湯浅健二の「J」ワンポイント


2020年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第4節(2020年7月12日、日曜日)

 

両チームが魅せた、前向きな「進化イメージ」こそが!・・(マリノスvsFC東京、1-3)

 

レビュー
 
いいね〜、長谷川健太。

後半のクリエイティブな交替采配(ブロック守備イメージの強化!?)も含めて、サスガの勝負師じゃありませんか。

たしかに前半は、マリノスの、素早く広い、人とボールの(組織的な!)動きに、東京のブロック守備が振りまわされるシーンもあった。

でも、リードを奪った後半は、東京のボール奪取プロセスが、とてもステディーに、それでいて、とてもダイナミックに高揚していったと感じた。

そうそう・・

このゲームのキックオフが「19時半」だったことで、そのまえに別のゲームも観ることにしたんですよ。

そして・・

ため息が止まらなくなった。

そう、そのゲーム内容が、まさに、「スムーズな流れのない局面デュエルのブツ切りサッカー」っちゅう体たらくだったんだよ。

要は、スペース攻略のプロセスに、様々な意味合いを内包する、人とボールの動きの「創造的なリズム」が、まったく感じられなかったっちゅうことだね。

そう、サポートや決定的フリーランニングなどの「人の動き」が、有機的に連動したシーンが、あまりにも、少なすぎたんだよ。

その試合での両チーム・・

彼らは、選手たちの創造性の発展を抑制するような(進化&深化ベクトルには乗れない!?)戦術サッカーのぶつかり合いだったっちゅうことだね。

でも・・

そんな低級サッカーに比べ、このゲーム(マリノスvsFC東京)は、数段、レベルが高かったっちゅうわけだ。

もちろんマリノスは、いつもの「美しい質実剛健サッカー」をブチかます。

対するFC東京は、振りまわされても、ウラを取られても、まったくメゲることなく、体勢を立て直して「次のサポートや協力プレス」に急行する。

とても創造的で忠実、そして強烈な意志が迸(ほとばし)る、素晴らしいディフェンスではありました。

そんな絶対ベースがあるから、FC東京のカウンターが冴えまくるのも道理。

先発は、ディエゴ・オリヴェイラと永井謙佑の「超特急コンビ」。

そしてブロック守備を強化してから長谷川健太は、アダイウトン&レアンドロのコンビをピッチに送り込んだ。

まあ、さまざまな戦術意図を凝縮した「狡猾なワナ」っちゅう感じだった。

とにかく、様々な戦術的視点で、見所満載のスーパー・クリエイティブ・マッチだった。

それにしても・・

先制ゴールをブチ込まれてから、その13分後に同点に追い付いたFC東京。

その「PK」を奪った仕掛けプロセスは、とにかく秀逸だった。

素晴らしいタテへの仕掛けフローだったんだよ。

まず、東京GKの林が、正確なグラウンダーフィードを、センターサークル付近にポジショニングしてた東慶悟の足許に、ピタリと付ける。

まったくフリーの東慶悟は、素早く振り向き、自然体で、軽くドリブルで前進する。

そのとき・・

同時に、最前線で待ち構えていたディエゴ・オリヴェイラが、タテパスを要求するように、戻り気味に、東慶悟へ寄せていくんだ。

東慶悟から、正確なグラウンダーパスが送り込まれたのは言うまでもない。

それが、勝負の瞬間だった。

このタテパスが送り込まれたのと同時に、右サイドバックの室屋成が、全力スプリントを敢行したんだ。

そしてディエゴから、測ったようなダイレクトパスが、スペースへ走り抜ける室屋成の眼前スペースへ送り込まれた。

それだけじゃなく・・

またまた「ほぼ同時」に、逆サイド気味にポジションを取っていた田川亨介が「爆発」したっちゅうわけさ。

あのタイミングだから、マリノスのセンターバックコンビが振り切られるのも道理。

そして最後のタイミングで、チアゴ・マルティンスが伸ばした足が、室屋成からのグラウンダークロスを受けようとする田川亨介の足を引っ掛けてしまったっちゅうわけだ。

このPKを得た仕掛けシーンは、まさにマリノスのお株を奪うような、スムーズな人とボールの動きだった。

何せ・・

そう、この一連の仕掛けフローでは、二度もつづけて、完璧に、決定的スペースを攻略しちゃったわけだから・・さ。

さて、マリノス・・

たしかに、FC東京のPK奪取プロセスは秀逸だったけれど、マリノスの先制ゴールもまた、とても素晴らしかったよね。

サイドゾーンで、人数を掛けてボールを動かし(東京ディフェンスの意識を引きつけ!)、そして、とてもシンプルなタイミングで、水沼宏太が、鋭いクロスを、ニアポストゾーンで待ち構える、オナイウ阿道へ送り込む。

そしてオナイウが「流した」ボールを、ファーサイドゾーンから、相手ディフェンダーの「眼前スペース」へはしり抜けた遠藤渓太が、ダイレクトで流し込んだ。

このプロセスもまた、人とボールのクリエイティブな動きが織りなした、美しいゴールではありました。

あっと、マリノス・・

たしかに、長谷川健太がブチかました守備イメージの変更によって、少し、人とボールの動きのリズムが抑えられ気味になった。

とはいっても、そんなネガティブな流れのなかでも、マリノスは、何度も、チャンスの流れを創りだしつづけていたよね。

アンジェ・ポステコグルーのことだから、このところ勝ち点が付いてきていないからといって、チーム戦術に「後ろ向きの手を加える」なんていう愚を犯すはずがない。

とにかく、マリノスとフロンターレのサッカーは、これからの日本サッカーが志向すべきベクトルを示唆し、強力に引っ張りつづけて「くれて」いるわけだからネ。

あっと・・

もちろん、「世界トップ」と直接的に対峙しなきゃいけない森保一ジャパンの場合は、事情は、少し異なるけれど・・さ(ホンモノの勝負では戦術サッカーも!?)。

とはいっても、森保一は、そんな厳しい状況のなかでも、最高レベルの「進化&深化パフォーマンス」を魅せつづけてくれているよね。

まあ、レスペクト・・

あっと、ハナシが逸れた。

言いたかったコトは。

冒頭で採りあげた「局面デュエルのブツ切り戦術サッカー」なんかじゃなく・・

このゲームで両チームが魅せたような、とても前向きで魅力的な「進化イメージ」を内包する「解放されたサッカー」がぶつかり合う勝負マッチこそ、日本サッカーの希望の星だと思っている筆者だということサ。

へへっ・・

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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