湯浅健二の「J」ワンポイント


2002年J-リーグ・セカンドトステージの各ラウンドレビュー


第2節(2002年9月8日、日曜日)

まだまだフラストレーションが・・レッズ対ベガルタ(1-0、延長Vゴール!)

レビュー

 この試合はテレビ観戦。ということで、両チーム別々にポイントだけをまとめることにします。

 まずベガルタ仙台。そのポイントは、とにかく組織的によく頑張って守り、レッズに、(押し込まれている割には)決定的シーンを作り出させなかったということですかね。「4 X 4」の二つのラインが、バランス良く組織をつくり、マークの受けわたしも、ある程度はうまくいっていたということです。もちろんそれには、レッズの攻撃が、限りなく「個人勝負」に偏っていたということもありますがネ。「一旦決まった起点」からボールが動かず、そこから例外なく突破を図る相手だから、守備の集中という状況も演出し易かった・・。

 それにしても、ドカン、ドカンと、たくさんのシュートを打たれました。それらのほとんどは強引なもの(中距離シュート)だったから、守備組織が崩された(ウラを突かれた)というわけではありませんが、それでも前半の、素早いサイドチェンジでボールを持ったレッズ左サイドの平川からゴール前へ出されたラストパスのシーン(田中が、決定的スペースへ飛び込みシュートを放つも、バーを大きくオーバー)と、後半のカウンターシーンでは(これも平川の中央ドリブルから、田中へのラストパス)、完璧なチャンスを作り出されてしまいました。

 とはいってもそれ以外では、守備ブロックの全員がしっかりとポジショニングバランスをとって、レッズの「個人勝負」に対処していましたよ。GKの小針も、安定したゴールキーピングを魅せていましたしね。でも、最後の最後になって、エメルソンに左サイドを突破されてしまって・・。

 ベガルタの攻撃では、後半になってやっと良いところが出はじめ、シンプルにつなぐことでサイドから攻め上がるチャンスを作り出しました。でも、単純なクロスでは、そう簡単にはチャンスを作り出すことができない。ベガルタが作り出した三つの決定的シーンのうち、二つは、素早いサイドチェンジから生まれたものでした。それらは、右サイドからの攻め上がりから、素早いサイドチェンジで、逆サイドにいた山田隆裕が「完璧な1対1」の勝負に入れたシーンと(一人を抜き去ってシュート・・惜しくも右に外れる)、同じサイドの展開から、最後は藤吉信次が完璧なフリーシュートのチャンスを得たシーン(キックミスでゴール左へ・・)。三つ目の決定的チャンスは、単純なタテパスから、それを走り抜けながら受けたマルコスが、うまくレッズのマーカーを身体でブロックしながらシュートを放ったシーンでした(レッズGKの正面に飛んでしまった・・)。

 前半は、もう完全にレッズペースでしたから、それに耐え切ったベガルタに、美味しい「ご褒美」が・・なんて、彼らが決定的チャンスを作り出すたびに、ハッとさせられてしまいましたよ。

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 さて対するレッズ。まあ前回(四日前のナビスコカップのコラム)と同じようなコメントになりそうですから短くまとめることにします。

 例によって彼らは、カッチリと堅い(守備のチーム戦術に忠実な)守備ブロックをベースに、左サイドの平川、右サイドの山田、そして前線のエメルソンと田中が、そこそこの危険な臭いを放つ「単独勝負」を仕掛けるという攻撃を、これでもか、これでもかと繰りかえします。バックアップするのは、守備的ハーフの内舘と、(少しだけ)前気味のハーフ鈴木啓太。彼らの、攻守にわたる献身的なフォローアッププレーは光っていましたよ。

 それでも、あれだけ「同じテンポ&イメージ」の(変化が乏しい)攻撃を繰り出すのでは、強化されたベガルタの守備ブロックを崩すのは難しい。そして「詰まった状態」での中距離シュートや、アバウトなラストパスやクロスに終始してしまう・・。

 ボールをしっかり動かすというイメージを全員が「シェア」すれば、彼らの単独勝負能力が倍加されて活きてくるのに・・。何といっても、相手守備の「薄い部分」を突いていくというのが、攻撃の基本的な発想ですからね。でもまあ、効果的なボールの動きを演出するためには、全員の「安定した発想(=攻撃のチーム戦術)」をベースにした、「ボールがないところでの動き」と「シンプルな球ばなれ&ムーブ」が大前提ですから、様々な「特異ファクター」が錯綜している今のレッズでは難しい・・!? また、何といっても約一名、自由にプレーしていいポジションにいるにもかかわらず、まったく動かず、つなぎプレーに終始する選手が二列目に立ちはだかっているんですからネ。

 とにかく、あれだけゲームを支配していながら、うまく(組織的に)決定的場面を演出できず、単独の勝負ばかりを仕掛けていくレッズ攻撃に、フラストレーションばかりがたまっていた湯浅でした。比類のない能力を秘めたエメルソンという存在の光と陰!?

 こんなチーム状況は、そうそうお目にかかれるものではありません(エメルソンが所属したクラブでは多かれ少なかれ、同じような現象が!?)。このままでは、攻撃での普遍的なテーマである「組織と個のバランス」に対する「マインド」が、取り返しのつかないところまでいってしまう・・。とにかく、ここからのハンス・オフトのお手並みを注目することにしましょう。



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