湯浅健二の「J」ワンポイント


1998年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第二節(1998年8月29日)

マリノスvsヴェルディー(2-0)

レビュー

 エッ・・。これがヴェルディー?!

 これは大変。ヴェルディーが壊れかけています。

 こんなヒドイ試合内容は、久しく見たことがありません。確かに暑くムシムシしていたとはいえ、両チームにとって条件は同じ。マリノスの出来と比べ、ヴェルディーのそれは、とにかく「壊れかけている・・」という表現がピッタリとはまってしまうのです。

 まず目に付いたのが、中盤も含めた守備の不徹底さ。マリノスの組立段階だけではなく、決定的な場面でのマークが、信じられないほど甘いのです。

 モアシール、エンリケという、クリエイティブな守備を展開できる主力がいないこともあるのでしょうが、それでも、忠実にやれば、誰でもそこそこの安定した守りは展開できるもの。その、「基本的な姿勢」に問題が見えたことが私の不満をつのらせました。

 基本的な姿勢に問題があるということは、心理・精神的な部分で、何らかの大きなマイナスを抱えているということです。体質的なもの?!クラブマネージメントに対する不満?!それとも監督のマネージメントに問題がある?!

 それが何なのかは分かりませんが、「これは、修正するのに時間がかかるナ・・」と感じさせられたヴェルディーの守備です。

 そんなヒドイ守備に呼応するかのように、攻めもすっかり錆び付いていました。

 ボールは動くのですが、そのカッタルさといったら・・。ボールがないところでのプレー(フリーランニング)がほとんどなく、ボールは、選手たちの足元へ送られるだけ。スペース活用という発想がまったく見えてこないのです。そしてボールをもったら、例によって、個人勝負だけでの中央突破狙いです。

 個人勝負プレー(リスクチャレンジ)は、チーム(組織)プレーとのバランスで効果を発揮してくるものです。シンプルで、スペースをうまく利用するパス回し。それで相手守備が「次でボールを奪い返す」ターゲットを絞り込めないようにしてから、メリハリの効いた単独勝負(勝負ドリブルなど)を仕掛ける・・。それがあって初めて、ヴェルディーの「個人勝負能力の高さ」が生きてくるというのに。

 前園、カズ、新人の増田などのプレーは、まったく単発。マリノスの守備陣は、まったく恐さを感じなかったに違いありません。これでは、ラモス、北沢のクリエイティブプレーが生きてくるはずがありません。

 とにかく、ヴェルディーの攻撃では、「チーム全員が共有する崩しイメージ」というものをまったく感じませんでした。

 ただ、試合終了間際に前園と交代した石塚のプレーには、少し光明が見えたような感じがします。それまでの彼のプレーは、攻めにおける個人プレーと組織プレーのバランスだけではなく、守備参加、汗かきプレーなどの目立たないところでのチーム貢献プレーが、それこそハチャメチャ。彼ほどの才能の持ち主ですから、これで「才能の墓場に直行・・」というのでは本当に惜しいな・・と思っていたものです。

 それがこの試合では、シンプルなパス交換から、「次のスペース活用」を意識した爆発的なフリーランニングまで披露してしまったりして・・。それも何本も続けてです。彼の意識に、少なからずの「変化」が見えたことに少し嬉しくなった湯浅でした。

 彼はマラドーナではありません。ですから、守備も含めた組織プレーもできなければ、本当に「才能の墓場」へ直行してしまいます。彼は、そのことが、少し分かりかけてきたのかもしれません。

 あとは、彼の(学習能力も含めた)インテリジェンスの問題ということになります。とにかく、「歌(走ること)を忘れたカナリア」に再び歌わせることほど難しいことはありませんからネ。

 ちょっと興味が湧いてきたので、これからは石塚にも注目しようかな・・と思っているのですが、それにしても今のヴェルディーの「チーム・パフォーマンス」では、自分の特徴を出すのには苦労するだろうナ・・

 対するマリノスは、組織プレーと個人勝負プレーが、かなり高いレベルでバランスしていました。パスと単独勝負のバランスにメリハリがあるのです。

 とはいっても、ヴェルディーのハチャメチャ守備を相手にしてですからネ。彼らが本当の意味で優勝候補だと評価されるためには、まだ何かが足りないような気がします。

 さて、第二節が終わり、ファーストステージ優勝のジュビロが二連敗してしまいました。リーグは混戦模様。私は、現在の実力では、負けたとはいえ、ジュビロとエスパルスが一つ抜け出ていると思っています。それに続くのが、グランパスとマリノスといったところでしょうか。

 まだ始まったばかりですが、何となく混戦が予想される展開ではあります。




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