湯浅健二の「J」ワンポイント


2020年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第8節(2020年8月1日、土曜日)

 

両チームの仕掛けプロセスに、組織と個のバランスという視点で、明確な有為差が・・(ガンバvsフロンターレ、0-1)

 

レビュー
 
フムフム・・

ゲームを観ながら、さまざま思いが、アタマを駆けめぐったモノでした。

ある意味エキサイティングであり、また、戦術的に深いコノテーション(言外に含蓄される意味)を内包する勝負マッチだったんですよ。

エキサイトメントと、戦術コノテーション(言外に含蓄される意味)・・

そのエキサイトメントの本質は、もちろん、両チームともに、様々な戦術バックボーンが充填された「シュートチャンス」を創造しつづけたコトだよ。

まあ、その現象には、多くの戦術コノテーションが内包されているわけだから、ここでは、そんな、仕掛けプロセスの内実・・というテーマに絞ることもできるよね。

いや、そうしましょう。ディフェンスの戦術コノテーションについては、次回に・・

へへっ・・

ということで、ここでは、両チームの、仕掛けプロセスの背景にある、選手たちが脳裏に描く「イメージングの違い・・」というテーマに絞り込みましょうかね。

まず、攻撃の目的について・・

それは、シュートを打つこと。ゴールは、単なる結果にしか過ぎません。

そのための当面の目標イメージが、スペースの攻略っちゅうわけです。

そして・・

この両チームでは、そのシュートチャンス創造プロセスに、差異があるんだ。

要は、そのプロセスをうまく機能させるための、選手たちの「共有イメージング」の内容が違うっちゅうことなんだろうね。

わたしは、その「差異」を、「人とボールの動きの内実・・」という視点で深掘りしたい。

つまり・・

フロンターレでは、最終勝負プロセスに、二つの「タイプ」が、うまく散りばめられているんだよ。

そう、組織プレーと個の勝負プレーが、とてもうまくバランスしているんだ。

その組織プレーのバックボーンだけれど・・

いつも書いているように・・

その骨子は、人とボールの軽快な動き(その優れたリズム!)に裏打ちされた、ダイレクトパスを織り交ぜた美しい組織コンビネーションだよね。

要は、フロンターレの方が、明らかに、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションのレベルが上っちゅうことなんだ。

そして彼らは、その人とボールの軽快な動きをベースに、何度も、ガンバ守備ブロックのウラに広がる決定的スペースを突いていく。

この、人とボールの軽快な動きをベースにした、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションについては、もう何度も書きつづってきた。

でも、相手が「強いガンバ」であるからこそ、そして彼らの仕掛けプロセスの「テイストの違い」が明確だからこそ、逆に、その「真価」が光り輝いたとも言える。

ところで、ガンバ・・

彼らには、絶対的エースである宇佐美貴史がいる。また、センターの渡辺千真も、「個」で勝負を決められるだけの才能に恵まれている。

だからこそ・・!?

そう、たしかに彼らの場合「も」、しっかりとボールは動くけれど・・

でも、その「リズム」が、どうしても、足許パス(ボールの一つの動き!)がブツ切り・・っちゅう印象がぬぐえないんだ。

そう、ボールの動き(≒守備にとってのボール奪取イメージ構築ベース!?)が、スムーズじゃないんだよ。

だから、フロンターレ守備にしても、次の勝負所が明確にイメージできるという視点で、守り易いこと、この上ない。

実際・・

フロンターレとガンバでは、「スペース攻略&シュートチャンス」の内実に、明確な有為差があったよね。

ここでハナシをブッ飛ばして、ゲーム戦術というテーマを少しだけ・・

もちろん、部外者には・・

各チームの監督さんが、どんな「イメージング構築とチームへの浸透アクション」を積み重ねているか、なんて分からない。

でも・・ね・・

そう、攻守の目的を「どのように達成するのか・・」という原則テーマは変わらない。

監督さんは、アイデアを駆使し、それをチームのなかで深く「共有」させることで、攻守にわたって、様々なイメージを「有機的に連鎖」させる作業に没頭するわけさ。

例えば、強いマリノスに対抗していくためのゲーム戦術・・

・・決して、マリノスの人とボールの動きに翻弄されることなく・・

・・安易にアタックを仕掛けることなく、ガマンして「人」に付いていく・・

・・それを繰り返すことで、マリノスの人とボールの動きのリズムを抑制する・・

・・そのためには・・

・・人とボールの動き(ボールを散らせるゲームメイク!?)の中心になっている選手を、オールコートでマンマークするなんていう戦術だって効果的かも・・

・・また、FC東京に対しては、徹底して、最前線の韋駄天をマークするだけじゃなく、「カウンターの流れの芽」を潰す・・

・・この試合でのガンバは、フロンターレの攻め上がりプロセスを、しっかりとイメージし、かなり効果的に「途中」で、人とボールの動きを遮断できていた・・

・・もろちん、そんな戦術的なゲーム展開描写には、とても微妙な「個人戦術的ソリューション」もあるわけだけれど・・さ・・

あっ・・脱線しすぎた・・

・・スミマセン・・

とにかく、この試合でのガンバ&フロンターレの仕掛けプロセスには、明確な有為差があった・・ということが言いたかった。

だから・・

フロンターレが先制(決勝)ゴールをブチ込んでからのガンバの仕掛けには、フロンターレ守備のウラの決定的スペースを突いていけるだけの「雰囲気」は、なかったよね。

やっぱり、仕掛けプロセスでは、「組織」こそがメインであり、あくまでも「個」は、従属なんだよ。

もろちん、ディエゴ・マラドーナとかメッシといった世紀の天才の場合は、違うのかも知れないけれど・・さ。

とにかく・・

そう、「組織」がうまく機能するからこそ、「個」も活きる・・という大原則は変わらないんだよ。

そのコトが言いたかった。

ところで、ガンバの天賦の才、宇佐美貴史・・

良くなっているとは思うけれど、どうも、攻守ハードワークという「組織プレー」では、まだまだ大きな課題をかかえている。

彼ほどの「天賦の才」なのだから、もっと「攻守の組織プレー」にも注力できれば、まさに、「世紀の天才」として日本サッカー史に残るはずだけれど・・

彼については、「The Core Column」で、かなり以前に「こんなコラム」をアップしたから、もしご興味があれば・・

また、同じ系列で、中村俊輔について、「天才のブレイクスルー」なんていうニュアンスで、「こんなコラム」もアップしているので、そちらも・・!?

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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