湯浅健二の「J」ワンポイント


2021年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第6節(2021年3月21日、日曜日)

 

リカルド浦和レッズは、この惨敗を、(その背景にある戦術的なロジック、心理メカニズムを見つめ、体感しながら!)貴重な学習機会として記憶タンクに収めましょう・・(レッズvsフロンターレ、0-5)

 

レビュー
 
あららっ・・切れちゃった・・

後半4分に飛び出した、レアンドロ・ダミアンの、アクロバティックな追加ゴール。

でも、まだまだ大丈夫だって思っていたんですよ。

でも・・

そう、旗手怜央が、3点目をブチ込んだあたりから・・

とはいっても・・

その前のタイミングでも(!?)、チームの攻守ハードワークとリスクチャレンジ姿勢(意識と意志のレベル!)が落ちはじめたと感じたのも確かな事実だった。

例えば・・

前からの積極ボール奪取プロセスではなく、相手の最終勝負プロセスを抑えなければならない、危急守備状況であるにもかかわらず・・

・・相手ボールホルダー(パスレシーバー)へのチェイス&チェックやカバーリング、またタテへ抜け出す相手へのマーキングが、あまりにも甘い・・

・・完璧に、「アナタ任せ」になっている・・

そして、次の攻撃でも、少し前へボールを運べたとしても、フロンターレの強烈プレスで、簡単にボールを失ってしまう。

また、局面デュエルでも、まったくといっていいほど「粘り」がない。

もちろん、そんな「心理的な悪魔のサイクル」は、チーム全体が、自信を失い、攻守ハードワークとリスクチャレンジへの「意志」が地に落ちてしまったからに他ならない。

・・ここで必死に頑張っても、どうせ・・

まあ、それは言い過ぎかもしれないし、レッズ選手たちに失礼かもしれない。

でも、彼らの、攻守にわたる、ボールがないところでのアクションの量と質からすれば、やっぱり、そんな評価に落ち着いてしまうよね。

そして・・

そう、そんな、レッズの悪魔のサイクルを「感じた」フロンターレは、ガンガンと、前から勝負に打って出てくるわけさ。

ゲームが、まさに一方的な展開へと変容していくのも道理。

そのゲーム展開の変容というテーマだけれど・・

それは、前半と後半で、まったくサッカー内容が変わってしまったというコトだよ。

皆さんもご覧になったように、前半でレッズが魅せつづけたサッカーには、攻守にわたって、素晴らしいファクターが山積みだったんだ。

まず何といっても、効果的&効率的なボール奪取プロセス(守備)。

・・素早い攻守の切り替え・・

・・すべての選手たちが絡みつづける、前からプレス・ボール奪取プロセス・・

・・そして「そこ」を突破されたときの、ポジショニングバランスが整ったブロック守備・・

そこまでのリカルド浦和レッズは、前から(プレス)ボール奪取プロセスと、ブロック守備を、ホントに上手く使い分けていたんだよ。

もちろんブロック守備では、フロンターレの人とボールの動きに対応するだけじゃない。

そこでは、安易に、相手ボールホルダーへ寄せ「過ぎ」たり、追い「過ぎ」たりせず、とても忠実&クレバーに、互いのポジショニングバランスを、効果的に執りつづけたんだ。

そう、ボールを奪い返すだけではなく、それ以上に、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションなどで、背後スペースを攻略されないためにね。

そう、ポジショニングバランスが流動的にうまく整ったブロック守備。

だからこそ、フロンターレの人とボールの動きに対応しながら(相手の人とボールの動きを制限しながら!)、ボール奪取チャンスを自ら創りだせていたんだよ。

逆にフロンターレは、「いつもの」人とボールの動きのリズムを取り戻せず、サッカーの流れが停滞していったんだ。

そして、リカルド浦和レッズは・・

その、ボール奪取プロセス(守備)がうまく回っているという自信が、次の攻撃でも、ポジティブに作用するわけさ。

そう、彼らの人とボールの動きは、自信にあふれていたんだ。

そんな高質サッカーを観ながら、リカルドのゲーム戦術イメージが、しっかりとチームに浸透しているって感じたモノさ。

でも・・

まあ、仕方ない・・こんな日もあるさ・・

そんなことを考えながら、改めて、不確実であるからこそ、ホンモノの心理ゲームと呼べるサッカーの怖さを噛みしめていたんだよ。

そりゃ、そうだ。

局面デュエルにしても、チェイス&チェックやカバーリング、忠実マーキングにしても、また攻撃での、ボールがないところでのサポートの動きにしても、その原動力は、ヤル気(強烈な意識と意志!)に違いないわけだから。

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最後に、ダゾンのカメラワーク(ズーミングワーク)についても簡単に・・

素晴らしかったですよ。ホントに・・

実は、このゲームの前には、長谷川FC東京vs手倉森ベガルタ戦もダゾンしていたんだけれど・・。

そのゲームでの、ダゾン・カメラワーク(ズーミングワーク)も素晴らしかったって感嘆していたんだ。

この両ゲームでのカメラマン&ディレクター諸氏は、ホントに、サッカーの「見所メカニズム」をご理解されている・・って感じていた。

この高質なカメラワーク(ズーミングワーク)が、これからのダゾンの絶対スタンダードになることを願って止みません。

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それにしても、リカルド浦和レッズの「惨敗」からは、わたしも、強烈な刺激を受けた。

もちろんリカルドが、このようなサッカーの日常茶飯事で、落ち込むコトなんてないでしょ。

指揮官が落ち込んだら、選手やスタッフは、その何倍も落ち込んでしまうからね。

あっ・・スミマセン・・

低次元の老婆心でした・・

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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