1993〜1998年「ホームゲーム&アウェーゲーム勝率」


ドイツ一部プロリーグ『ブンデスリーガ』の過去35年間の「H&A勝率」


まず例として、ドイツの一部プロリーグ『ブンデスリーガ』の過去35年間における、総合勝率トップ10チームのホームゲーム勝率とアウェーゲーム勝率を見てみましょう。青がホームの勝率、赤がアウェーの勝率です。
ブンデスリーガでは「引き分け」もあるわけで、勝ちを「2」、引き分けを「1」、負けを「0」にして勝率を出しました。ごらんになったとおり、ホームでの「有利さ」は歴然です。
統計的にいえば、これはおかしな数字です。ホームチームだからといって、ルールや用具などにハンディーがつけられるわけではありませんからね。これは、馴れたグランドや移動しなくてもよいなどの「物理的」な有利さだけの結果ではありません。この「おかしな数字」の根拠のもっとも大きな部分が、「サポーターの応援」なのです。
サッカーは「心理ゲーム」。心理・精神状態でパフォーマンスが「20%」に落ち込んだり、「120%」に跳ね上がったりするのがサッカーです。この結果は、強烈なホームサポーターの声援が、いかに選手達を勇気づけるかということの証明なのです。

さて「J」では・・・?


1993年の『J』における「H&A勝率」


1993年、『J』元年のH&A勝率です。いかがですか、なかには、アウェーゲームの勝率の方が高いチームもいましたよね。
これは、まだサッカー文化が定着していなかった頃の典型的な現象だったとすることができそうです。それでも、ホームゲームの勝率を見れば、当時は最下位グループだったグランパスとレッズが、このころから既に強烈なサポーターに支えられていたことが如実にうかがえますよね。


1994年「H&A勝率」


『J』二年目の、1994年シーズンの結果です。
前年同様、グランパスとレッズは、ホームで強さを発揮しています。また、『J』への昇格ムードをそのまま引き継いだ新加入のジュビロ、ベルマーレもホームでの勝率が大きく上回っています。
また全体的にも、ホームが有利という傾向が出てきたように感じられます。


1995年「H&A勝率」


さて、3年目を迎えた、1995年のシーズン結果です。
すべての上位チームが、ホームゲームでの強さを発揮しています。
やはり、シーズン全体で好成績を残すためには、サポーターの応援に後押しされたホームゲームを、確実にものにしていくことが必要だということでしょう。
徐々に、本格的なサッカー文化が芽生えはじめてきたと感じさせられたシーズンでした。


1996年「H&A勝率」


1996年シーズンは、ちょっとおかしな結果になりました。
チャンピオンになったアントラーズを除き、上位チームで、圧倒的にホーム有利というチームがなくなってしまったのです。この結果の意味は?ホームゲームで、サポーターのプレッシャーにつぶされた?!さて・・
4年間を通じ、平均してホームゲームが「かなり」有利だったのは浦和レッズだけということになってしまいました。フェアで強烈なレッズファンの面目躍如といったところでしょうか。
とにかくいまはまだサッカー文化が立ち上がったばかり。これからが、ホームタウン制の真価が問われるということです。



1997年「H&A勝率」


アララッ・・1997年シーズンは、ちょっとどころではなく、大変おかしな結果になってしまいました。
グラフの順番は、前期、後期の「総合勝率」順です。また、複数チームが同率の場合、アルファベット順ということになりますので、ヨロシク。
グラフを見る限り、ホームで「強さ」を発揮したのは、(ホーム勝率が少しだけ上回っているチームはありますが・・)グランパスとサンフレッチェのみということになってしまいました。総合勝率で三位になったマリノスなど、アウェーでの勝率が「90%」に近いのですから何をかいわんや・・といったところ。思わず、データを調べなおしてしまいました。また、過去四年間で、ホームゲームが明らかに有利だった唯一のチーム、「あの」レッズも、1997年シーズンでは、アウェーの方が勝率が高くなってしまったのです。イッタイ何が・・・・??
これは、まだホーム絶対有利という「文化背景」が整っていない「インフラ的な要因」と、新しく導入された「勝ち点制度」による「心理的な影響」ととらえるのが一番素直な分析かもしれません。
つまり、90分が終わって引き分けならば「勝ち点=1」を獲得できるというわけではないアウェーチームが、特別な「アウェー戦術」をとらず、普通のゲーム戦術で「勝ちにいっていた」ということです。それはそうです。引き分けだったら延長戦。それでも決まらなければPK戦ですからね。そしてそれに勝ったとしても、疲れ切った後にもらえるのは「勝ち点=1」のみ。これでは、アウェーだから「注意深く、守備的に・・」などというゲーム戦術がカゲをひそめるのは当然といったところかもしれません。また、同様にホームチームは、「より」しゃにむに勝ちにいきます。つまり、あまりにも「前へ」重心がかかり過ぎた状態になり、相手のカウンター攻撃が成功する可能性を高めてしまうというわけです。とはいっても、これらの意味付けは、あくまでも「たぶん」という域を出ていないことを断っておきます。それは、とにかくまだ「ホームの有利さ」が本当に活かされるところまで「J」が成長していないことは確かなことだからです。

とにかくいまはまだサッカー文化が立ち上がったばかり。これからが、ホームタウン制の真価が問われるということなのですが、それでも「ホームゲーム」の勝率がこんなに低いのでは、ホームのファンの方々も納得しないにちがいありません。昨年の「観客動員」低迷の一因が、こんなところにもあった・・ということでしょうか。98年シーズン、選手諸君には、「ファンの方々なくしてプロスポーツは存在し得ない」ということを十分に意識してゲームに臨んでもらいたいモノです。



1998年「H&A勝率」


 さて1998年シーズンの結果です。

 グラフの順番は、前期、後期の「総合勝率」順です。また、複数チームが同率の場合、アルファベット順ということになりますので、ヨロシク(しつこいですかネ・・)。

 グラフに現れているとおり、1998年シーズンは、上位チームがホームで強く(マリノスを除く)、中位、下位チームで明らかにホームで強かったのは、コンサドーレ、ジェフ、アビスパの四チームだけでした。

 六年目を迎えた「J」にも、やっと本格的な「ホームゲームの雰囲気」が醸成されてきつつあるということでしょうか。それには、一昨年のワールドカップ予選、昨年のワールドカップ本大会も、微妙な影響を与えているのかもしれません。イランとの勝負を決めた、マレーシア、ジョホールバルでの三位決定戦、そしてフランス本大会での、まるで「ホームゲーム」のような雰囲気。それが、日本代表にとって、どれほどの励ましになったことか・・。そんな「経験」を積んで(そのことは日本全体が体感した?!)、やっと「J」にも、本格的なホームゲームの雰囲気が出てきたということなのでしょうか・・。私はそう思いたいのですがネ。
 さて1999年シーズンが始まります。ここでの注目ポイントが、「PK戦」の廃止です。1997年の分析でも書きましたが、そのことは、アウェーチームに、より戦術的選択肢が増えたことを意味します。もちろん最初から「引き分け狙い」などという戦術が成り立つはずはありませんが、それでも、ゲーム戦術をよりクレバーに組み立てることのできる可能性だけは大きくなりました。さて、どうなるか・・注目しようではありませんか・・。

 最後は、前年と同じメッセージで締めたいと思います。『とにかくいまはまだサッカー文化が立ち上がったばかり。99年シーズン、選手諸君には、「ファンの方々なくしてプロスポーツは存在し得ない」ということを十分に意識してゲームに臨んでもらいたいモノです』




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