湯浅健二の「J」ワンポイント


2002年J-リーグ・セカンドトステージの各ラウンドレビュー


第11節(2002年10月26日、土曜日)

順当な結果でした・・(マリノス対ジュビロ=1-3)

レビュー

 さてこの試合、まず、両チームのディフェンスにスポットを当てることで、それぞれの攻撃について言及するというロジックフローで書きはじめることにしましょう。要は、両チームの選手たちが、「どのように」相手からボールを奪い返しているのかのプロセスを追うことで、彼らの攻撃の発想コンテンツ(質)を探ろうというわけです。

 まずジュビロ。前線からの忠実なチェイシング&チェックはいつものとおり。そんな守備でのファーストアクションと「連鎖」するように、周りの味方が、複数の「次のパスレシーバー」に対する包囲網を狭めていきます。名波、藤田、河村、福西、服部たちが展開する、意図が満載された「読みベースの寄せ」はインプレッシブそのものじゃありませんか。彼らの守備イメージが、明確に連動していることの明確な証です。そんな、守備における「ボールがないところでの忠実アクション」をベースにした組織ディフェンスこそ、彼らの強さの秘密だといっても過言ではない!? そして、効果的なインターセプトや、相手がトラップする瞬間を狙ったフェアなタックルなど、質の高いボール奪取を魅せつづけるのです。

 逆にいえば、マリノスの攻撃ファウンデーション(ボールの動き)に、ジュビロの「読みの連鎖」を断ち切れるだけの素早さと広さが足りないということです。それに対しジュビロのボールの動きは、例によって、素早く、そして広大・・。だからマリノス守備は、狙いすました「集中」がままならず、「分散」させられた状態で(「個の勝負」という局面で)、ボール奪取にトライせざるを得なくなってしまう・・。

 どんな考え方(どんな守備のチーム戦術)であれ、最終的には「個の勝負」になるわけですが、そこに至るまでのプロセスに、相手の攻め方との関係で、どれくらい「組織的ファクター(発想)」が内包されているのか・・。それが「視点」のポイントだったというわけです。

 ボールがきて「しまった」ことで発生する個の勝負と、明確な連動イメージをベースに、ある程度意図して(予測ベースで)ボール奪取の局面に追い込んでいくことには、大きな次元の隔たりがある・・。両チームの間に、大きな個人能力の差があるわけではありません。それでも、ディフェンスにおける局所的な「現象」では、かなりの差を感じていた湯浅だったのです。

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 もうこれまで何度も書いてきたことですが、ジュビロの選手たちが、「パス出しタイミング」のイメージを明確にシェアしていることには、ものすごく大きな価値があります。ボールを奪い返した地点から、ある一定の「シンプルなリズム」で、確実に、そして素早くボールを動かしつづけるジュビロ。全員が、パスが来る!と「常に」意識できるからこそ、ボールがないところでのアクションが活性化されるというわけです。

 それがあるからこそ、組み立て段階ばかりではなく、最終勝負の仕掛けにおいても、ボールの動きと選手の動きが有機的に連鎖しつづけるというわけです。要は、ボールがないところでアクションを仕掛ける(フリーランニングをスタートする)選手たちの「確信レベル」が高いから、そのフリーランニングに「走り抜ける勢い」がある・・、だからこそ、そこへのラストパスが成功する確率が高くなる・・という「善循環」につながるのです。もちろんボールホルダーにしても、「この状況だったら、アイツは、あそこに走り込むはずだ・・」という強い確信を抱けることは言うまでもありません。

 そしてそれが、最終勝負局面における、決定的な「動きの連鎖(=ボールの動きと選手の動きの連動性)」のベースになっているということです。

 このサッカーの質の差は、「2-1」になってから、より顕著になったと感じます。

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 そして試合自体は、両チームともに攻め合うという、エキサイティングな展開になります。

 まあマリノスとしては、2点もリードされていますから、攻め上がらざるを得なかったわけですが、前述したように、「強引」に突っかけていくマリノスの攻めを、確実でダイナミックな守備で冷静に受け止め、そして、相手の「決定的スペース」を突くというクリアな意図が満載された危険なカウンター攻撃を仕掛けていくジュビロといった構図です。それにしても、最終的なシュートスポットも含む勝負のポイントを事前にイメージし、そこを忠実にケアーするというジュビロのクリエイティブ守備は、安定感抜群でしたよ。

 最後に、名波について。前回のコラムで、名波の調子がちょっと低落気味・・!? なんて書きました。だからこの試合では、彼のプレーを意識して観察していました。そして思ったものです。たしかに最高の「フォーム」で試合に臨んでいるというわけではないし、彼の攻守にわたるアクションが「直接的な成果」を挙げないシーンも多々あったけれど、その「発想」は、まだまだ一流。なにせ、攻守にわたって全力で展開するプレーのほとんどが、仲間の「次の実効プレー」の明確なキッカケになるのですからね。

 ジュビロが挙げた「だめ押しの三点目」を演出したのは名波でした。ボールを奪い返し、ドリブルで相手数人を引きつけてから出した、高原への「最初の展開パス」は素晴らしいの一言。そして高原からのダイレクトパスから、中山ゴンが冷静にゴールを挙げます。このシーンでは、中山ゴンの「フリーランニングの継続」、高原のダイレクトパス、そして中山ゴンの、「これぞゴールゲッター!」という確実なシュートが目立ちに目立っていました(飛び出してきたGKの肩口を抜くシュート!?)。でも私は、名波にも「0.5点」はあげなければ・・なんて思っていたものです。この試合で彼が為した「全体パフォーマンス」の正当な報酬としてネ・・。



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