合・・

 この試合も、レッズの福田はベンチスタート。盛田の調子がいいということなんでしょう(デモス監督も、同一ラインアップにこだわれないほど追い詰められた?!)。確かに前節の対グランパス戦では、盛田は非常に積極的なプレーをしましたからね・・・ってなことを思っていたら、その盛田が、ガンバの斉藤にファールを受けて交代してしまった・・

 そして代わりに入った福田が、城定のコーナーキックをそのままヘディング一発。先制ゴールを決めてしまいます。

 ただ先制ゴールを決めたにもかかわらず、こんなに早く「試合が動いてしまったら・・」と、レッズの「ネガティブな心理的動向」に、チョット心配になる湯浅です。

 一点を奪ったことで、必要以上に守備的になってしまうことが心配なんです。サッカーではよくあることなんですが、「負けられない方のチーム」が先制ゴールを決めた場合、どうしてもその後のプレーが守備的に、つまり「受け身気味」になってしまうのはよくあること。そして徐々に「物理的・心理的な活動性」が低調になり、「リスク・チャレンジ」への姿勢が殺がれていく・・そんな状況で、ガンバに同点ゴールでも入れられた日にゃ・・心配です。

 試合は、案の定というか、レッズがチョット下がり気味に、逆にガンバが「ガンガン」と攻め上がってくる・・といった展開になります。心配です。

 そして、そんな心配が現実のものになってしまいます。FKを蹴ったルイジーニョを起点に、タイルソンとのワンツーで抜け出たルイジーニョがそのままシュートを決めてしまったのです。彼をマークしていた土橋も、「カベ」になったタイルソンにうまくブロックされてしまい、結局はルイジーニョがフリーに・・。

 このボールの動きの瞬間、バックアップを意識していなければならないレッズ守備陣の足が止まり、カバーリングが遅れてしまいました。ボールウォッチャーになってしまっていたのですが、人数がいる分、どうしても「オレが行く・・」という、決定的ピンチに際しての積極的な姿勢が殺がれてしまう・・?!

 それでも結果として、同点ゴールのタイミングは、レッズにとって幸運だったかも。守り切ろう・・なんていう考えがアタマをもたげてくる時間帯「以前」の失点でしたからネ。さてこれからだ・・

 とはいっても、ガンバはゲームのリズムをガッチリと掴み続けます。レッズの守備では、たしかに忠実なマークを繰り返しますが、ココゾ!のタイミングでの「集中(プレス)」が出てきません。それは確かにリスキーな守備プレーなのですが、そんな積極的な守備の姿勢が、「次の」効果的な攻撃につながるものですし、前節のグランパス戦で彼らがペースを握ったのも、中盤守備での「リスク・チャレンジ」だったのに・・

 またレッズの攻撃では、チャンスになりそうな状況でも「歩いている選手たち」の目立つこと。

 後半に入っても、ゲームのリズムに変化はありません。ガンバが、どんどんとリスクにチャレンジしてくるのに対し、レッズのプレーは「リスクなし!リスクなし!」ってな消極性が目立ってしまって・・。守備では「人数をかける」ことを基本に、ある程度は堅実なプレーは展開できていますが、いかんせん攻撃では、「足が止まっている」、また「福田・岡野・永井に頼りっ切りで押し上げがない(タテのポジションチェンジがない)」・・これでは・・

 そんな後半23分、前半に盛田をツブしてイエローをもらったガンバの斉藤が、今度は福田に対するファールで二枚目のイエロー。これでガンバは、10人で戦わなければならなくなりました。一般的にはレッズに有利なんですが・・。今のレッズでは、「状況的な有利さ」が、心理的に「ネガティブ」に作用してしまう?! そのことが心配です・・

 それでも少しはペースが上がり気味になるレッズ。もっともっと中盤でプレッシャーをかけ続けなければ・・。そうすればガンバを、本物の「悪魔のサイクル」に落とし込んでしまえるのに。本当にジレったい。チャンスなのに、何故もっともっと「前へ」いかないのか・・

 それでも、ガンバの中盤守備が、徐々に消極的になり、プレッシャーがかからなくなります。レッズの大チャンス・・・なのに、「まだ」レッズの選手たちは、まるでガンバのカッタルいリズムに合わせるようにペースを落としてしまいます。これでは、自らチャンスを放棄しているようなものじゃないか・・

 ただそんな停滞した雰囲気が支配していた後半37分、ガンバ、宮本が、「やっと」リスクにチャレンジし、単独ドリブル勝負を仕掛けたレッズの山田に対し、ペナルティーエリア内でファール。レッズがPKを得、それを永井に代わったベギリスタインがきっちりと決めます。

 結局、その後のガンバの怒濤の攻撃を「やっと」かわしたレッズが、セカンドステージでの二勝目を飾りました。

 Vゴールで負け続けたレッズに、やっと幸運の女神が微笑んだカタチになりましたが、湯浅は、「今のレッズは、幸運ではなく、自分たち自身で完璧にゲームのペースを奪い取ることができるようなサッカーを展開しなければ、降格リーグにおけるライバルたちとの直接対決で生き残ることはできない・・」そう思うのです。

 かなりレッズに厳しいコメントになってしまいましたが、私が書いたことは、選手諸君が一番よく分かっていることだと思います。残り五試合。彼らに、とにかく「自分主体」で「考え続ける(集中を切らさない)」「積極的なサッカー」を展開して欲しいと思っているのは私だけではないに違いありません。

 「勝負の時」まで一ヶ月の準備期間があります。そこで、どこまで心理的・精神的に充実できるか・・。(繰り返しになりますが・・)要は、クレバーなチーム戦術をベースに、選手たち自身が、「やらされる」のではなく、自らの判断、決断で、どこまで「リスクチャレンジ」を仕掛けていけるようになるか・・ということです。



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