湯浅健二の「J」ワンポイント


1998年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第八節(1998年4月25日)

アントラーズvsレッズ(1-4)

レビュー

 トピックスにも書いたのですが、「J」のレベルがワンランクアップし、内容も本当にエキサイティングになってきたことを感じます。そのことが観客動員にも如実にあらわれているわけですが、それもこれもワールドカップ効果。本当にそれには計り知れないパワーがありますよね。

 私は、この二週間「J」を見ていなかったわけですが、そのあいだに、アントラーズの敗戦、ジュビロの再浮上、ベルマーレ、ヴェルディーの快進撃など、優勝戦戦が混沌としてきてしまったようです。面白くなってきましたネ〜〜。

 さてゲームです。開始早々にビスマルクがゴールを決めたこともあったのですが、立ち上がりはレッズがペースを握ります。前節まで右のミッドフィールドを務めていたペトロヴィッチを守備的なポジションに下げ、福永を前線に上げたことで、前線でのボールの動きがスムーズに、またダイナミックなものになったようです。ペトロヴィッチですが、新ユーゴスラビアの代表でもある彼は、中盤のユーティリティープレーヤー。その実力は証明済みですから、ベギリスタインも積極的に絡んでくる中盤守備はかなり安定しています。

 ただ、ペースを握られているとはいえ、ゴール前での「危険度」では、明らかにアントラーズに軍配が上がります。最後にシュートまでいく決定的なチャンスの数では、明らかにアントラーズのものなのです。それは、先制点を奪われたことで攻め上がるレッズの、薄くなった守備ラインを、うまく崩してしまうカウンター攻撃が非常に効果的に機能していたことの証明でもあります。それでも、そのカウンターの入ろうとした瞬間にレッズがボールを奪い返して挙げた、福永の同点ゴールは見事でした。それは典型的な「逆カウンター攻撃」でした。

 さて後半です。

 アララッ、と思っているうちにレッズがどんどんと得点を重ねていってしまいます。まず小野。ベギリスタインが左でボールをキープし福永へ。その瞬間、小野は、空いた右サイドへ、うまくマークを外して素晴らしいフリーランニングです。そして、ピッタシカンカンの福永からのパスを、思い切りの良く右足でシュート。お見事! それは彼の才能の一端を証明するゴールでした。この試合における小野の出来は、かなり積極的・効果的になってきた守備参加、ボールのないところでの攻撃プレーも含めて、才能からすれば「ある程度」納得できる内容だったとすることができそうです。順調に伸びていることを見てかなり安心した湯浅です。

 その後、レッズが二点追加します。こうなったらもうレッズのもの。後半は、その点差が証明しているとおり完全にレッズがゲームを支配してしまいます。その原動力になったのが、攻守に脅威的な運動量とクリエイティブなプレーを見せるペトロヴィッチ、また、あまり目立ちませんが攻守にわたって効果的なプレーを繰り返していたベギリスタイン、そして小野とのタテのポジションチェンジをベースに、一ゴール、二アシストなど、最前線で鬼神の活躍をした福永です。それでも私は、この試合での「MVP」はペトロヴィッチにあげることにします。彼の攻守にわたるダイナミックなプレーは「世界基準」。小野にとってもよい見本になるに違いありません。



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