湯浅健二の「J」ワンポイント


2011年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第21節(2011年8月14日、日曜日)

 

「解放」され、本格的に発展(再生)ベクトルに乗ったレッズ・・(ALvsR, 1-3)

 

レビュー
 
 アタマにくるね、このカメラマン&ディレクターコンビには・・。彼らには、われわれから、ボールがないところでの深〜いドラマに舌鼓をうつという楽しみを奪い取る権利なんて、まったくないわけだからネ。

 ホントに、いったい何を考えているんだろう。こんな中途半端なカメラワークじゃ、肝心の観戦ポイントを見られやしない。本当にフラストレーションが溜まる。

 ハイビジョン(HV)になったんだから、もっと大胆に「引けば」いいのに、とにかく、腹が立つほど中途半端にカメラが「寄り過ぎ」なのですよ。そしてバタバタと、これまたイライラするくらい落ち着きなくカメラを「左右に振る」わけです。フ〜〜・・

 でも・・まあ・・気を取り直し、再生プロセスが本格ベクトルに乗った感のあるレッズが、久しぶりにダイナミックな組織サッカーを展開したアルビレックス戦をレポートします。まあ・・ネ、カメラワークがヒドいだけじゃなく、それに加えてレッズのサッカーが低調だったら、2-3行でコラムをまとめちゃったに違いなかったけれどね・・あははっ・・

 ということで、やっと「解放」され、本格的に発展ベクトルに乗ったレッズ・・という視点のコラムです。

 イレギュラーするボールを、身体の中では比較的ニブい足を使ってコントロールするのがサッカー。そんな、不確実な要素が満載されているからこそ、基本的なチーム戦術イメージはあるにしても、最後は、自分なりの判断と決断で、勇気をもってリスクにもチャレンジしていかなければ、決して発展など望めない。

 要は、最後は「自由」にプレーせざるを得ないのが、サッカーというボールゲームの基本的な性質だということです。

 そして私は、選手にそのメカニズムを理解させ、自分たち主体で(攻守にわたって)積極的にチャレンジしていくプレー姿勢を植え付けることを「解放」と呼ぶのです。

 もちろん、選手の基本的なチカラがとても劣る場合は、ケースによっては、ある程度の「決まり事」を、なるべくシンプルに徹底させるという「方法論」に偏らなければならないこともある。そう、戦術サッカー・・。とはいっても、そこでも監督・コーチは、選手たちが志向すべき方向性を、しっかりと「解放」してあげなければいけません。

 「解放」という目指すベクトルを意識させながら、ステップバイステップで「戦術的な妥協の範囲」を狭めていく(戦術的な決まり事を少なくしていく)のですよ。そう・・、戦術サッカーからの「解放」こそが、監督・コーチに与えられたミッションの本質なのです。

 だからサッカーは楽しいし、喜びがある。もっと言えば、監督・コーチの究極のミッションは、「人間の弱さ」と闘いながら、選手たちに希望や喜びを与えること・・なんて定義できちゃったりして。

 ドイツサッカーの父、故ゼップ・ヘルベルガーが、こんな名言を残している。

 「タイムアップのとき(トレーニングが終了したとき)、選手たちが笑いながら(疲労で)ブッ倒れるようなゲームやトレーニングが最高なんだよ・・」

 あっと・・またまた脱線。レッズが、本格的な再生ベクトルに乗ったに違いないと感じられたことで、(ヒドいカメラワークにもかかわらず!?・・しつこいですかネ・・スミマセン・・)ちょっと嬉しかった筆者なのでした。

 もちろんそのバックボーンには、ゼリコ・ペトロヴィッチのストロングハンドがあるに違いない。決してアロガントに(上から目線で!?)コメントしようとしているわけではないけれど、とにかく(今のところは!?)ゼリコの優れた学習能力と、真摯な(!?)自己調整力に拍手ってなところですかね。

 とにかくレッズのサッカーに、本来のダイナミズムが戻ってきたのですよ。そう、強烈な意志のサッカー。

 その意志が集約されるプレーは、もちろん守備。特に、デスポトビッチも含む前戦プレイヤーが、1人の例外もなく、忠実にチェイス&チェックを繰り返す積極(組織)ディフェンスは見所十分です。だからこそ、中盤ディフェンス(ボール奪取プロセス)が、とても効果的に機能するっちゅうわけです。

 攻撃のときに、前戦の両サイドを「常に誰かが(最初の頃は決められた選手が!)埋めているべき」というゼリコ・ペトロヴィッチのコンセプトだけれど、それは、両サイドの前戦に、誰でも走り込めるスペースを空けておく・・というふうな拡大解釈だってできる。

 とにかく、選手自身が、縦横無尽のポジションチェンジを繰り返しながら、人とボールをクリエイティブに動かす結果として、サイドゾーンから「も」最終勝負を仕掛けていく・・という具体的なイメージを持ちつづけていることこそが大事だというわけです。

 そう・・、この試合で、とても重要な意味が込められていた3点目シーンのようにね(まあ・・あれはカウンターからだったけれど・・)。

 とにかく、両サイドからの仕掛けが重要だというイメージをチームに深く浸透させられたことには、とても重要な意義があったのですよ。だからこそレッズは、この試合のように、変化に富んだ仕掛けを繰り出していけたわけです。

 もう一つ。この試合では、アルビレックスが「2-1」と差を縮めてからのゲーム内容にも、とても重要な意味が込められていたよね。要は、一点差に迫られたレッズが、再び、主体的に「勢い(意志)」を高揚させられたということです。

 たしかに3点目はカウンターからだったけれど、「よ〜し、あと一点だっ!」と、たたみ掛けてくるアルビレックスの勢いを、とても冷静に受け止め、徐々にゲームのイニシアチブを握りはじめたわけだからね。そこでの体感もまた、レッズの発展ベクトルを強化するに違いありません。

 わたしは、明日から数日、軽く夏休みを取ります。

 ということで、水曜日に行われる「延期マッチ」、ガンバ対グランパス、アントラーズ対セレッソ戦は、帰京してからビデオで確認し、気付いたポイントがあれば木曜日か金曜日にでもレポートしますので・・。

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 ちょっと話題は変わりますが・・。

 このところ、わたしが愛用しているウエストバッグやバックパックについて質問してくる方々が増えています。ということで、それを軽くご紹介することにしました。

 ブランドは、METAS(メタス)といいます。

 以前「サザビー」という有名ブランドのチーフデザイナーを務めていたわたしの友人が、10年前に独立して作り上げたプライベートブランド。その、痒(かゆ)いところにも楽に手が届くっちゅう感じの、実用的なアイデアが満載されたビジネスツールが、とても気に入ってます。

 METAS(メタス) が扱っているのは、わたしが愛用するウエストバッグやバックパックだけじゃなく、ショルダーバッグやハンドバッグ、はたまたボストンバッグやブリーフケース等もあります。

 全体的なデザインはオーソドックス(どこか懐かしいスタンダード・・というのがコンセプトらしい)だけれど、高質な材料の選択や、その素敵な組み合わせだけじゃなく、細かな気配りアイデアにも感嘆させられるスグレモノです。使い込めば込むほど(長寿もコンセプトの一環!?)、愛着がわいてくる。そして、安物とは違い、古くなればなるほど、素敵なチャック金具やおしゃれな裏地といった「細かなデザイン」が光り輝いてくる。

 ちょっと誉めすぎ!? まあ私は、メタスの哲学と、それを具現化したバッグ類を、とても気に入っているのですよ。

 様々なタイプのバッグを日々のアクションに活用している方々こそが、その細かな気配りアイデアを高く評価するに違いないと確信する筆者なのでした。ちょっと「押し」過ぎ!? あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。