湯浅健二の「J」ワンポイント


2017年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第6節(2017年4月8日、土曜日)

 

2試合まとめて、気付いたポイントだけ・・(フロンターレvsヴァンフォーレ、1-1)(マリノスvsジュビロ、2-1)

 

レビュー
 
見方によっては、盛り上がることなく詰まらなかった(!?)フロンターレ対ヴァンフォーレ。

でも私は、いくつかのポイントを抽出していましたよ。

まずヴァンフォーレ。

サスガに吉田達磨・・という視点。

要は、ヴァンフォーレのサッカーが、明確に「発展ベクトル」に乗ろうとしているということ。

もちろん、今までどおりに、粘りのディフェンスからワンチャンスを「勇気をもって」結実させる・・という(取り敢えずは勝負志向の!?)基本方針は変わらない。

負けが込んだら、そりゃ、発展のためのモティベーションを充実させるのは至難のワザになっちゃうわけだからね。

それでも、この試合でのチーム&ゲーム戦術を深読みしたら、明らかに、「美しく勝とう」とする強い意志が底流にあるコトを感じさせてくれたヴァンフォーレだったんだよ。

そして彼らは、忠実で創造的、そしてダイナミックな「粘りディフェンス」から、後半ロスタイムに、素早く、勇気あふれるカウンター一発で虎の子のゴールをもぎ取った。

これから「脱皮」しようとするチームが、アウェー勝利(3連勝!)までもモノにしたら、それこそ「次のステージへ向けてのビッグモティベーション」という天からの授かり物っちゅうことになる。

でも・・

そう、その失点でやっと目が醒めたフロンターレが、本来のチカラを発揮し、後半ロスタイムであるにも関わらず、コーナーキックから同点にしただけじゃなく、勝ち越しゴールまで奪っちゃいそうな勢いで、ガンガンと仕掛けていったんだ。

フ〜〜・・

勝ち点3に手が届いていたヴァンフォーレだったから、とても悔しいドローではあったけれど、それでも、「あの」フロンターレに、守ってカウンターというだ けじゃなく、互角に「やり合う」時間帯まで創りだせたことには、意義深いコノテーション(言外に含蓄される意味)が込められていたと思う。

それも、これも、ストロングハンドと呼ぶにふさわしいプロコーチ、吉田達磨監督の優れた「ウデ」の証だと思っていた筆者だったんですよ。

ということで、次はフロンターレ・・

前述したように、私は、フロンターレが、失点という強烈な刺激によって覚醒し、「全体的な動きが倍増した・・」という印象をもった。

そう、そこまでの(まあ後半ロスタイムに入るまでの!?)フロンターレのサッカーは、「人とボールの動き」という視点で、完璧に「鳴かず飛ばず」だったんだよ。

個のチカラでは、ヴァンフォーレを上回っている。

でも、その「個のチカラ」が集積し、何倍にも拡大してしかるべき「チームプレー(組織サッカー)の内実」が、どうもうまくアップしていかないんだ。

そりゃ、そうだ。何せ、人とボールの動きが、とても鈍重なんだから。

何度、「どうして走らないんだ〜!!」って、心のなかで叫んだことか。

とにかく彼らの足が止まり気味だったコトは確かな事実だったんだ。

それじゃ、彼らが得意する、「ダイレクトパス・コンビネーション」など、機能させられるはずがない。

また、「走る」コンテンツの一環である「パス&ムーブ」も少なすぎる。

「パスを出したら取り敢えず動いておく・・」というプレーイメージと、それをチームのなかで共有しながら、実際のアクションを積み重ねていくことが(成功体感を積み重ねていくことが!)とても大事なんだよ。

ボールが動けば、自然と人も動く・・。

その発想には、危険な要素の方が多い。

何せ、止まっている足許から、別の止まっている足許へボールを動かすのは簡単だからね。でもそれじゃ、何も生み出せないし、人も動かせない。

そう、組織コンビネーションの当面の目標は、スペースの攻略なんだよ。だから、足許パスをいくらつないだって、何も生み出せないっちゅうわけさ。

でも、人の(スペースへ!)動くことが絶対的ベースになれば、もちろんボールも、スペースへ動くようになる・・というわけだ。

そんな人とボールの動きが、今日のフロンターレでは、とても低級だったというわけだ。

ケガ人が続出しているから・・!?

まあ、そういう背景もあるんだろうけれど、それでも、常日頃のトレーニングでは、しっかりとチームコンセプトを認識し、一人ひとりが考えながら(工夫しながら)スペースを攻略しようと努めていはずだからネ・・

もちろん鬼木達監督は、ケガ人が多いなどといった言い訳など、一切しないよ。

そうではなく、ご自分も、チーム全体の「動きのなさ」に、自戒を込めて言及していたよね。

とにかく、まずは、ケガ人が早く戻ってくることを期待しましょう。

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ということで次は、マリノス対ジュビロ。

この、とてもエキサイティングな勝負マッチになった試合からは、名波浩監督の、こんな(ニュアンスの!!)コメントをピックアップしましょうかね。

それは・・

・・たしかに前半は怖がっていた部分もあったと思う・・だから前へ出て行けないシーンがつづいた・・もちろん守備は安定していたけれど・・

・・でも後半は、様々な意味合いを内包する自信が充填され(!?)、それに伴って、プレーの質も大きくアップしたと思う・・

・・だから、マリノスに対しても、互角以上の闘いを展開できた・・

・・この試合での(有意の!?)自信にあふれたサッカーは、確実に「次」につながる・・

そう、必ず、次につながる。

私は、この日のジュビロを観ていて、本当に、名波浩「も」とても良い仕事をしている・・と感嘆していたんだ。

それは、「美しく勝てる」ような、(リスク!)チャレンジャブルな良いサッカーへチームを導くことができる優れたストロングハンド(プロコーチ)という視点。

ところで、名波浩さんのトコロで使った「も」という表現。

それは、前述の吉田達磨さんや鳥栖のマッシモ・フィッカデンティ、はたまたセレッソのユン・ジョンファンさんやコンサドーレの四方田修平さん、ベガルタの渡邉晋さん等などといった優れたプロコーチたちを意味します。

要は、リーグの中では弱者と考えられているチームを、「本格的な強豪」へ引き上げていけるだけの内容のある仕事をしている優秀なプロコーチたちのことでっせ。

もちろん、ネルシーニョやミハイロ(ペトロヴィッチ)、石井正忠、長谷川健太や森保一といった、既に高い評価を確立しているプロコーチたちに追い付き、追い越すような存在という意味合いも含めて・・ネ。

あっと・・

ここでは、数人しか名前を列挙しなかったけれど、彼ら以外にも、とても優秀な(若い!?)プロコーチたちが活躍していることも付け加えなけりゃフェアじゃない。

そう、日本サッカー界にも、本当に優れた(勇気と強烈な意志に溢れた!?)プロコーチたちが育ってきているんだよ。

名波浩の、確固たるコメントを聞きながら、そのことを言いたくなったというわけさ。

あっと・・

名波浩さんも言っていたけれど、私は、タイミングよく交替出場したアダイウトンが創りだした何度かの決定的チャンスを決められていれば、「次につながる自信」だけじゃなく、勝ち点も持ち帰れたのに・・なんていう、タラレバの思いにかられていたっけ。

とにかく、これからも、名波浩がダイナミックに引っ張りつづけるジュビロ磐田に「も」注目してリーグを楽しむことにしましょう。

2試合で疲れ切っている筆者なので、今日は、こんなところで・・

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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