湯浅健二の「J」ワンポイント


2017年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第24節(2017年8月27日、日曜日)

 

堀孝史レッズは、新戦力をチームにインテグレートする(効果的に組み込む作業)も順調に進めている・・(エスパルスvsレッズ、1-2)

 

レビュー
 
・・言われている意味は、分かりますし、たしかに彼も、まだ多くの課題は抱えています・・

・・それでも私は、パフォーマンスが良くなっていることもあって、実戦でのプレーを積み重ねることで、本当の意味で発展していくことこそが大事だと思っているんですよ・・

勝利を収めたホームでのFC東京戦のあと、新任の堀孝史さんに、「彼」についての批判的な質問を投げたときのことです。

堀孝史さんは、そのチト攻撃的な質問に対し、例によって真摯に、そして落ち着いた口調で、そんなニュアンスの内容をコメントしてくれたっちゅうわけです。

その「彼」・・

言わずもがなの矢島慎也でっせ。

堀孝史さんは、彼の、インテリジェンスも含めた「能力」を、とても高く評価しているんだね。

だからこそ、私のような「外野」からのノイズとは関係なく、強い意志で矢島慎也を使いつづけた。

そして・・

そう、その矢島慎也が、確かな手応えを、外野にも明確に感じ「させられる」までに、プレーの質をアップさせているんだよ。

その絶対的ベースは、もちろん攻守ハードワーク。

要は、攻守にわたって、積極的に「仕事」を探しつづけられるようになっている・・っちゅうこと。

もちろん私は、(FC東京戦での!)前言を撤回などしないよ。

そうではなく、彼の、この短い期間での「とても優れた学習能力」に対して、素直に、賞賛の拍手をおくるのさ。

矢島慎也。

攻守のリスキープレーにもチャレンジしつづける、勇気あふれる積極プレー姿勢に、乾杯。

ということで、試合・・

ワンチャンスのCKを決められてリードされたハーフタイム。

堀孝史監督が、「よい内容のサッカーができている・・このまま続けよう・・」と、選手たちを後半のグラウンドへ送り出したという。

いいね〜・・まさに、おっしゃる通り。

そのハーフタイムコメントは、選手たちを勇気づけたことでしょ。

自分たちが良いプレーをしていることは、選手たちが、もっとも強く体感しているわけだから。

とはいっても、課題は見えていた。

たしかに組織サッカーは悪くなかったし、ゲームのイニシアチブは握りつづけていた。

またエスパルスのカウンターも、効果的に抑制できていた。

でも・・

そう、そんな(全体的な!)ゲームの流れだったにもかかわらず、どうしても、うまくシュートチャンスを創りだせないでいたレッズだったんだよ。

その一番の要因は、サイドからのドリブル突破をうまく繰り出していけなかったことだね。

そのことで、相手守備ブロックの人数&ポジショニングバランスを偏らせられない(!?)

だから、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションも、うまく機能させられない。

サイドからのドリブル勝負は、とにかくチャレンジすることが肝心なんだ。

その局面デュエルで、互いに潰しあったり、ギリギリのファールを誘ったり、等など、チャレンジさえすれば、「何か」を起こすことが出来る「かもしれない」でしょ。

またボールを奪われても、「その状況」から、決定的なカウンターを繰り出すのは比較的難しいよね。

とにかく、蛮勇的なトライは別にして(!?)、相手が、「あっ・・ヤツは勝負を仕掛けてくる!」って感じさせるコトこそが大事なんだ。

でも、レッズは・・

そう、サイドゾーンで、1対1の状態でパスを受けても、少し「寄せ」られたら、すぐにバックパスや横パスで勝負を「逃げてしまう」シーンが、あまりにも多すぎたんだよ。

宇賀神友弥、関根貴大、(交替出場した)駒井善成・・

彼らは、多くの場面で、(1対1になるなど!?)チャンスを見出したら、そのままタテへ抜け出したり、中へ切れ込んだりと、より積極的に勝負をブチかましていくよね。

だからこそ、前述したように、相手守備ブロックの、イメージ的なバランスの確信レベルを乱すことができた。

そして、だからこそ、サイドからも含めた組織コンビネーションも、より効果的に機能させられた。

でもこの試合では、そんな、相手を威圧するような「積極的な雰囲気」が欠けていたんだよ。

それに対して、駒井善成が入ってからのエスパルス守備は、駒井善成のドリブル突破への積極オーラに、より「気を引きつけられた」こともあって(!?)少しバランスを乱す状況が増えた・・と思う。

そしてレッズの攻撃に、本来の、仕掛けの変化を醸し出すような効果的なリズムが戻ってきたっちゅうわけだ。

そう、サイドゾーンからの個の勝負と、中央ゾーンでの、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションが冴えわたるシーンが増えていったんだよ。

そう、決定的スペースを攻略し、シュートを打つために・・ね。

最後に・・

レッズは、この難しいアウェーマッチを、本当によく逆転した。

筆者は、この勝利に、前述した様々なコノテーション(言外に含蓄される意味)も含めて、とても大事な意義が内包されていると思っているんだよ。

蛇足だけれど・・

先日の、ACL準々決勝での(対フロンターレ戦での)完敗。

そのレポートでも書いたように、レッズは、二点をリードされてから、彼ら本来の攻撃サッカーができるようになった。

そのゲームに臨むにあたって堀孝史さんは、チト、フロンターレをレスペクトし過ぎた戦術サッカーを選択した!?

何といっても、次元の高いサッカーという意味で日本を代表するレッズとフロンターレの対峙だからね、様々な意味合いで「世界」が見えるような、ハイレベルな仕掛け合いのゲームにして欲しいと願っている筆者なのですよ。

ということで、ACL準々決勝の第二戦でのレッズは、攻守にわたって、「冷静なアグレッシブさ」を前面に押し出した勝負サッカーをブチかまさざるを得ないでしょ。

そう、済州戦のときのようにネ。

私は、ゲーム内容で、日本サッカーの歴史に残る素晴らしい一戦を期待していま〜す。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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