湯浅健二の「J」ワンポイント


2004年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


 

第13節(2004年11月20日、土曜日)

 

スッキリしたカタチではないけれど、とにかくセカンドステージ優勝、おめでとう!・・(レッズ対グランパス、1-2)

 

レビュー

 

 まあ・・ネ・・これもサッカーだよな・・何がって?・・まあ・・思い描く美しいフィナーレなんてことは希だということ・・要は、実際には望み通りにコトが運ばないことの方が多いっちゅうことさ・・レッズを応援する誰もが「駒場で」それも「主体的」にステージ優勝を決めたかったに違いなかったからネ・・まあこれも「これ以上ない学習機会だった」と捉えるべきだなんだろうな・・実質的な優勝争いはゲーム途中で既に決まったようなものだったけれど、だからこそ誰もが、スッキリとしたカタチで優勝したかったに違いない・・なんてネ・・。

 それにしてもグランパスは、レッズの攻撃を抑制して蜂の一刺しを見舞う!というゲーム戦術を、キッチリと最後まで機能させつづけました。それはそれで立派。あのサッカーコンテンツを、「何だ、単に人数を掛けて守っていただけじゃネ〜〜かっ!」というのは簡単。でも、局面での一人ひとりのプレー姿勢は、それはそれで素晴らしく積極的&ダイナミックだったのですよ。チェイス&チェック・・ボールのないところでの主体的&忠実&粘りマーキング・・そして次の爆発的なボール奪取勝負プレー等々・・。それら一つひとつのプレーに「足が10センチ前へ出る・・」というギリギリの闘う意志を感じていた湯浅でした。

 「私は、最後の最後まで闘い抜いてくれた選手たちを誇りに思う・・そして我々は最後まで良いサッカーを展開できた・・」。試合後の監督会見でネルシーニョさんが胸を張っていました。私は彼にアグリーでしたよ。受け身で消極的なディフェンス姿勢なんて微塵も感じさせない積極ディフェンスと、その後に魅せつづけた「ここ一発の蜂の一刺しカウンター」に対する強烈な意志(後半、人数が足りないのに、ココゾのカウンターでレッズゴール前に数的に優位な状況を作り出してしまった!!)。たしかにディフェンスに人数を割いてはいるけれど、その一人ひとりがリスクにもチャレンジするという極限のダイナミズムを感じさせつづけたのだから拍手せざるを得ないというわけです。ギド・ブッフヴァルトも、「後半はヤツらにやられた・・内容的にも、ヤツらが勝ち取った勝利だと思う・・」と、シャッポを脱いでいましたよ。

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 ここで試合コンテンツを簡単にまとめましょうかネ。

 ・・前半は、レッズの攻めが組織的にも個人勝負でもうまく機能した・・個人勝負を抑えられてしまったけれど、逆に組織コンビネーションからのサイド攻撃が冴えた・・この組織と個のバランス感覚は、グランドチャンピオンシップでも、ものすごく大事なキーポイントになるはず・・選手たちは、この前半の内容をしっかりとビデオで確認しなければならない・・この試合でも二列目に入り、攻守にわたって安定したハイレベルプレーを魅せた山田暢久は、より意識して後方からのオーバーラップをコーディネイトしようとしていた・・要は、より積極的に中盤での「穴埋めディフェンス」にも精を出していたということ・・特に長谷部を前へ送り出すクレバーなタテのポジションチェンジの演出は素晴らしかった・・その「変化」があったからこそ、何度か、人とボールがめまぐるしく動きつづける組織的な仕掛けが機能した・・でも山田は、まだまだ気を抜くポイントが分かっていない・・彼に対して何度か、「何だ、肝心なところで寝やがって・・」なんて声が出た・・

 ・・それにしてもグランパスの先制ゴールシーンでのトゥーリオのミスは痛かった・・そのプレーがショックだったのか、その直後にも、相手にパスを出してしまうという大ポカをやってしまった・・彼の全体的なパフォーマンスを考えれば、「まあ、そんなこともあるさ・・」という類のものだけれど、とにかく何度かビデオを見返してイメージトレーニングしておく必要はありそう・・

 ・・後半、一点リードしたグランパスは、本当にクレバーな戦いを魅せた・・前述したように、退場というネガティブな現象にしても、一人ひとりの意志を強化するモティベーションになったとまで感じられる・・そして彼らは、つづけざまに二本も、カウンターから絶対的なチャンスを作り出した(ウェズレイとクライトンの信じられないシュートミスで一命を取りとめたレッズ!・・このシーンでグランパスは、信じられないことに、レッズゴール前で数的に有利な状況を作り出してしまった!)・・

 ・・私は、後半のレッズの攻めのコンテンツを観ながら、ちょっと心配になっていた・・何せ、仕掛けが寸詰まりになっているのだから・・もちろんそこには、前述したとおり、素晴らしいグランパスの守備があったのは確かだけれど・・それにしても、うまく抑え込まれ過ぎ・・やはり、詰まった状況を打開できるような「攻撃の変化」をドライブできる中盤のリーダーが必要・・中央から行きすぎたら、サイドへ開くとか、パスばかりじゃなく、たまにはエメルソンに強引なドリブル突破をさせるとか・・

 ・・その視点で、前線が詰まったら、エメルソンを下げて「チャンスメイカー」にするのも有効な手段だと感じた・・何せヤツは、レッズの攻めが寸詰まりになることの元凶になる頻度が一番高いのだから(最前線のフタ!・・それにボールの動きを停滞させる張本人!)・・でもこの試合で、最後の時間帯に二列目をやったときは、可能性を感じさせるプレーを披露した・・ヤツが二列目に入り、レッズ選手たちが「そこ」にボールを集めはじめたら、これは相手にとって非常に危険な存在になる・・何せ「あのエメルソン」がフリーでボールを持ち、前を向く頻度が大きく高まるのだから・・そこには、ドリブル突破あり、中距離シュートあり、ドリブルすると見せかけたスルーパスあり(以外とパスもうまい!)・・エメの後方へのコンバートは、もちろん絶対的なエマージェンシーの場合だけだけれど・・

 フ〜〜ッ・・一気にキーボードを叩きすぎて指が痛くなってしまった(爆発的なフリータイピング!)。あっと・・まだ書きたい別なテーマがあったハズなんだけれど・・何だったっけ・・さて?? あっ・・そうそう・・グランドチャンピオンシップのことでした。

 要は、セカンドステージでのマリノス戦、ナビスコ決勝でのFC東京戦、その数日後のエスパルス戦、そしてこのグランパス戦で見られたとおり、相手は、レッズ得意の仕掛けを抑制する戦術を会得しているということです。まあ例えば・・エメルソンを筆頭にした「個のドリブル突破」をさせない・・そのために、徹底したマンマークで、パスを受けたドリブラー達を「振り向かせ」ない・・そんな「寸詰まりサッカー」がつづいたら、確実にレッズ前線の足が止まる・・それこそが思うツボ・・前線の足が止まってしまうことで、彼らが、前線のスペースを潰してしまう(最前線のフタになってしまう!)・・だから後方からの押し上げをベースにした組織コンビネーションもうまく機能しなくなる・・そして相手は(特にマリノスは)まずシンプルに最前線へロングパスを飛ばしておいてから、人数バランスを見ながら「素早く」バックアップへダッシュするという、カウンター気味の組織的仕掛けをつづけるということです・・要は、我慢比べになるということです・・そんな我慢比べになったとき・・やはり、レッズに分が悪いと誰もが思うでしょう?!・・だからこそ、前述したような「大きな変化アイデア」をいくつか用意しておくことが大事になってくる・・そして、そのアイデアを実効あるカタチでグラウンド上の現出するために、しっかりとした「イメージトレーニング」を積んでおく・・

 とにかく、次の柏戦は、「準備」という視点でも、ものすごく大事なゲームになります。入れ替え戦のボーダーラインにいる相手も必死ですからネ。とにかくレイソルは、持てるチカラとアイデアを駆使したギリギリの勝負を仕掛けてくるに違いありません。だからこそ、レッズにとって願ってもない「学習機会」というわけです。もしこの試合で選手たちの意識が少しでも「低落」したら・・。ガンガン責めまくりますよ、私は。

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 最後に、監督会見でギドを示した興味深い「姿勢」について一言。要は、勝者のメンタリティーをいかに高揚させるのかというテーマです。負けん気の強いギド・ブッフヴァルトは、常に、負けるのことの意味を、選手たちに強烈に体感させつづけたということです。例えば、最後の時間に逆転されたファーストステージでのガンバ戦。そこで彼は、かなり厳しい言動で負けたことを責めることで、その意味を強烈に意識させたと言っていたのです。まさに「それ」が、ギリギリの展開のなかから抜け出して勝ち切れるかどうかというサッカーの不条理メカニズムを、少しでも主体的にコントロールできるようになれるかどうかを決定する最重要ファクターなのです。世界チャンピオンのギドは、そのことをよく知っている。1990年ワールドカップでマラドーナを抑え切ったときの闘うマインドしかり・・彼がレッズでプレーしていたときに、レイソルでプレーしていた全盛期のエジウソンを完璧に抑え切ったときの闘うマインドしかり・・。

 まあ、とはいっても、まだまだギドも学ばなければならない。でも私はものすごくポジティブに捉えています。彼を見ていて一番可能性を感じることが、その学習能力の高さですからね。前向きで真摯な態度・・。期待しましょう。

 



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