湯浅健二の「J」ワンポイント


2001年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第1節(2001年8月11日、土曜日)

よくトレーニングされているコンサドーレは発展しつづけている・・鹿島アントラーズvsコンサドーレ札幌(2-1)

レビュー

 先日、北海道新聞の東京支社が主催する「昼食会」に招かれて講演しました。そのなかで、好調のコンサドーレについて尋ねられ、「しっかとり守ってカウンターを仕掛けるというサッカーがうまく機能している・・」なんていう『骨子』を話したわけですが、次の日の新聞に、その部分「だけ」が強調されて載せられてしまって・・

 実は、その「骨子」には、より詳しいロジック背景がありました(そこまで言及したつもりだったのですが・・まあ「紙面」の関係なんでしょうネ・・)。

 要は、今のコンサドーレのサッカーが、(人数をかけて)受け身に守り、ボールを奪い返したらツートップ(ウィル、播戸・・以前はエメルソン等)へ蹴っておく・・という単純なものから大きくイメチェンしつづけているということです。もちろん「しっかりとした守備」には変わりはありませんが、それが、より「クリエイティブ」な方向へと進化を遂げているだけではなく、それをベースにした攻撃も、より「厚み」をもったものになってきていると感じるのです。

 これはもう岡田監督による(また彼をサポートする現場スタッフたちによる)成果としか言いようがありません。拍手です。

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 コンサドーレのチーム守備戦術は、基本的に、スリーバック(ファイブバック)の前に二人の守備的ハーフを置き、それに前線の三人も積極的に「前から」絡んでくる・・というものです。この試合では、ウィルが出られないということで播戸のワントップでゲームに臨んだわけですが、二列目に入ったアウミール、山瀬(ワールドユースで活躍!)も、積極的に、そして効果的に守備に参加していました。

 その守備の「発想クオリティー」が、素晴らしいんですよ。全員が、互いのポジショニングバランスを常に意識しながら、相手のボールホルダーとパスレシーバーの意図を「常に」明確にイメージしつづけるのです。

 (ボールのないところで守備につく)自分がイメージするパスが来なければ、すぐに、「次の実効あるポジション」へ移動する・・、それも互いのポジショニングバランスに気を遣いながら・・。とにかく彼らが魅せた守備は、「これぞ、全員のディフェンス意図が有機的に連鎖するような本物の守備意識!」というものです。相手からボールを奪い返すという「守備の目的」を全員が明確に意識し、誰一人としてサボらず、クリエイティブに「次の展開」を読むことで「自分主体」のアクションを仕掛けつづける・・。いや、見ていて楽しいことこの上なし・・ってなディフェンスです。そしてこの「高い意識」こそ、現場スタッフの努力の賜なのです。拍手!

 特に、ビジュと森下の守備的ハーフコンビ。特筆モノの活躍を魅せつづけました。もちろん攻撃でのサポートでも、インプレッシブな押し上げです。いや、堪能しましたヨ。

 また「攻撃」でも、明確な発展を感じさせてくれました。素早く、広く、そしてシンプルなボールの動きから(効果的なサイドチェンジがインプレッシブ!)相手守備の薄い部分を突いていこうとするベーシックな発想・・、個人勝負の状況では、ビビらずにドリブル勝負を仕掛けていく・・、また、ピンポイントセンタリングに対する、中で待つ選手たちの「明確なイメージシンクロ」も、かなりのレベルにある・・、そしてもちろん、ボールを奪い返した「瞬間」には、常に最前線の「最終勝負に対する意図」を強烈に意識する(得意の一発カウンター攻撃!)・・等々。

 特に、ボールを奪い返したポイントから、最前線で張る播戸へのベストタイミングの一発ロングパスは、何度もチャンスにつながりました。ボールを奪い返した「瞬間」に、いかに明確に、最前線での勝負(素早いラストロングパス!)をイメージできるかが、ものすごくスピードアップしている現代サッカーにおいて成功をおさめるためのキーポイントの一つだということです。岡田監督の、「意識付けテクニック」の高さを感じます。

 これで、ウィルが帰ってきたら・・。とにかく、「ロジカルな発展」をつづけるコンサドーレに、今後も注目していこうと思った(彼らの発展プロセスに対して強い興味がわいてきた)湯浅だったのです。

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 さて次は、アントラーズについて短く・・

 たしかに勝利はおさめましたし、「基本的なチカラ」でコンサドーレを上回っていることは確かな事実。それでも全体的な「出来」は、まだまだ。そのことは見ている方々が実感された通りです。

 たしかに柳沢は絶好調(特にボールのないところでのアクションと、ボールをもったときの単独勝負へのチャレンジ姿勢が目立ちっぱなし!!)。また彼のパートナーの鈴木も、確実に「自信レベル」を向上させています。それでも、チーム全体としては、まだまだ「ダイナミズム」に欠けていると感じるのです(守備は、例によってまあまあでしたがネ・・)。

 要は、選手たちの運動量(攻守にわたる、自らの読みを主体にした仕掛けアクション!)が、全盛期と比べたら、かなり低調だということです。だから足許パスが目立ち、ボールもスムーズに走らない・・。これでは、最高の集中力で(考えつづける姿勢をベースにした)クリエイティブ守備を繰り広げるコンサドーレの守備ブロックを崩せるはずがありません。

 前半がはじまった10分間、後半20分あたりからの10分間くらいでしたかネ、彼らの「複合的な、ボールのないところでの動き」が連動していたのは・・。

 だから、「流れのなか」でのチャンスメイクがままならない・・(ゴールは、二本ともにセットプレーから!・・それ以外では、立ち上がりの柳沢チャンス以外、目立ったシーンはなし!)。もちろん、コンサドーレの守備が(特に中盤でのディフェンスが!)抜群に忠実だったこともあるでしょう。なんといっても、いつもだったら抜け出せるような素早いワンツーでも、コンサドーレの選手たちの「粘り強いマーク」に、最後はつぶされてしまうシーンが続出・・ってな体たらくだったんですからネ(そのフラストレーションから足が止まり・・心理的な悪魔のサイクルに落ち込んだ!?)。

 左サイドは、新加入のアウグストが良い動きをみせていました(やっと相馬の穴を、ある程度カバーできそう!?)。でも、この日先発だった熊谷はまだ本調子ではないし、二列目のビスマルクと小笠原の出来もかなり低調。中盤でのダイナミズムを演出すべき選手たちに、前半7分という早い段階で先制ゴールを決めてしまったことで(!?)「消極ビールス」が蔓延してしまった・・っちゅうことですかネ。

 こんな出来のアントラーズでは、まだまだ「セカンドステージ優勝」には手が届かない・・と思った湯浅でした。では・・



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