湯浅健二の「J」ワンポイント


2010年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第14節(2010年7月24日、土曜日)

 

様々なニュアンスで「うまくコントロールされた」サッカーにトライしたけれど・・(RvsSA, 0-1)

 

レビュー
 
 そりゃ、レッズファンの皆さんのフラストレーションは、痛いほど良く分かりますよ。二試合もつづけて、エネルギーの減退をさらけ出す格好で(要は、足が止まってしまったことで・・)負けちゃったんだからね。

 前節のガンバ戦では、前半と後半の運動量の「ショッキングなほどの落差」に、もっとペースを考えなきゃ・・なんていうニュアンスのコラムを書いた。その視点では、このサンフレッチェ戦の前半から後半の半ばにかけては、まあ満足できる内容だったと思いますよ。

 ハーフタイムに、フォルカー・フィンケが、「後半も、前半のように試合をコントロールしながら(チャンスを見計らって)仕掛けていこう・・」なんていう指示を出していたそうだけれど、まさに「その通り!!」ってな感じだった。

 彼が言っていた通り、前半のレッズは、気候条件と相手の出方を冷静に判断し(もちろん、あくまでも主体的&アクティブに)押し上げていった。走り回り「過ぎず」、とてもうまいエネルギー消費バランスだと感じた。だから、フォルカー・フィンケが言うように、とてもうまくゲームをコントロールできていたと思う。まあ確かに、ほとんどといっていいほど決定機は演出できなかったけれどネ。

 でも、こんな厳しい気候条件だから、やはりバランスの取れたエネルギー消費をコンセプトにした「地道なコントロールサッカー」を積み重ねていくのが正解だよね。そう、「継続こそパワーなり」なのです。この試合でのレッズには、そんな地道なコントロールサッカーがうまく実を結ぶかもしれない・・なんていう期待がふくらんでいったものです。

 後半は、サンフレッチェも、人数を掛けて「前へ出て」きた。逆の見方をすれば、レッズが、中盤からの(高い位置での)チェイス&チェックのエネルギーを、意図的に(コントロールされたカタチで)落としたから・・ということが言えるかもしれない。

 レッズは、サンフレッチェのボールの動きを、スッ、スッと、ポジションを修正することで、巧みに「コントロール」していたと思う。だから、何度か、高い位置でのインターセプトが成功した。あるチャンスでは、田中達也が、爆発的なドリブルでサンフレッチェ守備ブロックを引き裂く・・なんていうカウンターチャンスも作り出した。

 誰もが、「アッ・・タツヤが、ドリブルからキャノンシュートをブチかます!!」と思ったに違いない。でも最後の瞬間、ボールを押し出し過ぎたことで相手のタックルに突進を阻まれてしまうのですよ。

 田中達也といえば、前半では、二度、三度と右から持ち込み、流れるようなアクションから中距離シュートを放っていた。そう・・リオネル・メッシのイメージ。

 結局は、大きく左へ外れていったけれど、ありゃ、良かったと思うよ。これからも、どんどん「トライすべき」だね。そのうちに、メッシのように、大外を巻くようにカーブし、最後はゴール上角にズバッと吸い込まれていくようなスーパーミドルを決められるようになるはず。彼には、それだけの天賦の才が備わっているからね。

 あっと・・レッズの「コントロールされたサッカー」。

 前述の、サンフレッチェを罠にはめることで成功させた「インターセプト・シーン」だけれど、記者席にも、「ここだゾ〜ッ!」とか「今だ〜ッ!」なんていう、複数のレッズ選手の雄叫びが聞こえてきた(ような気がした・・)。それだけ、彼らは、サンフレッチェのボールの動きを「読み」、次のボール奪取ポイントに集中していたと思う。

 だからこそ、コントロールサッカー・・。相手を「来させ」、自分たちのイメージで「パスを回させ」、そして自分たちがイメージしたポイントでボールを奪い返して必殺の「蜂の一刺しカウンター」を繰り出していく。田中達也の爆発カウンタードリブルシーンを観ながら、心のなかで、「よ〜〜し・・それだ〜〜」なんて叫んだものです。でも・・

 その後は、皆さんも観られた通り、レッズの運動量がガクッと落ちた。また、山田直輝とポンテが交替したことで、その傾向に拍車がかかった・・と感じた。

 ポンテは、今シーズン立ち上がりの頃のような、「こだわり(矜持・・プライド)」をったプレー姿勢が消え失せている。天才の汗かき・・だからこそ周りのチームメイトに尊敬され、頼りにされた・・だからこそクラブも、契約を延長した・・でも・・。

 たぶん、「汗かきプレー姿勢」が消え失せたポンテの姿勢に対しては、チームのなかでも、不満が溜まっていたことだろうね。そのことがあったからこそ(!?)、フォルカー・フィンケは、この試合でポンテをベンチスタートにした。

 そして、若手が中心になって、(まあ・・あまり見てくれは良くなかったけれど・・)しっかりとコントロールされた「忍耐のサッカー」を継続していた。私には、そう見えていたし、実際、そのようなプレーイメージでチームが統一されていたと思う。私は、若手も、(ポンテが外れたという大いなるモティベーションに押されるように!?)しっかりとプレーしたと思いますよ。

 でも、結局フォルカー・フィンケは、これでは「ゴールのニオイがしない・・」と、ポンテの才能に賭けることにした。でも、結局は、それが裏目に出た・・!?

 ここから、このコラムの結論めいた「締め」に入ります。

 あのような「質実剛健のカッコ悪い」サッカーだったら、やっぱり結果を出さなくちゃいけない。そのこともあってポンテを入れたけれど、それが裏目に出てしまい、結局は、とても悪い、ホントに悪いイメージ「だけ」がグラウンド上に残ってしまった。

 だから、レッズ・ファンの方々のフラストレーション(怒り)は、よく分かるね。でも、まあ、もう少し待ちましょうよ。究極の組織(ポゼッション&コンビネーション)サッカーを目指すフォルカー・フィンケのベクトルは、確実に正しい方向にあるはずだからネ。

 わたしは、まだまだ忍耐強く、フォルカー・フィンケの(心理&戦術)マネージメントを観察しようと思っていますよ。

 それにしても、ホントに悪いイメージだけがグラウンド上を漂ってしまったよな〜〜・・まあサッカーには、よくあることだけれど・・

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 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 



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