湯浅健二の「J」ワンポイント


2020年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第6節(2020年7月22日、水曜日)

 

ベルマーレが魅せた、質実剛健ブロック守備と、サッカー内容のペースアップ・・アントラーズは、前節のマリノス戦とは違うゲーム展開に、対応し切れなかった!?・・(ベルマーレvsアントラーズ、1-0)

 

レビュー
 
今節だけれど、実は、横浜ダービーか、ミハイロのホームゲーム観戦をイメージしていたんですよ。

でも・・

対戦カード表を見ていたとき、あるゲームに目がとまり、急に「テーマアイデア」が、アタマのなかを駆けめぐったんだ。

そう、ベルマーレ対アントラーズ。

ベルマーレについては、先日の「マリノス対ベルマーレ」戦での、素晴らしく内容のある見事なサッカーを絶賛したっけ。

とはいっても、プロコーチ浮嶋敏が率いるベルマーレは、うまく、サッカー内容に見合った勝ち点を拾えていない。

あんな素晴らしい「意志のサッカー」を展開しているベルマーレなのに・・

それが、一つ目の興味だった。

そして、もう一つが・・

言わずと知れた、伝統のアントラーズ。

彼らは、前節のマリノス戦で、今シーズンの初勝利を飾った。

相手は、「あの」マリノスだから、とても価値がある勝ち点3ではあった。

ということで、このゲームに潜むエッセンスを、注意深く観察することにした次第。

その、ゲームの「入り」だけれど・・

(個の能力の単純総計という意味でも!?)チカラのあるアントラーズだから、彼らがイニシアチブを握るのは、当を得た流れではあった。

これが、もっとも興味深かった「視点」だったんだよ。

そう・・

初勝利を上げたマリノス戦でのアントラーズは、相手が積極的に(人数を掛けて)攻め上がってくること、また、サイドゾーンが空き「気味」になることをイメージしていたんだ。

だから、面白いように、上田綺世という才能あるターゲットマンを最大限に活用できた。

まあ、カウンター「気味」の、素早いタテへの仕掛け・・だよね。

「1-1」で終わった前半だったけれど、実質的な内容では、マリノスがリードを広げる100%チャンスが、少なくとも「あと二つ」はあったよね。

そんな、アントラーズの「ゲーム展開イメージング」が、まさにピタリとツボにはまりつつあったゲーム展開だったけれど・・

でもマリノスは、後半も、「自分たちが志向するトータルフットボール」をやり切る姿勢を、ひたすら貫いたんだ。

まあ、最後は、対峙したサッカーの内実からすれば、まあ、「よくコトもあるさ・・」ってな結果に落ち着いたわけだけれど、それでも、マリノスのプレー姿勢は、立派だった。

ということで、マリノス戦では、やることなすこと上手くいったアントラーズだったけれど・・

でも、このベルマーレ戦では・・

そう、今度は、自分たちがゲームの主導権をにぎるなかで、彼らの堅牢なブロック守備を崩していかなきゃならなかったんだ。

そして彼らは、とても苦労した。

それは・・

やはり彼らは、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションという組織プレーの内実で、まだ本調子ではないっちゅうことだね。

そう、選手個々のイメージングが、まだうまく「シンクロ」していないっちゅうことだね。

とにかく、ボールがないところでのサポートの動き(フリーランニング)の量と質が、見るからに減退気味だったんだよ。

もちろん「それ」には、ベルマーレが展開する、(有機的にアクションが連鎖する!)忠実ブロック守備が、とてもうまく機能していたという背景もあるわけだけれど・・さ。

そうそう・・

その、ベルマーレが展開した堅牢なブロック守備。

実は、わたし、彼らが、マリノス戦で魅せた、勇気マンマンの前からプレス守備を期待していたんだ。

でも実際は・・

いやいや・・決してベルマーレは、守りを固める、受け身で消極的なディフェンスを展開したわけじゃないよ。

彼らの組織ディフェンスは、とても上手く、有機的に連動していたんだよ。

それに・・

そう、時間が経つにしたがって、ベルマーレの守備から攻撃への切り替えのダイナミズムが、どんどんとアップしていったんだ。

そして、勇気あふれるベルマーレ選手たちは、人数を掛けて、攻撃でのリスクに「も」チャレンジしつづけたんだよ。

そう、時間が経つにつれて、ベルマーレのサッカー内容が、互角「以上」に成長していったんだ。

まあ、とはいっても・・

そう、最後の時間帯では、1点をリードされたアントラーズに、何度か、「底力」を感じさせるゴールチャンスをブチかまされたわけだけれど・・

その最後の時間帯になって、人とボールの動きが「ぎこちなかった」アントラーズに、やっと、「よりシンプルな仕掛けの流れ」が出てきたんだ。

そんなチャンスメイクの流れでは、(前ベルマーレ所属!)杉岡大暉の、左からのサイド攻撃が、とても光っていたよね。

あっと・・、サイドバックの攻撃参加といえば・・

フロンターレから、プレー機会を求めてベルマーレに移籍してきた馬渡和彰「も」、(体力の限界を感じさせながら!?)、守備だけではなく、攻撃でも、魅力的なリスクチャレンジプレーを披露していたよね。

そういえば・・

浮嶋敏監督が、試合後のダゾーン・インタビューで、こんなニュアンスの内容をコメントしていた。

・・凌(しの)ぐところを、しっかりと凌(しの)げたことが結果を引き寄せた・・

フムフム。

要は、ディフェンスにおいて、しっかりと「最後の半歩」を出しつづけられた・・っちゅうことでしょ。

まさに、そう思うよ。

たしかに、ブロック守備「的」なボール奪取プロセスではあったけれど・・

それでも・・

ボールがないところでのマーキングの動きだけじゃなく、身体を張ったシュートブロックとか、ギリギリのカバーリングとか、苦しいなかで駆けつける強力プレの輪とか・・

そこには、まさに、「意志のディフェンス」と呼ぶに相応しいエッセンスが詰め込まれていた。

それが、勝負所での「しのぎ」を演出した・・っちゅうことだね。

そんな、主体的な、ギリギリの攻守ハードワークやリスクチャレンジは、確実に、次の進化の礎になるっちゅうコトだね。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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