湯浅健二の「J」ワンポイント


2007年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第6節(2007年4月15日、日曜日)

 

徐々にレッズは、攻守にわたる「組織」もダイナミックなカタチを持ちはじめている・・(レイソル対レッズ、0-2)

 

レビュー
 
 強化されたディフェンスブロックをいかにして崩していくのか(決定的ゾーンも含め、いかにスペースを活用していくのか)・・。それが、この試合でのレッズのテーマでした。

 キーワードは、我慢と、ここ一発のイメージシンクロ・・ってなところかな。そのイメージシンクロだけれど、ピンポイントで(ワンチャンスで)、なかなか上手く機能しましたよ。ワシントンへの一発タテパスとか、先制ゴールにつながった、トゥーリオから永井雄一郎への一発勝負のタテパスとかね。

 永井雄一郎だけれど、ボールがないところで繰り出すアクションの量と質が向上していると感じます。特に、中盤で、ある程度フリーでボールを持つ「仕掛けの起点」が演出されたときの爆発フリーランニングが特筆でした。斜めに走りながら、(ボールホルダーとのアイコンタクトで!?)急に方向を変えて相手マーカーを振り切り、そのまま決定的スペースへ抜け出していったりするのですよ。そしてボールを持ったら、例によっての危険なドリブルを仕掛けていく。もちろんその危険なドリブル勝負にしても、しっかりと走ることで、スペースにおいて良い体勢でパスを受けられるからに他ならないわけです。

 永井雄一郎が繰り出す「最終勝負のフリーランニング」だけれど、たしかに以前もありました。ただそれは、絶対にパスが来るというシチュエーションがほとんどだった。それが今では、フリーランニングをスタートする状況の「範囲」が大きく広がっていると感じられるのです。要は、どんな状況でも、まずボールがないところでのアクションをスタートするというイメージが徹底しはじめているということです。忠実な、パスを呼び込む動き・・。それです。

 もちろん、当然の成りゆきとして、パスをもらえないムダ走りも多くなる。それでも、次、その次と、仕掛けプロセスに対する永井の意図と意志が減退することがない。そんなところにも、ホルガー・オジェック監督のウデを感じていた湯浅なのですが・・。

 とにかく永井雄一郎は、以前の「最前線のフタ」というイメージから脱却しつつあると思います。まあ・・ね、最前線のフタが「二つ」もあっちゃ、前後左右のポジションチェンジを基調にした仕掛けのダイナミズムを高揚させるはずがないからね。

 この試合でのレッズは、明らかに、レイソルの堅牢守備ブロックに対抗するための「仕掛けプロセス」をイメージしていたと思います。前述した、中盤で(低い位置で)仕掛けの起点ができた次の瞬間に決定的なパスレシーブアクションをスタートする最前線の永井とワシントン・・といった具合にね。要は、最終勝負イメージの有機的な連鎖というわけです。

 ハナシ変わって、レッズのフォーバック。徐々に機能性が向上してきている(穴が空きにくくなっている)と感じます。要は、鈴木啓太と長谷部誠の中盤守備ラインとの連携がうまく取れてきているということ。もちろん中盤ラインの中心は、前気味のリベロ&ストッパーとして抜群の実効レベルを誇示しつづける鈴木啓太だけれど、長谷部誠や小野伸二も(またポンテも!)しっかりと中盤ディフェンスラインに絡んでくるから頼もしい。

 とはいっても、後半は、ちょっと「下がりすぎ」になる時間帯が多すぎた。サッカーは陣取りゲームという性格も秘めている。だからこそ、互いのポジショニングに対する「バランス感覚」が大事になってくるわけです。

 ズルズルと下がってしまっては、相手に(活用できる)陣地を与えてしまうことで自ら首を絞めるということになってしまうわけです。だからこそ、中盤のディフェンスラインは、前後左右に動きつづけなければならないし(チェイス&チェックと協力プレスの輪を柔軟に演出する!)、なるべく高い位置で、しっかりと「守備の起点」を演出しつづけることで、スペース(ゾーン)をマネージしなければならないのですよ。

 そんなときこそ、トゥーリオという守備のカリスマがリーダーシップを発揮すべきなのだけれどネ・・。

 ちょっとここで、視点を、レイソルの守備に移しましょう。とにかく、よくトレーニングされたチームですよ。ボールに対する寄せ(チェイス&チェック)をベースにした、周りのマーキングとカバーリング、協力プレスの輪の機能性など、とても良かった。まさに、有機的なプレー連鎖の集合体といったディフェンスでした。

 監督の石崎さんは、前半は出来が悪かったというニュアンスのことを言っていたけれど、決して私はそうは思いません。前半でも、全体的には、うまく機能していたと思うのです。まあ、冒頭に述べたように、たしかに「レッズの一発タテパス攻勢」には、うまくやられてしまったけれどね。そのシーンでは、たしかに、レッズのボールホルダーに対する「寄せ」が甘かった。それでも・・。

 後半は、人を変え、システムを変えたことで、より攻撃的なディフェンスを機能させることができました。ボールへの寄せ(ボール周りのコントロール)と、周囲の味方が展開しつづけるボール奪取勝負プレーの有機的な連鎖。なかなか見応えがありました。

 「まあ・・それは、個のチカラの差ですかね・・ワシントンや永井、またポンテといった選手には、一人で何か出来てしまうような怖さがある・・もちろん、日本オリンピック代表の菅沼実と李忠成がいれば・・」。

 それは、「レッズとの差はどこにあると考えますか・・」という質問に対する回答だったのですが、まあ、そういうことだよね。とはいっても、私は、石崎さんが、個人の勝負プレーのことだけを言っていたのではないと思っています。この試合では、レッズの個の才能たちも、ボールがないところでのアクションをベースに、実効レベルの高い組織コンビネーションも繰り出していたからね。

 個のチカラを、個人プレーだけではなく組織プレーにも効果的に活かしていく。それも、監督にとっての重要なミッションです。だから、個人能力のキャパシティーが高ければ高いほど、やり甲斐(苦労)も大きくなるっちゅうわけです。もちろん、チームマネージメント・チャレンジという視点でね・・。

 さてレッズ。このところの数試合(AFC戦、トリニータ戦、ジュビロ戦)について書いたコラムでは、徐々に(選手たちの動きが)良くなっているというニュアンスで統一したけれど、その見立ては間違っていなかったと思いますよ。

 このレイソル戦では、たしかに後半はダレてしまった(受け身のプレー姿勢になってしまった)時間帯もあったけれど、前半のサッカー(攻守にわたるプレーイメージと)内容は上出来だったからね。とはいっても、攻守にわたる組織プレーのコンテンツは、まだまだ満足できるレベルにはありません。これからの更なる進展に期待しましょう。

 



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