湯浅健二の「J」ワンポイント


2005年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第14節(2005年7月6日、水曜日)

 

あらら、ヴェルディが壊れかけている・・エメルソンは諸刃の剣?!・・(ヴェルディ対レッズ、0-7)

 

レビュー
 
 どうも皆さん、本日の午後に成田に到着しました。機内でほとんど眠れなかったこともあって、フラフラになりながら帰宅したのですが、一ヶ月も空けていたから郵便物の山。それを整理しているうちにどんどん時間が過ぎ、ハッと気付いたらもう1830時でっせ。これじゃ横浜には完全に間に合わない。実は、横浜でのマリノス対アントラーズと国立でのヴェルディ対レッズのどちらを観るのか最後まで迷っていたのですよ。でも帰国してまず整理しておかなければならないことに追われているうちにオプション自体を失ってしまって・・。まあ仕方ないから、マリノス対アントラーズ戦は、明日ビデオで内容を確認しよう・・ってなことにした次第。ということで国立競技場には、試合開始から10分後に到着。

 それしてもレッズのゴールショーは凄かった。まあそれについては、いまのヴェルディがボロボロ状態だから・・という見方の方が正しいでしょう。ということで、ここでは、ボロボロのもっとも大きな要因の一つである「ディフェンス」について探ることにしましょう。とにかくヴェルディの守備は、後手、後手に過ぎるのですよ。ボールホルダー(次のパスレシーバー)に対する抑えが効かないから、次のパスでボールを奪い返すことができない。また、マークの間合いを空けすぎるから(パスを受る上手い選手に対するマークが甘いから)、ドリブルで深くまで突っかけてこられちゃう。また、もう何度も書いているように、守備のなかでもっとも難しい「タテのマークの受けわたし」をやろうとして、ことごとく失敗してしまう。まあ、忠実にマークしつづけることに対する強い意志が感じられないのだから、それも仕方ない。

 そんな守備での中途半端さは、もちろん攻撃にも悪影響を及ぼします。昨シーズンのセカンドステージの「スーパーサッカー」はどこへやら。ボールをこねくり回しながら、味方プレイヤーの足許への安全な横パスを出し、自分はその場で足を止めてしまうのですからネ、レッズ守備ブロックに「予測」されて効果的なボール奪取勝負を仕掛けられるのも道理なのです。本当に、昨シーズンのスーパーサッカーは一体どこへ行っちゃったんだよ・・。

 私は、結局ワシントンという両刃の剣が「ネガティブに作用した」ということだと思っています。また「斜に構えた才能」たちが再びゲームコントロールを掌握し過ぎていることも(サッカーリズムのベースをアップするのではなく、常にゆっくりとした停滞リズムを主導していることも)その背景にありそうです。昨シーズン後半戦でのスーパーサッカーを支えたのは、小林大悟や相馬、はたまた平本といった若手でしたからね。ここにきて、彼らの積極プレーマインドが、完全に「何か(ヴェルディというクラブが抱える歴史的な体質?!)」に覆い隠されてしまっていると感じます。

 私は、選手としても、監督としても、オジー・アルディレスを高く評価し、深く尊敬しています。だからこそ、こんなヴェルディを見るのは辛い。オジーは、試合後にこんな趣旨のことを言っていました。「自信を失っていることが背景・・その要因はたくさんあるけれど、パス回しを忘れていることが、もっとも大きい・・ただし、それらの背景にあるものは、戦術などとは関係がない・・」。

 またオジーは、良い選手たちが悪い選手になったわけではない・・とも強調していました。たしかに才能はあるけれど、でも「楽して金儲けしよう」というマインドに落ち込んでしまった良い(才能に恵まれた)選手は、その時点では悪い選手なのではありませんか? 私は、オジーが言う自信喪失のもっとも大きなところが、攻守にわたるボールがないところでのアクションの量と質(≒汗かきアクションの量と質)が低落してしまっていることにあると思っているのです。汗かきの忠実チェイスがないから次の読みディフェンスが昨日しない・・汗かきのパスレシーブアクションが足りないから、しっかりとボールが動かない・・。そういうことなんじゃありませんか?

 監督のもっとも大きなチャレンジは、才能にあふれた上手い選手たちを走らせること(クリエイティブなムダ走りにも精進させること)なのです。

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 レッズですが、良いじゃありませんか。たしかにまだまだ「最高のブレッシングサッカー」という視点では課題も多いけれど(前からプレスを掛けていくアクションの連動性など)、選手たちの「守備意識」には、どんどんと内容が詰まってきていると思います。特に、才能ある選手たちが、率先して汗かきアクションに入っていくシーンを見ながら、このチームには本物の「発展を遂げられる」だけのベースが備わりつつあると感じていた湯浅なのです。

 特に仕掛けでの人とボールの動き(組織プレー)と個のドリブル勝負のバランスがいい。そこで、テーマ「エメルソン」。誰が何と言おうと、やはり私は、彼は諸刃の剣だと思っています。エメルソンがいれば、彼にしか出来ないゴールシーンを演出してしまうでしょう。でも、彼がいれば、仕掛けの組織マインドは確実に減退してしまう・・。この試合での素早いタイミングの人とボールの動きは、彼がいないことが確実にポジティブに作用したとすることができそうです。

 私が言いたいのは、エメルソンが秘める諸刃の剣ファクターを緩和するためにも、彼が一目置くチャンスメイカーの存在が大事だということです。今は山田暢久。強い守備意識をベースに(効果的な汗かきプレーを基盤にして!)、様々な勝負シーンに効果的に顔を出すなど、なかなかの実効レベルじゃありませんか。でも「そこ」にエメルソンがいたらどうだろうか・・たぶんエメに遠慮して(エメがイメージするプレーを優先するあまり)影が薄くなってしまうに違いない・・。だから私は、いま話題になっているポンテに期待しているんですがね。さて・・

 とにかく、いまのレッズのサッカーだったらエメは要らない・・というか、今のサッカーだったら、エメもそのコンテンツに積極的に入り込もうとするに違いない・・なんて思っている湯浅なのです。要は、「今のチーム」が、エメルソンという才能がもどってきたときに、それに凌駕されて元の仕掛けコンテンツに戻ってしまうのか、それともエメルソンという才能に、今の仕掛けコンテンツに「自ら入っていきたい」と思わせられるかどうかのせめぎ合いだということです。レッズ選手たちは、その意味でも、なかなか深い発展モティベーションを持っていると思う湯浅なのです。

 ほとんど気を失いながらも自動的に指が動きつづけている・・なんて感じの湯浅です。ということでもう限界。

 



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