湯浅健二の「J」ワンポイント


2002年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第5節(2002年4月7日、日曜日)

エメルソンのレベルを超えた天賦の才と、アリソンの復活・・レッズ対サンフレッチェ(4-1)

レビュー

 さて何から書きはじめましょうか・・。

 まあ、まずはアリソンからにしなければフェアじゃないでしょうね・・。いままで、彼に対して厳しい言葉を書きつづけてきました。それも、常に「フォロー」で書いているとおり、彼が「できる」ことを知っているからに他なりません。「できる」ヤツが、やらない・・。これほどアタマにくることはありませんからネ。昨年、彼が来日した当時から、どんどんと彼の「緊張感」が減退していき、「残留」が決まってからのプレーには、ほんとうに怒りばかりがこみ上げてきたものです。

 その傾向は、今シーズン当初も、あまり変わりありませんでした(プレー姿勢に、明確な変化が見られないと感じていました)。とにかく、守備でも攻撃でも、彼が「行かなければいけないシーン」で、遅れてしまう(または、「行く」ことに対する意志そのものがない!)・・。そしてプレーが後手、後手になることで、どんどんと彼自身のプレーにダイナミズムが欠けていく・・。

 それが、前節のガンバ戦も含めて、大きく改善する兆しを感じるのです。もちろん、まだまだ「運動量」では不満ですが、攻守にわたる「実効レベル」では、もう脱帽・・というシーンを、連続して演出するんですよ。特に、後半の半ばを過ぎたあたりからは、攻守にわたる中盤の王様として君臨してしまって・・。

 まあ彼は、これまでに私が言ったり書いたりしていることなど気にしてなんかないでしょうが、もしちょっとでも意識していたんだとしたら、この日のパフォーマンスについて、「ウルサイ評論家め!ざまあ見ろ!」なんて思って欲しい湯浅です。とにかく私は、究極的なモティベーションは、怒り等の「人間心理のダークサイド」にあると思っていますからネ(だから、彼のことを意図的にプロボケート=挑発=した!?)。とにかく、自分自身の闘う意志をベースに、「実効」という結果を出しはじめたアリソンに対し、オメデトウ!と言いたい湯浅でした。

 それでも、もっと、もっと走れよ(もっとコンディションを上げろ!)。前半の20分すぎあたりまでのパフォーマンスは、誰もが納得するものじゃない・・。攻守にわたるクリエイティブなムダ走りこそが、美しく、強いサッカーの「唯一の基盤」なんだから・・。

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 この試合は、サンフレッチェのサッカー、そして日本を代表するストライカーになるキャパを備えている久保にも大いなる興味をもって観戦していました。

 それでも、内容は「??」。はじまって20分すぎ(レッズの同点ゴールが決まった後)に、サンフレッチェは、左サイドのミロを、桑原と交代させてしまいます。何か、「戦術的な決まり事」を破ったかしたんでしょう(懲罰的な交代!?)。それとも、戦術的な交代!? アタマにきているミロ。さて、何だったのでしょうか。そこは、外部には見えにくいところではあります。

 まあ、そのことは置いといて・・。とにかくサンフレッチェは、レッズの「マン・オリエンテッド」な忠実ディフェンスに、まったく対策を見いせなかったことだけは事実です。開始5分の久保の先制ゴールのシーンは見事だったんですが・・。それは、右サイドでボールを回すことでレッズ守備陣を集中させ、そのウラを突いて挙げたゴール。見事に、逆サイドへのラストパスを決めたんですよ。そこには、久保が、坪井の「ボールウォッチャーのスキ」を突いて決定的スペースへ走り込んでいた・・。いや、素晴らしいゴールではあったんですが、その後がね・・。

 レッズの最終ラインも「マン・オリエンテッド」。そして「足の遅い」井原がスイーパーです。ということで、井原のポジションは、「早めに下げる」という傾向が強い。そして、彼の前にスペースができる。でもサンフレッチェは、そのスペースを使うだけのアイデアが足りなかった・・。

 開始40秒のことでした。サンフレッチェが右サイドから攻め上がります。この状況で、例によって井原が大きく下がって「カバーリング・ポジション」に入ります。そして、井原の前に空いた大きなスペースへ、(たぶん)藤本か藤崎が、後方からズバッと押し上げてきたんですよ。もちろんフリーで・・。そして、そこへのパスを受けた藤本か藤崎が、結局は、井原との一対一になってしまいます。最後は、井原が外され、センタリングがレッズゴール前に送り込まれました。フ〜〜ッ。

 レッズ守備ブロックの「弱点」が如実に見えたわけですが、結局は、そのシーンがサンフレッチェ攻撃陣の「仕掛けイメージ」にまで昇華しなかったようで・・。

 相手のレッズは、自軍ハーフに入ったら、限りなく「マンツーマン」に近くなるのですから、とにかくまずしっかりとボールを動かし、パスレシーブ&素早いショートパス後の、次のパスを意識した「ダッシュ」というコンビネーションを明確にイメージし、何度も何度もトライをつづけていれば、確実に活路が開けたのに・・。

 久保は、しっかりと走っていましたし、たまには、レベルを超えた才能を魅せていましたよ。それでも、タテパスが「付けられる」シーンは希。もっと、もっと彼にパスを出せば、そこからの危険な展開だってあったハズなんですけれどネ。何といっても彼は、しっかりとポストプレーができるんですから・・。もし彼がジュビロにいたら・・。フ〜〜。

 ちょっと、サンフレッチェのサッカーに落胆した湯浅でした。

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 さてレッズ。

 エメルソンの「天賦の才」については、もう語るまでもありません。それよりも私は、二列目に入った福田の「機能性」が、ものすごく心配でした。攻守にわたって、流れに乗り切れないんですよ。このことについては、開幕から、もう明白な現象でした。

 そしてこの試合でも、単なる「中継プレーヤー」としてしか機能せず、パスを回しても、その場に止まって様子見・・というシーンの連続。守備でも、まったくといっていいほど実効ある機能性が見えてきません。

 例えば、アリソンが、ガンガンと相手ボールホルダーに対してプレッシャーをかけているシーンを想像してください(実際にあったシーンです・・)。アリソンは、ボールを直接奪えないまでも、相手にプレッシャーをかけつづけ、パスコースは「もう、ここしかない!」という状況まで相手を追い込んでいきます。その「ここしかない」というパスコースにいる相手をマークしなければならなかったのは福田。ただ彼は、まったく反応せず。その相手への「逃げパス」が通った「後」になって、ゆっくりとチェックにいくだけ(インターセプトや、トラップの瞬間を狙ったアタックにターゲットを絞っていなければならなかったのに)・・。フ〜〜。

 私は、多くのレッズファンの方々同様に、彼がレッズで為してきた成果を、本当に高く評価しています。それでも、今の彼は、まさに「ゲームの流れのアウトサイダー」。攻守にわたって、まったく決定的な仕事ができないのです。

 二列目は、慣れないポジション!? いやいや、それは次元の低い言い訳にしか過ぎません。彼自身も、そんな「慰め」に納得はしないでしょう。とにかく、彼が機能していないことは、彼自身が強烈に意識していることでしょうから・・。

 その他では、前節のガンバ戦もそうでしたが、右サイドの山田からの効果的なパスも目立っていたことを書かなければ。ガンバ戦では、得点シーンも含めて、何度も彼からのタテパスが、決定的チャンスを萌芽させていました。まあそれは、アリソンと福田が機能していなかったからなんですが、この試合でも、アリソンが機能しはじめるまでは、山田のパスや、仕掛けドリブルが目立ちに目立っていたんですよ。

 またもう一人、鈴木啓太。素晴らしい「縁の下の力持ち」でした。後半では、彼とアリソンのコンビが、中盤守備において(=次の素早い攻撃のファウンデーションとして)抜群の「実効」を伴うプレーを披露するようになっていきます。やっと、見ていて楽しいサッカーになってきた・・なんて思ったモノです。

 これで、阿部と石井のフォームが「トップ状態」まで回復し、新戦力が実力を発揮してくれば、レッズのなかに「本物の競争環境(健全な緊張環境!)」が整備されてくる・・。さて、どこまでレッズを、「テンション(緊張関係)という剣が峰を突き進むグループ」にまで発展させることができるか。これからのハンス・オフト監督、ビム・ヤンセンコーチの「ウデ」に注目することにしましょう。

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 いま、浦和の駒場競技場でレポートをフィニッシュしたところ。これから、テレビ埼玉の「レッズナビ(2030時スタート)」に出演するためにテレビ埼玉へ向かいます。それでは・・。

 あっと・・次は、チャンピオンズリーグ準々決勝の第二戦。マドリッドでの「レアル対バイエルン・ミュンヘン」をレポートします。ご期待アレ・・



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