湯浅健二の「J」ワンポイント


2016年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第18節(2016年7月2日、土曜日)

 

レッズの勝者メンタリティーに実が詰まっていく・・(アビスパvsレッズ、1-2)

 

レビュー
 
すごかったネ〜、レッズ。

「あんな状況」からでも、しっかりと逆転勝利をもぎ取った。

あんな状況・・

たしかに前半は、一人多くなったにもかかわらず、鳴かず飛ばずの消極サッカーで同点ゴールまでブチ込まれてしまったアビスパだったけれど・・。

そう、そんなアビスパが、やっと積極的になった後半には、ウェリントン、城後寿、はたまた金森健志といった強者たちが、立てつづけに決定的シーンを創りだしちゃうんだよ。

あのピンチには、レッズを支持する誰もがフリーズしたでしょ。

それだけじゃなく、(後半の!)レッズの仕掛けの流れも「ままならなく」なっていくんだ。

そう、アビスパの(前への!)組織ディフェンスのダイナミズムが大幅にアップしたことで、ゲームのイニシアチブを握ることができず、ダイレクト(パス)コンビネーションの流れも、うまく抑制されちゃうんだよ。

そんなだから、レッズが、スペース攻略をイメージした「仕掛けの流れ」を、効果的に繰り出していけなくなるのも道理といった「忍耐の展開」になっていくんだ。

要は、レッズにとって数的に不利な状況が、(アビスパの積極性アップによって!!)ロジカルに影を落としはじめたということだね。

でも・・

そう、後半がはじまってから立てつづけにブチかまされた(前述の!)ピンチを切り抜けたレッズは、興梠慎三が、これぞ粘りマインドの結晶(決勝)ゴールっ(!!)ってな「個人技シュート」を決め、そして、そのリードを、まさに質実剛健に守り切ったんだ。

この逆転勝利は、レッズが、ホンモノの強いチームへの階段を、着実にステップアップしつづけていることの証だと感じていた筆者なのだ。

・・粘りの決勝ゴール・・

・・最後の最後まで、決して気を抜かずに、フルスプリント(守備のイメージング能力と強い意志の発露!)を積み重ねる組織(連動)ディフェンス・・

・・などなど・・

それこそが、勝者メンタリティーの進化&深化を明示する「証」だとも思うわけさ。

ところで・・

前半22分から一人多くなったアビスパが、そこから前半の(!)残り時間に展開したサッカーだけれど、それって、見ちゃいられなかったよね。

彼らは、数的優位というアドバンテージの「活かし方」を、感覚的に理解していない!?

一人多くなったときは、いの一番に、前からのプレッシングの勢いを「大幅」にアップさせることを意識しなきゃいけない。それもチーム一丸となってね。

そう、積極的なプレッシング(守備)をブチかますんだよ。

それが出てくれば、(一人多いにも関わらず!)あのようにレッズにイニシアチブを握りつづけられることもなかったはず。

アビスパは、前への勢い(プレッシング≒なるべく前でボールを奪い返そうとする意志!?)を大幅にアップさせることに、チーム一丸となって取り組まなきゃいけなかったんだよ。

でも、チームに統一感が生まれず、疑心暗鬼からの「リスクを怖がる消極マインド」ばかりが感じられていた。

そう、彼らのプレー姿勢は、まさにチグハグだったんだよ。それじゃ、怖くて、「前から勝負」なんて仕掛けられるばすがない。

相手チームに退場者が出たときは、チーム全体が「一つ」にまとまり、前からボールを奪い返しにいくための運動量(意志のダイナミズム!!)を倍増させる・・という「感覚的な理解」を、チーム全体で共有する必要があるんだ。

もちろん、そこで増幅するエネルギーは、「まず」ディフェンスに投入する。そして、ボールをうまく奪い返せるようになれば、次の攻撃にも、自然と勢いが乗っていくはずだ。

要は、ボールがないところでの動きの量と質がアップしていくということだよね。

そして、そのことで、組織コンビネーションの機能性もアップし、うまく使えるようになったスペースで、個の勝負プレー(ドリブル勝負)も、より効果的にブチかましていけるっちゅうわけさ。

そう、後半のアビスパが魅せたようにね。

そして実際にアビスパは、前述した決定的チャンスを何度も創りだした。「あのうちの一つ」でも決まっていたら、勝負が、どのように転んだか誰にも分からない。

でも・・

そう、興梠慎三のスーパー個人技ゴールが決まってからレッズがブチかました、それぞれの意志が熱く炸裂するような、ダイナミックでクリエイティブな「連動性」が詰め込まれたディフェンスを展開して勝ち切ったというわけだ。

ということで、このゲームもまた、レッズの勝者メンタリティーを拡充させるに足る貴重な学習機会だったと思う筆者だったのであ〜る。

ということで、これから一寝入り。

そして3時頃にゴソゴソと起き出し、ユーロ準々決勝「ドイツ対イタリア」を観戦します。

このカード、前回は、2006年ドイツW杯準決勝だった。

もちろん私は、ドルトムント(ジグナル・イドゥーナ・パルク)のメディア席で観戦。そして、悔しい敗戦の証人になった。

延長後半の残り1分というタイミングで、イタリア左サイドバック、グロッソがブチかましたスーパー決勝ゴールは、今でも鮮烈に目に焼き付いている。

とにかく、お互い、ゲームを楽しみまょうね。

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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ、そしてチャンピオンシップ・・という「興行」について。

昨シーズンの「J」は、本当にツキに恵まれた。

何せ、年間最多勝ち点チームというリーグ頂点に立ったサンフレッチェが、「興行チャンピオン」にも輝いたわけだからね。でも、昨シーズンの二位クラブは、ガンバ大阪なんだってサ。要は、「興行チャンピオンシップ準優勝チーム」ということらしい。

まあ、皆さんも感じられている通り、とても、変。まあ、協会側は、この不自然なリーグシステムを「まだ」つづけるつもりらしいけれど・・サ。フンッ。

皆さんもアグリーだと思うけれど、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。

まあ、以前の「2ステージ制」とは違い、昨シーズンから始まった「今回の興行」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになることだけが、救いかな。

ということで、その後のトーナメント(チャンピオンシップ)は、まさに「興行」。

そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる(刻み込まれなきゃいけない!)。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうわけだからね。

だから、サッカー人だけじゃなく、読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむべきだと思うわけなのですよ。

この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。

そこでは、いかに(目的が歪んだ興行の!)2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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