湯浅健二の「J」ワンポイント


2006年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第27節(2006年10月14日、土曜日)

 

ジェフの主体的な忠実ディフェンスが圧倒的に機能したゲームでした・・(アントラーズ対ジェフ、0-4)

 

レビュー
 
 ナビスコカップ決勝の前哨戦!? まあね、そんな視点でもゲームを分析しておきたいと、愛車を駆って鹿島まで行ってきた次第。もちろんそれ以外にも、オートバイ・ライディングにとって最高の季節が到来したというモティベーションもあったわけだけれどネ・・。

 今日の全走行距離は「240キロ」。50も半ばに差し掛かったオッサンが、前傾で(ライディングを背筋で支える)レーシングタイプの単車でカッ飛ぶんだから、何をか言わんや!? でも、まだまだ、まったく平気でっせ。わたしにとっては、ライディングを楽しめているかどうかが、心身の状態を測るバロメーターだからね。あっと、またまた蛇足。さて・・

 「この試合は、決して得点差(4-0)に見合うほど(ジェフにとって)良いゲーム内容だったわけではない・・たしかに、ゴールは効率的に奪えた・・こんな(ツボにはまったようにチャンスが次々と決まってしまう)試合は、年に一二度あるかないかといったところだろう・・」。

 試合後のアマル・オシム監督の弁です。アントラーズ、アウトゥオリ監督も同じようなニュアンスのことを言っていた。ジェフは非常に効率的にゴールを奪った。ちなみにジェフは、シュート7本のうち4つをゴールに結びつけ、逆にアントラーズは、13本のシュートをまったく決められませんでした。

 まとめると、この試合は、ジェフの忠実&ダイナミックな守備が素晴らしく機能し、アントラーズに決定的なカタチを作らせなかったというポイントに集約されるでしょう。たしかにアントラーズは13本のシュートは放ったけれど、決定的なスペースを攻略するような(ジェフ守備ラインのウラを取るような)フリーの決定機は、ほとんどなかったからね。アントラーズが作り出したチャンスのほとんどは、ジェフ守備陣の忠実なマーキング(マン・オリエンテッドな忠実マンマーク)と危急カバーリングによって「必然的」に潰されていたのですよ。

 もちろんジェフは、マンマーク。阿部勇樹がダ・シルバ、水本裕貴がアレックス・ミネイロ、佐藤勇人が本山雅志、山岸智が野沢拓也、坂本将貴が桝田誓志・・などなど。それも、ほとんどマークがズレることのないオールコートマンマークだからね。こうなったら、いたるところにスペースができるわけだけれど、そこを使おうとオーバーラップしてくるアントラーズ選手は、巻やクルプニコビッチ、はたまた(スーパー)マリオ・ハースといったジェフの前線選手が戻ってくることで(チェイシングによって)ことごとくチェックされてしまう。こんなだから、スペースはあって無きがごとし・・ってな具合なのです。

 ジェフが展開する忠実なマンマークだけれど、その意味は、グラウンドの至るところで「守備の起点」が次々と演出されつづけるということです。その「起点」こそが、チームメイトたちが脳裏に描く「ボール奪取勝負イメージ」の絶対的なリソースになるっちゅうわけです。そして、その「起点」をベースに、ボールがないところでの忠実マーキング、インターセプト狙い、協力プレスアクションなどの勝負イメージが「有機的に連鎖」する。なかなかのものでした。

 ところで、ジェフの「オールコート・マンマーク」。私は、アマル・オシム監督のゲーム戦術だと思っていたのだけれど、記者会見が終わったところで、あるジャーナリストの方から、「坂本が言っていたのですが・・ゲームが始まってから、マークを決めちゃった方がいいというということになったらしい・・」と、選手の判断で「オールコート」にしたということを聞きました。まさに「考えるサッカー」。それこそが、ジェフが培ってきた「環境」の為せる技だった!?

 ゲームだけれど、たしかに、全体的にはアントラーズが押し気味という展開でした。とはいっても、ボールを奪い返した直後にジェフが放散する、ボールがないところでの「飛び出しパワー」は相変わらず素晴らしいレベルにあるから、アントラーズも、うまく攻めに「厚み」を加えていけない。要は、「次の守備」という発想の足かせから解放されているジェフに対して、アントラーズの方は、どうも次のことに「も」気を取られ過ぎていたということです。

 次の守備など気にすることなく、ボールを奪い返した時点でチャンスがあったら、誰でも例外なく飛び出していく。それこそが、ジェフサッカーの神髄なのですよ。もちろん、そのバックボーに、高い守備意識という相互信頼関係があることは言うまでもありませんがね。

 もちろん前述したように、ジェフの忠実なマンマークが素晴らしく機能していたことで、アントラーズ選手が、まったくといっていいほど「フリー」でボールを持てなかった(簡単に振り向けなかった)というポイントもあります。もっとボールがないところでの動きの量と質を上げなければ、ジェフ守備ブロックのウラは突いていけないでしょう。本山は大きく動き回っていたけれど、周りの味方が呼応しない。もっとコンビネーションを積み重ねていくというイメージで仕掛けていかなければならないと思うのですよ。そのためには、言うまでもなく、「有機的なフリーラングの連鎖」がもっとも大事なファクターになってくるというわけです。

 ところで、この試合で「効率的な」ハットトリックを達成した阿部勇樹。アマルさんも、アウトゥオリさんも、べた褒めだったね。もちろんゴールを決めたからではありませんよ。「阿部は、守備で素晴らしい仕事を為してくれた・・だからこそ、攻撃でも実効ある活躍ができた・・」と、アマルさん。またアウトゥオリさんは、「日本サッカー界のなかでは、阿部は最高のチカラを持っている選手の一人だ・・(日本以外の)別な環境でも十分にできるチカラをもっている・・別にゴールを決めたから言うのではない・・彼の競争力・競り合いのチカラは格別だ・・」と言う。私も、まさに同感でした。

 



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