湯浅健二の「J」ワンポイント


2005年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第20節(2005年8月24日、水曜日)

 

暗いマインドばかりが先行するコラムになってしまった・・(レッズ対ヴィッセル、2-2)

 

レビュー
 
 ホントによく追いついたな・・それにしても観ていて疲れた・・ガンガン攻め上がる状況では、やっぱりボールがないところでの動きの量と質によって、仕掛けコンテンツの実効レベルが決まってしまう・・あっと、ガンガン積極的に攻め上がるという状況では、ボールなしの動きは常に前後左右にアクティブに揺動しつづけなければ(有機的に連鎖しつづけていなければ)なりません・・それに対する具体的なイメージと行動がなければ、ガンガン上がっても、結局は前線で煮詰まって足が止まり、足許への縦パスを待つだけになってしまう・・そう、この日のレッズのように・・。

 立ち上がりを除き、前半のレッズのサッカーは、なかなか上手く機能していたと思います。例によってのホンモノの守備意識をベースに、ダイナミックにボールを奪いにいくアクティブディフェンス。それだけではなく、攻撃では、両サイドのオーバーラップも効果的だったし、ポンテもよく活用されていました。またマリッチにもよく縦パスが入っていたと思います(そこからの展開がまだまだだけれど・・)。ちょっと永井の気抜けプレーが目立ち過ぎてはいたけれどね。でも、そんなまあまあの流れのなかでヴィッセルに一発クロスからのこぼれ球を決められてしまうのですよ。また後半には、同点ゴールの5分後に、ヴィッセルの三浦にスーパーフリーキックを決められてしまって・・。

 そこからです。レッズの攻撃が、冒頭の「寸詰まりサッカー」に陥っていったのは・・。積極的に押し上げてはいくけれど、その仕掛けアクションは、常にヴィッセル守備ブロックの「眼前」ばかり。それも、(パスレシーブの動きが単純に過ぎることで!)ボールがうまく縦横に動かないから、相手ディフェンダーは、目の前の狭いゾーンに集中すればコトが済んでしまうし、自分のウラスペースに気を遣う必要もない。ボールがないところで前後左右に動きつづけなければ、相手選手の視線を「分散させ」予測を狂わせることなど出来るはずがないのに・・。とにかくレッズの攻撃では、パスレシーブの動きが活発じゃないし、その動きが出たとしても単発に過ぎるのですよ。もちろん、ポンテの同点ゴールシーンや、マリッチやトゥーリオへ決定的パスが入ったシーンなど、エキサイティングな見所もあったけれど、他のほとんど仕掛けシーンは寸詰まり・・。ホントに観ていてフラストレーションがたまりました。だからこそ「ホントによく追いついたな・・」という印象だけが強烈に残ったわけです。

 私が期待していた仕掛けコンテンツはこんな感じです。一人が戻り、後方から別の一人が味方を追い越すように最前線スペースへ抜け出していく・・同時に、逆サイドにいる「忍者」が、大外から回り込んで決定的スペースを狙う・・もちろんそのほとんどは「クリエイティブなムダ走り」になるけれど、そんなことには関係なく、自分主体のアクションが積み重ねられていく・・等々、そんなボールがないところでの積極アクションのみが、相手が敷く強化ディフェンス組織のバランスを崩すための手段なのです。

 とにかく、三浦のフリーキックが決まってからのレッズの攻めからは、自分のアイデアを行使したり、それで味方を引っ張っていこうというような強烈な意志を感じませんでした。もっとポンテにボールをあずければいいのに・・なんてことも思ったけれど、行くぞ、行くぞ、という前がかり意識だけが先行しているレッズ選手たちは、具体的な崩しイメージなく、まさに猪突猛進に「単発アクション」を繰り出すばかり。交代した当初は、攻守にわたって素晴らしくダイナミックなプレーを展開していた山田暢久にしても、10分もしたら、レッズの押せ押せムードという「心理的なワナ」にはまり、攻守にわたる自分主体の仕掛けアクション(ボールなしアクション)が、まったくといっていいほど消え失せてしまいました。グラウンドに登場した当初のダイナミックプレーに期待が高まった分、落胆の幅も、ものすごく大きかったということです。

 この後半の時間帯ほど、仕掛けリーダーの不在を実感したことはありませんでした。味方のボールなしアクションを強烈な刺激とともに要求するとか、自らがコアになって、脳裏に描くコンビネーションにチャレンジしていくとかネ・・。ポンテにそれを要求するのはまだ難しいでしょう。さて・・

 所用のため、試合後すぐにオートバイにまたがって東京へとって返しました。でも、爽快なはずのオートバイライディングのはずが、心はまったく晴れなかった。「こんな涼しい気候なのに、ポンテはもっと走れよ!・・あんな素晴らしい才能に恵まれているのに、ボールに触らなきゃ何もはじまらないじゃないか・・マリッチのフォームアップのペースも鈍いしな・・チーム全体としては、守備意識も高まっているし、攻撃にも変化が出てきているのに・・やはりサッカーはホンモノの心理ゲームだし、ホンモノのチームゲームだよな・・チーム全体のマインドが一つのイメージで統一されなければ、ボールがないところでのアクションが減退するなど、すぐにでもサッカーの内容が地に落ちてしまう・・少しでも心理的なバランスが崩れたら、すぐにでも心理的な悪魔のサイクルに捕まってしまう・・等々」。そして、ハッと気付いたらもう家の近くまで来ていたという次第。フ〜〜ッ、途中では何も起きなかったらしい・・フ〜〜ッ!

 何かこう、暗いマインドばかりが先行しちゃったコラムになってしまった。書いている方も不満だし詰まらない。でも、これを廃棄するわけにもいかない。今日のレッズ同様、「まあこんな日もあるさ・・」ってなことで、エイヤッ!とアップすることにします。では・・

 



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