湯浅健二の「J」ワンポイント


2022年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第21節(2022年7月10日、日曜日)

 

まさに、リカルド浦和レッズの完勝・・でも、そんな優れたサッカーを高みで安定させられるようになるまでには、さまざまな紆余曲折があった・・(レッズvsFC東京、3-0)

 

レビュー
 
以前は、理解に苦しむゲームが、頻繁に、あった。

そう、内容で圧倒しながら、ゴールを奪えない。

そうしているうちに、「何もないところ」から相手にゴールを奪われて負けたり、引き分けたり。

そんな、とても悔しいゲームね。

でも今日は、皆さんも観られたとおり、まさに、内容と結果を、完璧に一致させた。

まあ・・、完勝。

ということで今日は・・

こんな(美しい!?)質実剛健サッカーができるようになるまでの紆余曲折のバックボーンを探ろうと思うにいたった次第。

リカルド浦和レッズは、ボール奪取プロセス(守備)が安定していることで、全体的には、ゲームのイニシアチブをにぎるケースがほとんど。

「あの」強い、鬼木達フロンターレやケヴィン横浜マリノスに対しても、ね。

でも、そこからのスペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)が、うまく機能しない。

私は、これまでも何度か、こんな主張をしたコトがあった。

・・ボールがないところでのサポートの動き(フリーランニング)が足りない・・

・・完璧なスペース攻略を、意識しすぎていることで、シュートを打たなくなっている・・

・・悔しい「勝ち点ロス」を重ねているウチに、選手たちの意識と意志レベルも減退の一途・・

もしかしたら彼らは、そんな、擬似の、心理的な悪魔のサイクルに(部分的に!?)落ち込んでいたのかもしれない。

でも、ここにきて、やっと、本当にやっと、攻守にわたって、積極的&攻撃的なプレーが出来るようになったと感じている。

そう、解放された「主体性プレー」ね。

ということで、そんなポジティブ変化のバックボーンを探ろうっちゅうわけだ。

ということで・・

ここで、一人の選手にスボットを当てる。

江坂任。

天賦の才に恵まれた、創造性プレイヤーだ。

その江坂任だけれど・・

実は、リカルド浦和レッズが、理想的な崩しイメージ「ばかり」を追いかけ「過ぎて」いた頃・・

だからこそ(!?)うまく結果を出せなくて、袋小路にはまっていた(!?)頃・・

江坂任は、すべてのゲームで先発メンバーを張っていたんだよ。

でも・・

そう、リカルド浦和レッズが、内容と結果を、うまくリンクさせられるようになったのは、その、江坂任が、先発から外れるようになってからなんだ。

わたしは・・

彼の、攻撃では足許パスばかりを要求し(オレはパサーだ!?)、またボール奪取プロセス(守備)のハードワークも「お座なり」なプレー姿勢に、苦(にが)り切るコトも多かった。

たしかに才能はある。

でも、彼のトコロにボールが集まることは、相手も承知しているから、「潰し処」も、しっかりと見定められている。

だから、「そこ」でボールを失うコトも多かったし、「そこ」から決定的パスが送り込まれる頻度も、期待ほどじゃなかった。

そう、ステレオタイプの「仕掛けプロセス」・・

でも、そんな彼が先発メンバーから外れるようになった。

そして、ソコから、チームメイトたちの「意識と意志」も、目に見えて活性化しはじめたんだ。

そう・・

人とボールの動きが、格段にアップしはじめたんだよ。

そして、だからこそ・・

より「流動的」に、スペースを攻略できるようになったし、大久保智明や松尾祐介といったドリブラーの才能も、より効果的に活かせるようになった。

もしかしたら、それまでの彼らは、周り(!?)に遠慮して、フッ切れたドリブル勝負じゃなく、パスを選択するような、消極的プレー姿勢に陥っていた!?

フムフム・・

今日は、ちょっと江坂任には、厳しいコメントになったわけだけれど・・

それは、今日の彼のパフォーマンスが、とても良かったからに他ならない。

もし今日「も」、いつもの思い上がったプレー姿勢だったら、無視していただろうね。

でも・・

そう、やっと彼も、仲間との、「使い、使われるメカニズム」を意識しはじめたって感じたんだ。

ボール奪取プロセス(守備)での、チェイス&チェックやカバーリング。

そこで彼は、何度も、まさに「意志の爆発プレー」を魅せつけてくれた。

それだけじゃなく、スペース攻略プロセス(攻撃)でも、しっかりと、汗をかくようになった。

そう、味方のパスを呼び込むような、全力フリーランニングね。

それが、大久保智明がダイレクトでブチ込んだ、レッズ3点目を生み出した。

それ以外でも江坂任は、攻守ハードワークとリスクチャレンジに、強い「意識と意志」をもってトライしつづけていたんだよ。

やっと彼も、ホンモノの「ブレイクスルー」の何たるかを自覚しはじめた!?

そうであれば、とてもハッピーだし、日本サッカーにとっても、この上ない朗報だよね。

まあ、もう少し、様子を観なけりゃ、何とも言えないけれど・・さ。

それ以外でも・・

ダヴィド・モーベルクの、人とボールの動きを「加速させようとする」意図あるプレーも目に付いた。

また、伊藤敦樹の、攻守にわたる、広大な「アクション・ラディウス」には、感銘を受けた。

もちろん、そのなかで、何度も、効果的なプレーを披露したし、ゴールまで奪って魅せた。

まあ、岩尾憲、小泉佳穂、大久保智明、松尾祐介、酒井宏樹、アレクサンダー・ショルツといった強者どもが魅せたグッド・パフォーマンスについては、語るまでもないでしょ。

あっ、そうそう・・

左サイドバックの大畑歩夢だけれど、わたし、少し、甘く見ていたかも。

この試合で彼が魅せた、攻守にわたるパフォーマンスは、称賛に値するよね。

ということで・・

何か、まとまりに欠けるコラムになってしまったけれど・・

とにかく・・

やっと、ホントにやっと、リカルド浦和レッズが、本来のダイナミックサッカーを魅せられるようになったというコトが言いたかった。

彼らには、私がイメージする、ホンモノの「美しい質実剛健サッカー」を体現して欲しい・・

期待しましょう。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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