湯浅健二の「J」ワンポイント


2025年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第9節(2025年4月5日、土曜日)

 

ゲーム全体像は、たしかに「拮抗」・・それでも、そこには、雌雄を決する「唐突なチャンスメイク」もあった・・ここでは、そんな刺激的なテーマにも目を向けようと思った・・(マリノスvsヴェルディ、0-0)

 

たしかに・・

様々な視点で、かなり「拮抗」した勝負マッチではあった。

だけれど・・

まあ、だからこそ、その「拮抗」のニュアンスを、ちょっとだけ深掘りしようと思ったわけさ。

要は・・

そう、両チームのスペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)の内実。

特に、「ゴール機会を創りだす」という、唐突なグラウンド上の現象について、重箱の底をつつこうと思ったワケさ。

もちろん、チャンスメイクは、ものすごく多岐にわたる「プロセス」ではあるけれど・・

このゲームでは、クロスと、ミドル弾ってなテーマに絞り込もうと思ったんだよ。

というのも・・

そう、このゲームで両チームが創りだしたゴール機会のほとんどは、その2種類の「最終勝負」によるモノだったわけだから・・

あっと・・

もちろん、全体的なイニシアチブと、「ゴール機会の量と質」という視点では、確実に、ヴェルディに軍配が挙がる。

その評価を、しっかりと踏まえたうえで、それぞれのゴール機会を、振り返ることにしたんだ。

まず、何といってもヴェルディ。

前述したように、全体的なイニシアチブと、それをベースにした、ゴール機会の創出という視点で、マリノスは、ヴェルディの後塵を拝した。

まあ、それには、アンデルソン・ロペスとヤン・マテウスという、仕掛けの大黒柱が不在だったこともあるんだろうね。

でも私は、逆に・・

彼らが不在であるからこそ、スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)に、人のイメージングの差異による(!?)変化が生まれるかもしれないって、期待していたんだ。

でも、やっぱり・・

この外国人の二人は、マリノスの「自信リソース」でも、あるんだろうね。

二人を欠いたマリノスのスペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)に、強烈な意志に支えられた「勢い」が、感じられなかった。

まあ、仕方ない。

対する、城福浩ヴェルディ・・

例によっての、積極的&攻撃的なボール奪取プロセス(守備)を、絶対ベースに・・

次のスペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)でも、軽快な、人とボールの動きを魅せながら、何度も、「結果」を掴み取れるまでの「実効プレー」をブチかましたっけ。

特に・・

そう、ここで、このコラムのテーマに入るわけさ。

このゲームでの城福浩ヴェルディは、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションという「仕掛け」は、うまく機能させられなかった。

それには、人数が必要になるし、ボールがないところでのアクションの量と質の大幅なアップも、必要になるわけだからさ。

ということで、ゲームを俯瞰して観れば、マリノス守備に、うまく守られ、攻めきれないというシーンがつづいたという評価が妥当かもしれない。

でも・・

そう、そんな「拮抗プロセス」のなかで、唐突に、ヴェルディに、ゴール機会が訪れるんだよ。

前半、二つも創りだした、クロスからのビッグチャンス。

一つは、染野唯月からのクロスに、木村勇大が飛び込んだシーン(素晴らしいダイビングヘッドだったけれど・・オフサイドだった)。

もう一つが、前半41分、宮原和也のクロスに、これまた、走り込んだ木村勇大が合わせたシーン。

この両方のクロスボール勝負シーンでは、その直前の、大きなサイドチェンジという「効果的なゲームメイク」も、大きく貢献したと思う。

あっと、クロス勝負・・

そこじゃ、もちろん、「フィニッシャー」による、直前の、爆発(全力ダッシュ)が、とても大きな意味をもつ。

そう、最後の瞬間に、相手マークを、少しでも(!!)引きはがすんだよ。

だからこそ・・

そう、クロスを送り込むチームメイトとの「イメージング・シンクロ」が、成否を分ける生命線になる。

その意味で、城福浩は、その「イメージング・シンクロ」を浸透させる、素晴らしい仕事をしていると感じていた。

もちろん・・

そう、いつも書いているとおり・・

クロスの「狙い目」は、相手守備ラインの「眼前スペース」が、もっとも効果的。

それが、フィニッシャーをマークしている相手の「眼前スペース」だったら、そりゃ、理想的さ。

相手とボールを観ている相手プレイヤーの「眼前スペース」に、最後の瞬間、スッと「影」がよぎる。

そんな感じね・・

あっと、もう一つ・・

こんな拮抗するゲームだからこそ活きる、「唐突」にゴール機会を創りだすプレー。

そう、ミドル弾・・

後半には、交替出場した山見大登からの、惜しい「クロス」シーンは、あったけれど・・

その山見大登が、後半30分にブチかました、バー直撃の「ミドル弾」も、秀逸だった。

それだけじゃなく、この山見大登は、前半では、あまり観られなかった、中盤スペースをリンスしちゃうような効果的ドリブルも、ブチかましたよね。

そんなタテのスペースを「つなぐ」ドリブルによって、マリノス守備ブロックのバランスは、確実に揺さぶられたっけ。

あっと、そのマリノス・・

彼らも、何度かは、ゴール機会を創りだしたよね。

たしかに、クロスからのチャンスもあったけれど・・

もっとも可能性が高かったのは、後半28分に創りだした、エウベルからのバックパスを、喜田拓也が、ダイレクトで叩いた、ミドル弾だった。

ということで・・

ゲーム全体は、たしかに「拮抗」ではあった。

それでも、前述したような、雌雄を決してしまうような、「唐突なチャンスメイク」もあった。

このコラムでは、そんな刺激的なテーマにも、目を向けようと思ったわけさ。

============

最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


===============

 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

==============

 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





[トップページ ] [湯浅健二です。 ] [トピックス(New)]
[Jデータベース ] [ Jワンポイント ] [海外情報 ]