湯浅健二の「J」ワンポイント


2015年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第34節(2015年11月22日、日曜日)

 

変化に富んだゲーム展開だった・・また、李忠成についても簡単に・・(レッズvsヴィッセル、5-2)

 

レビュー
 
記者会見で、ミハイロ・ペトロヴィッチが、こんなコトを言った。

・・この試合は(レッズからの視点として!)、三つの時間帯(戦術的なフェーズ!?=Phase=局面)に分けることができる・・

・・まず、とても良いサッカーを展開できた前半30分あたりまで・・

・・次が、前半26分にミドルシュートを叩き込まれ(3-1にされた!)、その後も(全体的な!)ゲームのイニシアチブをヴィッセルに奪われていた後半15分あたりまでの30分・・

・・そして、再び自分たちのペースを取り戻した最後の(後半残りの!)30分・・

フムフム・・、まあ、そういうことだね。

そんなだったから、ヴィッセルに「決定的な流れ」を作り出された「真ん中30分」あたりのゲーム内容が(より!?)強調されて記憶されちゃうケースもあるだろうけれど、それってネガティブだよね。

たしかに、そのイメージが「苦手意識」にまで膨(ふく)らんでしまうことはないだろうけれど、「やられていた(ウラのスペースを攻略された!?)時間帯もあった・・」なんていう後ろ向きの印象が、多少は残ったに違いないと思うワケなのです。

ヴィッセルとは、一ヶ月後の天皇杯で(準々決勝)でも当たるわけだから、それまでには、ビデオを見返しながら、多少の「ネガティブ印象」を払拭しておかなきゃいけない。

何といっても、ゲーム全体を通せば、レッズは、攻守にわたってヴィッセルを凌駕する、素晴らしい組織サッカーを魅せつづけたわけだから。

ディフェンス(ボール奪取プロセス)では、チェイス&チェック、協力プレスやインターセプト等など、素晴らしい「イメージ連動コンビネーション」がハイレベルに機能した。

また攻撃でも、シンプルなタイミングのパスと、絶妙のコース&タイミング(爆発スタート)のフリーランニングが、美しいハーモニーを奏でていた。

そう、創造的な(≒仕掛けイメージが素晴らしくシンクロした!)ダイレクトパス・コンビネーションが、何度も炸裂したんだよ。

あっと・・

この、ダイレクトでのパス(コンビネーション)やシュート・・というテーマについては、先日、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」もご参照アレ。

そこでは、日本サッカー協会が示した(戦術用語の!)指針に対して物申しました。ヘヘッ・・

あっと、蛇足。

とにかくレッズが、(全体としては!)素晴らしいサッカーを展開したっちゅうコトが言いたかったわけだ。

ミハイロ(ペトロヴィッチ)も主張していたし、私もアグリーなんだけれど、とにかくレッズは、攻守にわたって、創造的な「リスクチャレンジ」を積極的に繰り出していくことを志向していると思う。

それこそが、発展のための唯一のリソースなんだ。そのマインドは、もちろん、「あの」イビツァ・オシムにも通じる。

そう、積極的なリスクチャレンジ姿勢こそが、何よりも重要な意味をもっているんだ。

とはいってもレッズは、「勝負」という視点では、幸運にめぐまれないことの方が多い。

それは、勝者メンタリティーとか勝負強さ・・といった、、チーム戦術的な(!)テーマとは、チト違う。

チーム戦術的には、レッズのサッカーは、とても高いレベルに達していると思うからね。

特に、ディフェンス。それは、進化し、深化した。

とにかく、選手たちがブチかます意志のコノテーション(言外に含蓄される意味!)が素晴らしいんだ。汗かきのチェイス&チェックにしても、ボール奪取の勝負プレーにしても。

でも、いかんせん、例えば広州恒大が擁する、詰まった状況からでも強引にシュートまで持っていってしまうような「最終勝負で光り輝く個の才能」が、十分ではない。

もちろんレッズは、コンビネーションで裏のスペースを攻略してダイレクトシュートをブチかます・・ってな組織的な仕掛けは素晴らしいよ。

でも、「困ったときの・・頼み」ってな個の才能までも十分に備えているとは言い難いんだよ。まあ、「無い物ねだり・・」しても何も始まりゃしないけれど・・サ。

あっと、攻撃だけれど、ここでは一人の選手にスポットライトを当てたい。

李忠成。

この試合での李忠成は、素晴らしかった。ホントに素晴らしかった。

最前線からの、忠実な(それも味方をリードするような長い距離の!)チェイス&チェックだけじゃなく、何度かは、自らボールを奪い返してショートカウンターの起点になったりした。

そんな守備だけじゃなく、この試合では、彼の「ポストプレイヤーとしてのクオリティー」を、存分に魅せつけたんだ。

もちろんヘディングでも存在感を魅せたけれど、とにかく「あの」ポストプレーは、インプレッシブそのものだったんだよ。

身体全体をつかって相手を抑えながら、ダイレクトでも、キープからでも、サポートしてくるチームメイトが走り上がる「眼前スペース」へ、正確に、そして効果的なパスを落としたりする。

これが、殊の外、効果的だったんだ。

前々節の「FC東京」戦じゃ、交替出場してからの「意志が感じられない怠慢プレー」に腹が立ったけれど、このゲームでは、そのときの「悪い印象」が完璧に払拭された。

ホントに李忠成は、攻守にわたって、えも言われぬ程「効果的」なプレーを展開したと思う。

その「FC東京」戦では、アタマにきていたから、(記者会見場で!?)かなり辛辣な言葉を吐いてしまったけれど、遅きに失しているにしても、前言は、誠実に撤回させていただきます。

ホント、このゲームでの李忠成は、プロプレイヤーとして、また個人事業主として、まさに立派に闘い切った。

これからの「J1チャンピオンシップ」や「天皇杯」でも、切り札として、素晴らしい「闘う意志」を魅せてくれるに違いない。

最後に、その「J1チャンピオンシップ」だけれど・・

初戦はガンバ。そしてガンバに勝てば、決勝でサンフレッチェと対峙する。

それにしてもサンフレッチェ。

巨大なプレッシャーが掛かるシーズン終盤では、本当に「強かった」よね。

この、「(勝負)強いサンフレッチェ・・」というテーマについては、これまた、新連載「The Core Column」で書いたから、「そのコラム」もご参照アレ。

とにかく、サンフレッチェ、ガンバともに実力派だから、互いにフェアに攻め合うエキサイティングマッチを期待するけれど、ミハイロも言っていたように、結 局彼らは、「粘り強く守備ブロックを固めて必殺カウンターを繰り出していく・・」といったゲーム戦術で臨んでくるんだろうね。

こちらとしては、まあミハイロもそうだろうけれど、互いに「ある程度バランスの取れたリスクチャレンジ」をブチかまし合う・・ってな、日本サッカーにとっても価値のあるサッカーイヴェントになることを願って止みませんよ。

さて〜〜・・

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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ・・という「興行」について。

チマタでは、「チャンピオンシップ」なんていうテーマで盛り上がっている。

でも・・ね・・

皆さんもご存じのように、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。

以前の「2ステージ制」とは違い、今シーズンからの「それ」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになるはずだからね。

その後のトーナメントは、まさに「興行」。

そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうからね。

だから、「J」に関わっているサッカー人は、そして読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむっちゅうわけだ。

この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。そこじゃ、いかに2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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