湯浅健二の「J」ワンポイント


2006年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第28節(2006年10月21日、土曜日)

 

こんな素晴らしいエキサイティングマッチがNHKで全国放送された!?・・素晴らしい!・・両チームに感謝!!・・(レッズ対フロンターレ、2-2)

 

レビュー
 
 いや〜、ホントにエキサイティングでしたね〜、面白かったですね〜。特に、これ以上ないという迫力あるドリブル突破でフリーになった(レッズの)山田暢久から、これまた全力を振り絞ったフリーランニングで決定的なウラのスペースへ走り抜けたポンテへ通されたスルーパスによって同点ゴールが決まってからの(2-2になってからの)攻防は、今シーズン最高といっても過言ではないゲーム内容になりました。

 そのポンテの同点ゴールは後半7分のことだったから、ロスタイムを入れたその後の40分間、テレビ観戦も含む多くの生活者の方々が、このスーパーマッチを楽しんだというわけです。

 この試合は、NHK総合で全国放送されたんでしょ。テレビ観戦した方々は、グラウンド上に表現された、限りなくダイナミックで(躍動的で力強く)繊細で自由なサッカーの魅力に引き込まれたに違いない。ということで、サッカーのプロモーション機会を、これ以上ないというカタチで活用してくれた両チームに対し、すべてのサッカー人は、心から感謝の意を表さなければならないと思いますよ。

 ところで、このエキサイティングな40分間では両チームとも(同等の量の)チャンスを作り出したわけだけれど、その内容(チャンスの質)を詳細に比較したら、個人勝負で「も」うまくチャンスを作り出せていたレッズの方が「やや上」だったと言えるかもしれないね。

 山田がドリブルで抜け出したシュートシーン・・ポンテのドリブルからの抜け出しシーン、小野とポンテ、ワシントンが絡んだコンビネーション・・そして二度あった、左サイドの相馬のドリブル突破からのワシントンへの決定的なラストクロスシーン・・特にタイムアップ数秒前の、相馬からワシントンへラストクロスが通ったシーンは惜しかった・・等。レッズは、組織的な仕掛けだけではなく、個人勝負のクオリティーでもリーグトップの実力を誇るからね。

 とはいっても、フロンターレが、時間帯によっては互角以上のサッカーで強力なレッズ守備ブロックを大きく脅かしていたことも確かな事実でした。ジュニーニョとマギヌンと我那覇で組む、組織プレーと個人勝負がうまくバランスしたトップトライアングル。また、森とマルコンの両サイドだけじゃなく、例によって、中村憲剛と谷口の守備的ハーフコンビも、タイミングよく押し上げてくる。しっかりと人とボールが動きつづけているフロンターレだからこそ、この分厚い押し上げが、殊の外、効果的にかみ合いつづけるというわけです。

 後半にフロンターレが放った10本のシュートのうち、トップトライアングルが打ったのは4本だけ。それ以外は、中村憲剛(3本・・そのうち1本がゴール!)、谷口博之(2本)、そして交代出場した井川(1本)のシュートでした。フロンターレの、チームとしてのまとまりを感じさせる数字ではあります。以前はトップトライアングル(ジュニーニョ!?)ばかりが目立っていたけれど、今シーズンは、様々な視点でバランスの取れたチームへと脱皮し、成長をつづけている。関塚さんのウデを感じます。

 もう一つのテーマ。レッズの選手交代。「アレックスについては、前半から調子がよくないと感じていた・・これならば相馬の方がよいと判断した・・小野伸二については、はじめから、そのテクニックと攻撃力をどこかで使おうと思っていた・・また永井雄一郎については、サイドから攻撃を活性化させるという意図だった・・」。選手交代に関するギド・ブッフヴァルト監督の弁です。

 アレックスと相馬の交代については、まさにその通りだと納得していました。また、小野伸二がベンチから出てきたときには、田中達也との交代だと即座に判断していましたよ。このゲームでのポンテや山田暢久を外すわけにはいきませんからね。そして最後の永井が平川と交代で出てきたときには、ブッフヴァルト監督は絶対にこのゲームを勝ち抜くつもりだと感じました。

 この交代は秀逸でしたね。両サイドと二列目ゾーンを補強し、まさにその意図通りに決定的チャンスを演出したレッズというわけです。相馬と永井雄一郎による実効あるサイド攻撃(効果的なクロス!)は見てのとおりだし、小野伸二にしても、自らの危機感を前面に押し出すような奮闘ぶり(素晴らしい闘う意志!!)だった。

 特に小野伸二については、中村憲剛に対するハードなアタックでボールを奪い返してしまったシーンや、谷口へのスライディングでボール奪取したシーンは印象的でしたよ。それに、攻守にわたって、ボールがないところでもしっかとり走っていたしね。その調子で早くベストフォームに戻れるように頑張ってくれよ小野伸二!・・なんて、気のパワーを送り込んでいた湯浅でした。

 最後に、フロンターレの中村憲剛について。たしかに、立ち上がりの30分は、山田暢久の効果的なチェックに押され気味だったけれど、そこは中村憲剛、徐々に本来のペースを取り戻していきました。

 もちろん、フロンターレでは組み立てのリーダーという位置づけだから(周りの味方が憲剛を探してパスを付けようとするから)、まだまだ、歩いたり、止まって足許パスをもらう(パスを待つ)というシーンも目立つけれど、この試合では、ボールを持ってからのプレー(リスクチャレンジ)がより活性化したと感じました。また、守備の起点プレー(ディフェンスでの汗かき)や、ボール奪取勝負シーンへの絡みも積極的になったと感じた。彼に対しては、もっともっと(ボールがないところで)動き回って、攻守の勝負所に絡んで欲しいと思うのですよ。ポールに絡めば、守備でも攻撃でも、素晴らしい活躍が約束されているのだからね。

 いつも書いているように、彼の場合は、チーム内での組み立てのリーダーという位置づけが「諸刃の剣」だと思っている湯浅なのです。だからこそ、彼にとってもイメージトレーニングが欠かせない。谷口博之とマギヌンと話し合って、もっとプレーイメージをオーバーラップさせるべきだと思うのですよ。この三人で組む「ダイナミック・トライアングル」と「トップトライアングル」。もちろんそこでのマギヌンは「二役」です。そんなダイナミックな「ダブル・トライアングル」に、マルコンと森勇介の両サイドが絡んでいく。残り6試合でのフロンターレの活躍が楽しみです。

 さて明日は、FC東京とガンバ大阪のエキサイティングマッチ。天気も良いらしいから、楽しみです。もちろん、素晴らしい秋空の下をオートバイで駆けつけられるという意味も含めてネ。

 



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