湯浅健二の「J」ワンポイント


2021年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第15節(2021年5月22日、土曜日)

 

不確実なファクター満載のサッカー・・それは、究極の「心理ボールゲーム」・・前後半の「変容」から、今日は、そのテーマに入り込みます・・(レッズvsヴィッセル、2-0)

 

レビュー
 
ダゾンのカメラワーク(ズーミングワーク)は、とても良かったし、中村太レフェリーの「仕切り」も良かった。

ということで・・

この試合からは、とても興味深い(心理的な!?)テーマをピックすることにしました。

まあ、いつも書いているように、サッカーが究極の「心理ボールゲーム」というテーマ。

そう、皆さんもご覧になったとおり、後半スタートからの選手交代によって(!?)サッカー内容が(ゲーム展開が)、ガラリと変容したんだよ。

選手交代・・!?

変容したということは、前半のスターティングメンバーに問題があった!?

いやいや・・

何せ、交替したのは、「あの」阿部勇樹と武藤雄樹なんだぜ。

ということで、分析の「視点」を変えなきゃいけないっちゅうことさ。

繰り返しになるけれど、不確実なファクター満載のサッカーが、究極の「心理ゲーム」という視点。

換言すれば、チーム全体が、極限まで協力し合う(イメージ的なシンクロ!)共同作業だ・・っていう視点とも言える。

わたしは、阿部勇樹と武藤雄樹を、とても強く信頼しているんだよ。

でも・・

そう、現場で、互いに協力しながら、美しい質実剛健サッカーを創りあげようとしている選手たちにとっては、そのニュアンスは、微妙に相違する!?

・・阿部さんは、素晴らしいプレイヤーだけれど、極限のピンチじゃ、スピードでも、運動量やパワーでも、少しだけ「不安」が残るよな〜・・

・・武藤さんも、素晴らしいプレイヤーだけれど、最前線や2列目のターゲットマン(チャンスメイカー)としては、少しだけ「不安」が残るよな〜・・

そして、そんな「そこはかとない不安感」が、チーム全体のプレー内容を、より注意深いモノにしちゃう。

この(とても微妙な!?)テーマについては、世界サッカーの絶対レジェンドである、ヘネス・ヴァイスヴァイラーやリヌス・ミケルスからも、何度も指摘され、教え込まれたっけ。

そう、不確実なファクター満載のサッカーは、究極の「心理ボールゲーム」であるという真実をね。

だから・・

そんな、「微妙に不安定な心理」でグラウンド上に立ったチームは、もちろん、誰もが、注意深くプレーするようになっちゃうでしょ。

そう、ボール奪取プロセス(守備)にしても、次の攻撃でのボールがないところでのサポートアクションにしても、どうしても、ダイナミズムが減退気味になっちゃうんだ。

ということで、チーム全体のパワーも「落ち着いたモノ」になり、攻守にわたる「爆発プレー」も、観られなくなってしまう。

そしたら・・

そう、阿部勇樹にしても武藤雄樹にしても、よいプレー等できるはずがない。

わたしは、前半から後半にかけて、リカルド浦和レッズが魅せた、サッカー内容(全体的な雰囲気!?)の大幅な変容(高揚)を観ながら、そんなテーマに思いを巡らせていた。

それは、ドイツ留学時代に、世界サッカーのレジェンドでもあるオッサン連中に教え込まれた「コンセプトの正しさ」の再認識・・ってなコトだったのかもしれない。

それにしても・・

レッズの選手層は、厚い。

後半スタートから登場した、小泉佳穂と柴戸海。

この二人によって(!?)、チームの全体的な「雰囲気」が、格段に活性化したんだよ。

もちろん彼らの「プレーの質」が高いコトもあるわけだけれど・・

でも私は、そのバックボーンが、前述した「そこはかとない不安感の払拭」にあったと思っているわけさ。

そして、その後も、山中亮輔、関根貴大、そしてとどめが、「あの」興梠慎三だからね。

選手層・・厚いよね。

ところで・・

リカルド浦和レッズのこれまでについても簡単に・・

リカルド・ロドリゲスは、とても良い仕事をしているじゃないか。

彼は、優れた心理マネージャーでもあると思う。

もちろん「戦術オタク」などといった、あまり有り難くない「風評」もあるわけだけれど・・

わたしは、彼が、さまざまな「有効な戦術」を選手たちに教え込む(攻守イメージングのシンクロレベルの高揚!!)のと同時に・・

その、ある意味で「規制」とも言い換えられる戦術から、選手たちを「解放」することもできる・・って確信しているんだよ。

そう、非定型のサッカーだからこそ、「カタチ」から入っちゃいけないんだ。

そのメカニズムを表現したら、こんな感じになるかな・・

・・選手たちは、もちろん、チームの決まり事(戦術)をベースに、具体的にイメージングし、勇気をもって実行する・・

・・でも同時に彼らは、「解放されたマインド」で、自由闊達にプレーできなきゃいけない・・

・・そう、彼らは、積極的に、「戦術的な決まり事(ルール)」を破っていけなきゃいけない・・

・・もちろん「それ」じゃ、次のボール奪取プロセス(守備)の機能性がハチャメチャになっちゃうかもしれない・・

・・だからこそ選手たちは、主体的に(自らすすんで!!)、全力で(味方のミスをカバーすることも含めて!!)攻守ハードワークを探しまくれなきゃいけないんだ・・

・・そう、「あの」イビツァ・オシムが率いていた当時のジェフ・ユナイテッド市原のようにね・・

リカルド・ロドリゲス・・

彼は、そんな、ある意味で背反する「心理メカニズム」のシークレット(サクセス)ポイントを、しっかりと掌握していると確信している筆者なのであ〜る。

へへっ・・

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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