湯浅健二の「J」ワンポイント


2015年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第21節(2015年7月25日、土曜日)

 

2015_J1_第21節・・今回も、連チャン観戦コラムでっせ・・(フロンターレvsエスパルス、3-2)(グランパスvsレッズ、2-1)・・(2015年7月25日、土曜日)

 

レビュー
 
「脅威と機会は表裏一体・・それがキーワードですかね・・」

そんな私の質問に、風間八宏さんは、大きく頷いていたっけ。

要は、レナトがいなくなった代わりに、田坂祐介が、素晴らしい存在感を示したけれど・・っちゅうニュアンスの質問だったんですよ。

だからこそ、この試合で魅せたフロンターレの「人とボールの動きのリズム」は、風間八宏さんが思い描く「理想型イメージ」に、(再び!?)近づいていった!?

まあ・・特に後半・・ね。

エスパルス大榎克己監督もシャッポを脱いでいたように、とにかく、この日のフロンターレが(特に後半!!)ブチかました、組織サッカーには、レベルを超えた「組織サッカーの美しさの内実」が詰め込まれていたんだよ。

この、フロンターレ組織サッカーがかもし出す「美しさの源泉」というテーマについては、新連載「The Core Column」シリーズで発表した「このコラム」を参照してくださいね。

あっと・・

例によって風間八宏さんは、誠実に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・

・・おっしゃるように、レナトと大久保嘉人という個のチカラに長けた選手にボールが入ったときには、そこでボールの動きのスピードが失われたり、そこから個のドリブル勝負がスタートしたりするケースも多かった・・

・・もちろん、大久保嘉人にしても、レナトにしても、他の選手たちにはできないような価値ある個人勝負プレーをブチかましてくれた・・

・・でも逆に、彼らの攻守ハードワークの穴は、他の選手たちがしっかりと埋めなければならなかった・・

・・あっと、田坂祐介・・

・・素晴らしい組織プレイヤーだと思う・・レナトがいると周りがサポートに奔走しなければならないけれど、彼は、シンプルなリズムの(人とボールの)動きに乗るだけじゃなく、攻守にわたって、ボールがないところでのハードワークもやりつづけてくれる・・

・・とにかく田坂祐介は、チームに馴染めば・・もっと、もっと活躍してくれるはずだ・・

そう、田坂祐介。

彼のトコロにボールが入ったら、とにかく「収まる」。

そして、変に「こねくり回す」ことなく、余裕をもって、またケースバスケースで素早く、次の「仕掛けスペース」へ効果的にボールを動かしてしまう(パスのことだよ)。

そして、もちろん、忠実なパス&ムーブで、次のコンビネーションのコアとして機能する。

このゲームでも、そんな動きのなかから、何度(彼から)決定的なパスが送り込まれたか。

また、次の守備でも、効果的なポジショニング(オーバーラップした味方のカバーリング!)やボール奪取プロセスプレーを魅せつづけるんだ。

私は、田坂祐介が魅せつづける、そんな「ドイツ・ブンデスリーガ仕込みの!?」ハイレベル組織プレーが、とても気に入っていた。

まあ、このゲームからは、そんなところですかね。

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さて、ということで、グランパス対レッズ戦。

前節のサンフレッチェ戦では、浅野拓磨。

そして、この試合では、永井謙佑。

まさに、まったく同じタイプの「スピードスター」にやられてしまった。

サンフレッチェとグランパスの「突貫小僧たち」が狙いつづける(レッズにとっての!)ドツボピンチのパターン。それが、同じような感じだったんだよ。

要は、レッズ後方でのパス回しや、そこから出てくる仕掛けのタテパスを狙ってボールを奪い返し、必殺の(タテ一本の!!)超速カウンターをブチかまそう・・っちゅうイメージ。

グランパス選手たちは、前半立ち上がりの数分間で、「これだっ!!」っちゅう、チャンスメイクの大きな可能性を体感したはず。西野朗監督の「イメージ作り」の通りにね。

そんなだから、レッズのタテパスをカットしたり、競り合いから弾き出されたルーズボールになったら、まさに思うツボ・・っちゅうわけだ。

それを拾い、間髪入れずに、タテのスペースへパスを放り込んだり、爆発スタートを切ったスピードスターの眼前スペースへ、アバウトでもいいから、パスを飛ばしたり。

そんな、「実効レベルの高いチャンスメイクパターン」は、森脇良太がレッドカードで退場になってからも(グランパスが数的に優位に立ってからも!)大きく変化することはなかった。

このコトが、とても興味深かったんだよ。

もちろん、数的に優位になったグランパスは、少しは「全体的に押し上げ」ながら、ボール支配率を高めてはいったよ。

でも彼らは、そんな仕掛けの流れのなかからは、まったくと言っていいほどチャンスの流れを発芽させられなかった。

逆に、レッズに、カウンターからチャンスを作り出されちゃったりする。

面白いネ。この時間帯での、両チーム選手たちの「心理的な揺動」が・・ネ。

そして後半。

グランパスは、ボール支配率が高い「全体的な攻め上がり」を魅せはするけれど、その雰囲気からは、前半同様に、確信のカケラも感じられなかった。

それでは、チャンスの流れを作り出せないのも道理・・ってなことだ。

そして逆にレッズに、カウンターのチャンスを与えちゃったりする。

その時点での勝負の流れは、どちらに転んでもおかしくなかった。グランパスが数的に優位に立っていたにもかかわらず・・だよ。

でも・・

そう、後半16分に、矢野貴章の、目の覚めるようなキャノンシュートが飛び出しちゃうんだ。アレは、西川周作でも、まったくノーチャンス。アレは、まさに・・だったね。

そして、そこからゲームが、お決まりのパターンになっていく。

攻め上がるレッズに対して守備を固めるグランパスは、それをベースに必殺カウンターを狙う・・というわけだ。

それでもレッズは、最後の最後まで諦めずに攻め上がっていった。

それも、決して、「ゴリ押しで無理強いの仕掛け」じゃなく、あくまでも冷静に、実効レベルの高いチャンスを作り出そうとしていたんだ。

そう、サイドからの必殺クロス攻撃。

何度かチャンスを創り出した後、残り2分というタイミングで、橋本和から、逆サイドでまったくフリーになっていた興梠慎三へ、まさに必殺のピンポイントクロスが飛んだんだよ。でも・・

まあ、仕方ない。

とにかく、皆さんも体感されている通り、いまのレッズは、とても良いチームです。

そのことは、森脇良太が退場になるまでのゲーム内容を観ていれば(まあ、矢野貴章のゴールがきまってからのサッカー内容でも!!)、誰もが実感できるはず。

もちろん、結果至上主義に「偏り過ぎた」現実サッカーではなく、あくまでも、「サッカーの美しさ、楽しさ」と、「結果」という、ある意味で相反するファクター(要素)を、できる限り高い次元でバランスさせようと努力しているという意味合いにおいてだよ。

そう、自分たちが志向する「ベクトル」への自信と確信。それこそが、「意志のサッカー」と呼ばれるモノの本質だと思う。

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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ・・という「興行」について。

メディアは、「1.ステージ優勝」なんていうテーマで盛り上がっている。

でも・・ね・・

皆さんもご存じのように、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。

以前の「2ステージ制」とは違い、今シーズンからの「それ」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになるはずだからね。

その後のトーナメントは、まさに「興行」。

そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうからね。

だから、「J」に関わっているサッカー人は、そして読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむっちゅうわけだ。

この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。そこじゃ、いかに2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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