湯浅健二の「J」ワンポイント


2011年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第21節(2011年8月13日、土曜日)

 

素晴らしくエキサイティングな大阪ダービーだった・・(CvsGA, 1-1)

 

レビュー
 
 エキサイティングな大阪ダービー。見所豊富で、とても面白かった。

 立ち上がりは、攻守にわたってガンバが席巻しました。その中心にいたのは、言わずと知れた「大人の」ダブルボランチ、遠藤保仁と明神智和。完璧な「あうんの呼吸コンビ」です。

 特筆なのは、明神智和が「汚れ役」で遠藤保仁がクリエイティブなゲームメイカー(センターハーフ・・守備的ハーフ・・チャンスメイカーなどなど、いくつもの顔を持つマルチオーガナイザー!)という構図には変わりはないけれど、それでも、必要とあれば(状況的に最適だと判断されれば!)明神が前方へ仕掛けていったり、遠藤が、汗かきのチェイス&チェックだけじゃなく、最後の最後まで付いていく忠実なカバーリングやマーキングまで効果的にこなしてしまったりする。

 とにかく、この2人の(攻守プレーの実質的な内容に対する!!)相互信頼関係こそが、ガンバの「重心」であることは疑いのない事実だよね。

 ということで、ガンバの攻め。

 まあ、それが遠藤保仁を中心に回っていることは言うまでもありません。「そこ」にボールが集まり、「そこ」から展開したり、急激な仕掛けが繰り出されたり。それも、横への展開パスは、あくまでも相手守備ブロックを釣り出すツールであり、その展開パスが遠藤保仁に戻されてきたところから、危険な「仕掛け」がスタートするのです。

 そんな組み立てプロセスも、チーム全体としての「あうんの呼吸」ということだけれど、そんな、チーム全体で演出する「タメの展開コンビネーション」をベースに、相手の虚を突く「急激」なテンポアップで、危険な仕掛けのタテパスが、まさに「投げヤリ」のような鋭さでセレッソ守備ブロックの心臓を射るのですよ。

 その「受け」として効果的プレーを展開するのが、ザスパ草津から電撃移籍し(当時わたしはドイツにいたからコトの経緯は全く知らなかった!)最初から抜群の存在感でゴールを量産するラフィーニャであり、韓国代表のイ・グノであり、キム・スンヨンだった。

 もう1人の前戦の主役である二川孝広は、前日の(!?)トレーニングでケガをしたということだった。それでも、彼抜きでも、ガンバの攻撃陣はとても危険な臭いを放ちつづけていた。もちろん、ダブルボランチや両サイドバックが、変幻自在に「3人目、4人目」として効果的なサポートプレーを展開しているというバックボーンも忘れちゃいけないけれどネ。

 そしてガンバが、流れのなかからだけではなく、セットプレーからも、続けざまに決定機を作り出すのですよ。なかには、完璧なPKシーンだったにもかかわらず、レフェリーがミスジャッジしてしまうといった不運もあった。

 そんなガンバの攻勢が、キム・スンヨンがケガで途中交代してから、急激に減退していった(ここでは、落ち着いていった・・という表現の方が適切かもしれないネ・・)。そして逆に、セレッソの勢いが大きく増幅していくのです。

 そんな「ゲーム展開の逆流現象」はサッカーでは日常茶飯事だけれど、そのバックグラウンド(背景要因)を探る作業は、そこに、さまざまな物理的要因だけではなく、心理・精神的な要素も複雑に絡み合ってくるから、そんなに簡単じゃない。

 たぶん、その「逆流現象」の背景には、キム・スンヨンのケガだけではなく、それまで最大ペースで攻守にわたって仕掛けつづけていたガンバの勢い(強烈な意志)にも、ちょっと息抜き・・という雰囲気が出てきたこともあったんだろうね。

 この「息抜き」だけれど、1人でもペースダウンしたら、それが、すぐにチーム全体に波及してしまう。サッカーでは常識だけれど、監督・コーチにとって「それ」は、アンコントローラブル(操作不可能)という意味で、とても恐ろしい現象でもあるわけです。だからこそ、真のリーダーが希求されるというわけだね。

 さて試合。そんなガンバの「落ち着き」は、もちろん逆にセレッソにとっては、願ってもない追い風になる。そして徐々にゲームが、動的な均衡状態に入っていったというわけです。

 それは、前半30分あたりの出来事だったですかね。そして、それまでシュートゼロだったセレッソが徐々に盛り返し、気が付けば、後半の半ばを過ぎた頃にはシュート数でも互角というゲーム展開になっていっただけではなく、そのセレッソが、素晴らしいコンビネーションをベースに先制ゴールまで奪ってしまうのですよ。

 キム・ボギョンが中心になった(清武弘嗣もシャドーでうまく機能した!)素早いショートパスコンビネーションから、最後は、キム・ボギョンの個人技が光り輝いたスーパーゴールだった。

 盛り返していったセレッソの中心は、もちろんマルチネスやキム・ボギョン。

 でもさ、グラウンド狭しと攻守にわたって動き回り、危険なドリブル勝負だけじゃなく、クリエイティブなヒールパスやサイドチェンジパス、はたまた「タメからの必殺スルーパス」を決めたりと、ヤング日本代表の筆頭格に躍り出た清武弘嗣も、目立ちに目立っていたですよ。

 この試合はザッケローニも観戦していたけれど、彼にとっては、「個のチカラの確認」という意味でも、とても価値あるエキサイティングマッチだったですかね。

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 ちょっと話題は変わりますが・・。

 このところ、わたしが愛用しているウエストバッグやバックパックについて質問してくる方々が増えています。ということで、それを軽くご紹介することにしました。

 ブランドは、METAS(メタス)といいます。

 以前「サザビー」という有名ブランドのチーフデザイナーを務めていたわたしの友人が、10年前に独立して作り上げたプライベートブランド。その、痒(かゆ)いところにも楽に手が届くっちゅう感じの、実用的なアイデアが満載されたビジネスツールが、とても気に入ってます。

 METAS(メタス) が扱っているのは、わたしが愛用するウエストバッグやバックパックだけじゃなく、ショルダーバッグやハンドバッグ、はたまたボストンバッグやブリーフケース等もあります。

 全体的なデザインはオーソドックス(どこか懐かしいスタンダード・・というのがコンセプトらしい)だけれど、高質な材料の選択や、その素敵な組み合わせだけじゃなく、細かな気配りアイデアにも感嘆させられるスグレモノです。使い込めば込むほど(長寿もコンセプトの一環!?)、愛着がわいてくる。そして、安物とは違い、古くなればなるほど、素敵なチャック金具やおしゃれな裏地といった「細かなデザイン」が光り輝いてくる。

 ちょっと誉めすぎ!? まあ私は、メタスの哲学と、それを具現化したバッグ類を、とても気に入っているのですよ。

 様々なタイプのバッグを日々のアクションに活用している方々こそが、その細かな気配りアイデアを高く評価するに違いないと確信する筆者なのでした。ちょっと「押し」過ぎ!? あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。