湯浅健二の「J」ワンポイント


1999年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第一節(1999年8月7日)

ヴェルディーvsガンバ(1-0)

レビュー

 さてセカンド・ステージが始まりました。

 まだまだ、入りの悪い等々力競技場。ヴェルディーにとっては、試合の「内容」が、今後の「観客に対するプル力」の強化のためにも重要になります。なんとか「ダイナミックで魅力的」なサッカーを展開することで、ファンの注目度を高めたいもんなんですがネ・・

 ヴェルディーでは「中盤のダイナモ」、ベテランの北澤が開幕に間に合いませんでした。北澤は、ヴェルディーの「精神的支柱」でもあり、その「穴」が心配されます・・

 立ち上がり、ヴェルディーの「セカンドステージに対する中心意図」が明確に現れてきます。それは『攻撃』。ボールを奪い返したら、まず相手ゴールを意識する・・というものです。

 「シュートをする」という攻撃の目的を「より」明確に意識し、特に中盤の高い位置でボールを奪い返したら、まず「最短時間・最短距離」で相手ゴールに迫る・・というロングボールを使った攻撃を多用してきたのです。これは、ファーストステージではほとんど見られなかったもの。そこでは、中盤での「カッタルイ」ボール回しだけが目立っていましたからネ・・。

 攻撃の組み立て段階の中盤でボールを奪い返した瞬間・・・そこでの相手は、中盤選手たちが「前へ重心がかかり気味」になっているし、中盤守備の陣形は整っていない、また最終守備ラインも整っていない・・。

 そんな状況で、ヴェルディー選手たちの『イメージ』が、「正確に相手最終守備ラインのウラを突くロングパス・・」ということで『統一』されていたのです。それは、ヴェルディー選手たちの「次のプレー」に対する『イメージ』が、高いレベルで『シンクロ』していることの証明でもあります。

 もう一つ、「シンクロ・レベルの高さ」は、コーチの、選手たちに対する「意識付け」が成果を現していることの証明・・とも言えます。

 対するガンバの最終ラインですが、そんなヴェルディーの「攻めに関する基本的な意図(攻めのチーム戦術)」を知ってか知らずか、中盤でのプレスを意識し、ラインを高く保つことを基本原則にしているようです。ただ、「危険な瞬間」、つまり中盤でボールを奪い返され、『一発ラスト・ロングパス』を狙ったヴェルディーのツートップ、栗原と広長が動き始める瞬間での「反応」の鈍いこと。簡単に、栗原、広長、はたまた二列目から飛び出してくる桜井をフリーにしてしまうのです。

 彼らは、効率的なマークの受けわたしなど、「予測守備」を原則にしているようですが、それも「中盤守備」がうまく機能したらのハナシ・・

 ガンバ中盤の選手たちは、ボールを奪い返された瞬間の反応も鈍く、簡単にヴェルディーに「決定的なロングパス」を出させてしまうのです。中盤でのプレスが受け身では、最終守備ラインのマークがバラバラになってしまうのもアタリマエ?!

 現象的には、オフサイドを(偶発的に?!)とることができたガンバが、九死に一生を得る・・といった状況が続いていたのですが、前半は、ヴェルディーの「戦術的な大きな変化」に(ガンバベンチも含めて)対応できず、攻守にわたって消極的、受け身のガンバのプレーが目立ったという展開でした。

 桜井の、この試合での唯一のゴール・・。右サイドバック、山田から(山田はまったくのフリー!!)、最前線でフリーランニングする広長へタテパスが通ります。ダイレクトで小林にバックパスを回し、そのまま爆発的に右サイドのスペースへ走り抜ける広長。そこへ「測った」ようなダイレクトパスが小林から通ります。この時点で勝負あり?! ガンバゴール前でのマークが甘いんですからネ。

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 ただ後半は、様相がガラッと変わります。ガンバが、やられっぱなしの前半を反省したのか、彼らが本来意図する「中盤でのプレス」がやっと機能しはじめたのです。

 サッカーは、「いかに自らペースを握るか・・」というボールゲーム。そのためのキーポイントは「積極的な守備」なのです。

 そんなサッカーの原則を如実に証明するような試合展開といったところです。ガンバのプレスが機能しはじめ、逆に、精神的にも押され気味になったヴェルディーのプレーが、どんどんと「消極的」になっていったと感じます。

 何度かの決定的チャンスをものにできないガンバ。

 対するヴェルディーは、前半に見られた「早い段階での仕掛けパス」がカゲをひそめ、逆に、中盤での「相手に狙われやすい遅いタイミングのパス」に終始するようになってしまいます。たまには相手のウラ狙いのパスは出ますが、それもガンバGK岡中が簡単にクリア・・ってな具合。この岡中の、「GK兼スイーパー」的なプレーも、ヴェルディーの攻撃の意図に対抗して、ハーフタイムに指示が出た結果なのかもしれません。

 ただ試合は、そのまま終了。ヴェルディーが、大事な初戦を制しました。

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 前半にヴェルディーが魅せた、「素早い仕掛け」テンコ盛りの面白いサッカー。

 それを、相手の守備プレッシャーがきつい中でもできるようになれば・・。つまり、プレッシャーを外してしまうような素早いパス回しから(最終守備ラインでもどこでもいいから)『攻撃の起点』を創り出し、そこからどんどんと素早いタイミングの「決定的な仕掛けパス」が出る・・ってな具合の・・

 日本のサッカーで問題なのは、最前線の選手たちの「予測ベースの反応」が遅いことです。「決定的なパスが出そうだ・・」というタイミングでの「フリーランニング・スタート(動きだし・・なんていう表現も使われますよネ)」が遅いということです。

 フリーランニングは、パスを受ける動き・・という解釈が一般的なのですが、それを『パスを呼び込む動き』、はたまた『クリエイティブなムダ走り』というふうに解釈した瞬間から、サッカーのレベルが格段にステップアップするものです。もちろんパスの出し手との「イメージ・シンクロ」が伴った場合ですがネ・・

 前半のヴェルディーのサッカーにおける「イメージ・シンクロ・レベル」は、もう格別。最終守備ラインの選手がフリーでボールを持った瞬間、最前線の栗原、広長、はたまた二列目の桜井、小林が、鋭い「動き」を繰り返しスタートしていたんですからネ。

 「芽」が見えはじめたヴェルディー。彼らがどこまで「発展」し続けられるのか・・。前半のプレーを見て、ちょっと期待が高まった湯浅でした。




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