湯浅健二の「J」ワンポイント


1998年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第十二節(1998年5月9日)

マリノスvsグランパス(1-3)

レビュー

 この節を最後に、ワールドカップ終了まで「J」は中断。そこで、トップのヴェルディー、二位のマリノスが、そろって負けてしまったのです。ということでリーグは混戦模様。ワールドカップ後の「J」の再開が今から楽しみになってきましたね。また今シーズンは、「降格リーグ・トーナメント」もありますし、サッカークジも導入がやっと決まりました。話題豊富なシーズンではあります。

 サッカークジについて一言。

 それで社会的に問題が起きないことは、サッカー先進国が既に証明しています。とにかく、「上の連中」は、システムとして国民(生活者・・青少年)をコントロールしようとすることは、もうヤメにするべきです。彼等の自主性を尊重し、パーソナリティーを育てていかなければ、これからの日本という国自体が危うくなってしまうことは明確な事実なのですからね。お役人、官僚、・・・委員会などは、自分たちが「国民を導かなければ」などと思い上がっているようですが、「アンタ方が日本を引っ張っているワケではありません」。社会の方向性は、生活者が、つまり「見えざる手」が決めるのです。またイジメが問題になっているようですが、そのもっとも大きな原因が「規制のし過ぎ」にあることは明白な事実ですし・・・・。もうこれでやめにしておきましょう。体制にドップリつかった「責任を意識していないヤツら」に対する文句が止まらなくなっちゃう・・。

 ということで、マリノス対グランパスです。この試合、全体的には、中盤を制したグランパスの順当勝ちといった内容でした。彼等の中盤での、攻守にわたるアクティブプレーは、それほど傑出していたのです。

 特に、精力的に中盤の「穴埋め作業」に徹したボランチのバウド、また、(深い読みをベースにした)クリエイティブで忠実な守備だけではなく、攻撃でもダイナミックな「フリーランニング」を繰り返した右サイドの岡山(彼の二点目は秀逸)。彼等のプレーには感動さえ覚えました。

 またストイコビッチの「熱したら冷めない(ほんとにホットテンパーですよネ)」クリエイティブプレー、望月の忠実なダイナミックプレーなども特筆もの。ただ、日本代表に選ばれた平野のプレーにはまだ不満が残りました。彼の素晴らしい「個人勝負能力」は誰もが認めるところですし、岡田監督もそこに期待して選出したに違いありません。それなのに、まだ「ボールのないところでのプレー」がカッタルイのです。もちろん勝負の場面では爆発的なフリーランニングは見せますが、それも単発。彼には、もっともっと「アクティブにボールに触って」欲しいと思います。

 グランパスの最終守備ラインも、トーレス、大岩を中心に、非常に堅実です。この二人と、バウドがつくり出す「鉄壁のトライアングル」は、そう簡単に崩されそうもない・・そんな印象を強くしたゲーム内容でした。

 対するマリノスですが、前節の対レッズ戦と比べた場合、かなり出来が悪いな・・という印象です。それは、彼等の中盤でのアクティブなボールの動きが、グランパス中盤のアクティブ守備によって封じ込められてしまい、結局は足がとまってしまうような「心理的な悪魔のサイクル」に陥ってしまったということでしょう。

 もちろんたまには危険な攻めは見せますが、全体的には、(足元にしかパスがつながらないような)かなりパッシブ(受け身)な攻めに終始してしまっていました。守備はある程度は機能していたように感じますが、ボールを奪い返した瞬間から始まる攻めに、スムーズさや、ダイナミックさがないのです。それは何といっても、ボールのないところでの動きが鈍重だったからです。これでは、バルディビエソ、中村といった優れた選手たちの才能が活かされるハズがありません(彼等自身のフリーランニングも、あまりアクティブではありませんでした)。マリノスの選手たちには、「サッカーでは、勝負はボールのないところで決まってしまう」ということを再認識して欲しいものです。

 そんな悪いゲームの流れを断ち切るため、後半マリノスは、切り札のサリナスをグランドへ送り出します。サリナスがボールを持った場合、そうそう簡単に奪い返されません。そんな信頼が、マリノス選手たちの動きを活性化し、徐々にプレーがダイナミックなものに進化していったように感じられたのですが、それも後半最初の時間帯だけ。トーレス、大岩、バウドによって、「サリナス効果」が消されはじめてからは、また前半のような「パッシブプレー」に逆戻りしてしまいました。攻守にわたって「意識の高さを証明する」ようなアクティブなプレーを見せる城も、他の選手たちが「乗って」こなければ、一人では何ともし難いですからね。

 そんなカッタルいペースは、ゲーム終盤でも変わりません。彼等が、グランパスの守備組織を崩せたシーンは、ゲーム全体を通じても数えるほどしかありませんでした。マリノスファンの方々には悪いですが、これでは負けても仕方がない?!。

 全体としては、組織プレーに徹したグランパスが、個人プレーに終始「させられて」しまったマリノスに完勝したといったゲーム。そんな「完勝イメージ」は、後半35分にバクハツした、バウドのスーパーロングシュートで完璧なものになってしまいました。

 「グランパスにとっては、今シーズンのベストゲーム」。友人のイギリス人ジャーナリスト(マイケル・プラストウ氏)がそう言っていたのですが、このゲーム内容だったら、必ずグランパスも優勝戦線に名乗りを上げてくるに違いありません。

 ヴェルディー、マリノス、アントラーズ、ジュビロ、ベルマーレ、エスパルス、レッズ、そしてグランパス。ワールドカップの後は、彼等が織りなす「熱き優勝争い」に期待しましょう。



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