湯浅健二の「J」ワンポイント


2003年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


 

第10節(2003年10月19日、日曜日)

 

ヴェルディーの高慢なプレー姿勢がハナに付き過ぎました・・レイソル対ヴェルディー(0-2)

 

レビュー
 
 久しぶりの柏サッカー場。やはりサッカー専用競技場はいい。記者席は狭いけれど(身体が日本サイズを超えている私にとっては切実・・)、またスタジアムの全体規模は小さいけれど、当時の(1970年代の)ドイツを思い出しながら、そこには「際ビジネス」であるプロサッカーの原点ともいえる雰囲気があると感じるのですよ。その感覚が何なのかは、これから考えてみよう・・。

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 さてこの試合での私のテーマですが、私が脳裏に設定したのは「明神」。久しく見ていなかったので、彼の発展プロセスを確認しておかなければという気になったというわけです。もちろん、優勝争いに絡んでいる両チームの勝負という視点もありますし、ヴェルディーの試合内容(オジーが考える良いサッカーの実現度など)という視点もありますけれどネ。

 そして、ゲームが始まってすぐに、「あ〜〜、やっぱり明神は良いサッカー選手だ・・」と感嘆していました。あの、攻守にわたるインテリジェンスふあれるプレーぶり(実効パフォーマンスレベル)は相当なレベルにある。たしかに才能レベルには限界があります。でも、様々な選手タイプを組み合わせなければならないチーム作りのなかでは、確実に必要になる選手タイプなのです。もちろんレイソルに限らずネ・・。

 まあこの試合では、両チームの守備的ハーフコンビに注目しようと思っていたとも言えそうです。なんといっても彼らは、攻守にわたるチームの重心ですからネ。ヴェルディーでは、リンリン・コンビ(林と小林慶行)。レイソルでは、下平と明神。

 さて・・なんて思っていたのですが、試合が進むにつれて、それとは別の視点でレポート論旨を展開しなければと思うようになってしまいました。

 プロにはあるまじき斜に構えるサッカー・・。もちろんヴェルディーのことですよ。自分たちの優れた能力をひけらかし自己満足に浸る連中・・彼らのプレーからは、能力を最大限に活用し、全力を出しきって(もっと)美しく、(もっと)勝負強いサッカーを実現していこうなどといった前向きのマインドは感じられない・・たぶん彼らにとってそんな発想は、青臭くダサいものなんでしょうネ・・それよりもスマートに、効率的に・・ってか。ホント、彼らに高い能力が備わっているからこそ(やろうと思えば何倍も良いサッカーができるからこそ!)腹が立って仕方ありませんでした。

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 ヴェルディー選手たちの(もちろん全員ではないけれど・・)基本的なプレー姿勢は、見れば見るほどフラストレーションがたまる、たまる。

 ヴェルディー選手たちは、本当に上手い。全員のテクニックレベルが非常に高いのですよ。とはいってもそれは、諸刃の剣。彼らの場合は、その上手さを、サッカーの質の向上ではなく、いかに「楽してサッカーをやるか・・」、「いまのJのレベルに応じたサッカーをやればいい・・」という心理的に不健康な方向へ活用してしまっている?! 私には、そう思えて仕方ありません。もちろんそれも一つの「自然な」考え方ではありますが、「常に最高を目指さなければならない」というプロの場合は、許されざる姿勢だとすることができます。まあ湯浅がナイーブに過ぎるのかもしれませんがネ・・。

 私は、そんな「上手さ」を、チームプレーの機能性向上を目指して活用させるためにオジー・アルディレスがやってきたのだと思っているのですが・・。彼らに「世界を意識させる」ことで、まったく別の、より高い次元の目標イメージを描かせる・・。たしかにオジーが監督に就任した最初の頃は、選手たちのプレー姿勢が大きく活性化されました。それでも、ここのところの彼らのプレー姿勢は、また昔の方向へ逆戻りしているように感じられてならない・・。

 上手いから、相手(レイソル)のプレッシャーをかわせる・・自チーム内で余裕をもってボールをキープできる・・それでも、仕掛け意図のないポゼッションだから、それが最終勝負シーンの演出につながるはずがない・・。まあ、足許パスのオンパレードだから、それも道理です。

 ヴェルディーの「ポゼッション偏重サッカー」は、自チーム内でボールをキープすることの意味を曲解した現象だということです。自チーム内でボールを確実に「動かすこと」は、次の仕掛けのファウンデーションでなければなりませんからね(選手たちに、そのことの共通理解がなければならない!)。私の目には、彼らのポゼッションの目的が、本来そうあるべきモノとは違うと思えてならないのですよ。

 とにかく各ステーションでの「こねくり回し」が目に余る・・だから組織パスプレーとボールがないところの動きのコンビネーションイメージが出てこない(プレーの有機連鎖イメージがない)・・仕掛けは、単独ドリブルがメイン(まあツボにはまれば威力を発揮!)・・一体何を考えているんだ・・まあ、サッカー本来の攻守に目的などは何も考えていないんだろう(局面での逆取り=スペース攻略=しか考えていない?!)・・当たりにくる相手のアクションの逆を取って悦に入っている・・まあこれはサーカスだネ・・。こんなことを書いても、少しも書きすぎだと思いません。

 もちろんオジーも、そんなネガティブ現象を感じているに違いありません。「とにかく、しっかりとボールを動かし(ボールのないところでしっかりと動き)、リスクにも積極的にチャレンジしていくような積極的で魅力あるサッカーを目指していることには変わりはない・・」。第8節で(内容悪く)グランパスと引き分けた後の記者会見で、オジー自身がそう語っていたものです。

 とはいっても、結果がついてきている現状では、プレー発想を修正させる作業は簡単ではありません。彼が就任したときのヴェルディーはドン底状態だったから、様々な「刺激」を与えることで、攻守にわたる「ボールがないところでのプレー」にも真摯に向き合わせることができたということでしょう。だからオジー就任当時は、劇的にサッカー内容が好転した。ところが今は、勝ち星が先行することで気持ちの余裕が出て、またまた自分たちの上手さを実感しはじめた選手たちの心に「諸刃の剣のワナ」が口を開けて待っていた・・っちゅうことなんでしょう。

 圧倒的にボールを支配するヴェルディー・・でもそれがうまくチャンスメイクにつながらない・・ボールのこねくり回しがあれほどひどかったら、ボールなしのプレーが緩慢になるのも当然・・あれでは、クリエイティブなムダ走りという発想が発展するはずがない・・あるのは、効率的に(なるべく疲れないないように)プレーするというアイデアだけ(?!)。

 それでも前半35分には、三浦淳宏の天才が爆発し、ヴェルディーが先制ゴールを奪ってしまいます。三浦淳宏が、左サイドからドリブルで切れ込み、キャノンシュートを決めたのです。まさに大砲シュート。放たれたボールは、見事に、レイソルゴール右上角に飛び込んでいきました。これでヴェルディーの「1-0」。そして彼らは、もっと深く「甘美なワナ」の虜になっていく・・フ〜〜ッ・・。

 とにかく、才能あふれるヴェルディー選手たちが、持てる才能の限界を追求することなく効率的なプレーばかりを志向する姿勢(全力を出し切ろうとしないプレー姿勢)に、心底憤っていた湯浅です。また、(たしかに吹っ切れた後半は迫力あるサッカーを魅せましたが・・)そんなプレー姿勢の相手にやられ過ぎだった(ちょっとビビリ気味のプレー姿勢を感じた=彼らは、ヴェルディーの上手さに気後れしていた?!)レイソルも情けない・・。

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 (後半のレイソルの巻き返しや、エムボマのだめ押しゴールなどに言及しないとか・・)ちょっとレポートが中途半端ですが、まあこの試合で私が言いたかったことは書いたつもりです。

 まあ簡単にまとめると、こんな感じですかネ・・ヴェルディーは、勝ったとはいえ、決して褒められた内容ではなかった・・たしかに勝ち点で首位に並んだとはいえ、こんなゲーム内容ではどこまで行けるやら・・これからの、オジーのウデによるサッカー内容の巻き返しに期待がかかる・・その視点では、あれだけの高い能力を秘めたチームだから、その変革プロセスは観る方にとっても大いなる学習機会になるに違いない・・(また両チームの守備的ハーフについて・・)それでも、ヴェルディー守備的ハーフの小林慶行のプレー内容は、以前にレポートしたように発展傾向を維持している・・逆に林は、以前の怠惰なプレーレベルに逆戻りしてしまっている(たしかに部分的には高い効果レベルをみせたものの、あまりにサボリシーンが目立ちすぎる!)・・レイソルの明神と下平は、両人ともにそこそこの出来・・とはいっても、チームの沈滞ムードを盛り上げることができなかったのは、チームリーダーでもある二人の責任だとすることができる(特に明神は、キャプテンなのだから、もっと激しい自己主張をしなければならない!)・・等々。

 



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