'98シーズントータル成績


まず最初は、各チームの「勝ち点勝率」と「指数(ゴール数/失点数)」から

このグラフでは、棒グラフが「勝ち点勝率」、折れ線グラフが「指数」です。

勝ち点勝率ですが、勝ち数だけを比べた場合「勝ちの内容」まで言及することができないため、(全てのゲームを90分以内で勝った場合の)最高勝ち点数と実際の勝ち点数を比較することにしました。また指数ですが、この、総ゴール数を総失点数で割った数字は、基本的には「得失点差」と同じ性格のものですが、それでも試合数が多くなれば、単純な得失点差ではあらわしにくい「得点/失点のバランス」から、そのチームの傾向がつかみやすくなります。

例えば、同じ試合数で「A」チームが150ゴールを挙げ、100失点したとします。それに対し「B」チームは100ゴールに50失点。この両チームの「得失点差」はともに「+50点」ということになります。ただ、それを指数であらわすと、「A」チームの「1.5」に対し、「B」チームは「2.0」。このことで、「B」チームの方が、攻守のバランスの良いチームだということが一目瞭然。つまり、得失点差が、単なる「数字の差」のみを表すのに対し、「指数」は「攻守のバランス」を表現できるということです。それに「一試合平均ゴール・失点」を合わせれば、より詳細で正確な分析ができるというわけです。「得失点差」は「成績」を決めるための「数字」。それに対し、ゲーム内容の分析に必要なのが「ゴール/失点・指数」というわけです。

さて内容にうつりましょう。98年シーズン、チャンピオンシップで勝利をおさめたのはアントラーズでした。ただ、シーズントータルの勝ち点勝率では、そのチャンピオンシップで負けたジュビロがトップ。「指数」でも、ダントツのトップです。それは、彼らが「シーズンを通して」最良のサッカーをやり通した一番強いチームだったことの確たる証拠です。

三位のエスパルスですが、指数ではアントラーズよりも上なのに、勝ち点勝率ではアントラーズの下にいます。このことは、ギリギリの勝負強さではアントラーズが少し上回った・・とでも表現できるかもしれません。チャンピオンシップでもアントラーズが、その勝負強さをベースに勝利をおさめましたからね。全体的に見て、このシーズンでは、ジュビロ、アントラーズ、エスパルス、マリノス、グランパス、レッズ、そしてフリューゲルスなど、(このシーズンでの?!)強豪が順当に上位を占めたという結果になったといえそうです。

それにしても、このシーズンを最後に消滅してしまったフリューゲルスは、七位と、良いところにつけているじゃありませんか。全シーズンを通した総合成績でも八位のフリューゲルス(全シーズントータルの記録ページを参照)。私は、これからもフリューゲルスの成績を残し続けるつもりです。『ガンバレ! 横浜FC』という思いも込めて・・

普通、勝率と指数はほぼ比例します。それからすればアントラーズとセレッソは、非常に効率的に「勝ち点」を稼いだとすることができそうです。セカンドステージは15勝2敗と成績が安定したものの、ファーストステージでは「出入りの激しい(負けた時の失点が多い!)」試合を続けたアントラーズ同様、セレッソの場合も、負けたときの失点の多さが目立ちます。特に、消滅が決まったフリューゲルスに七点もブチ込まれて負けた試合は印象的でしたよね・・

とにかく、勝つためには「攻守のバランス」が重要だということが一目瞭然ですよネ。ゴールを量産しても、失点が多ければ上位にいけないし、その逆も同様の結果になるということです。ただ私は、どちらかといえば「優れた守備」が成功のための出発点だと考えています。

つぎには「一試合平均ゴール数」と「一試合平均失点数」を比較してみましょう。


「一試合平均ゴール数」&「一試合平均失点数」比較

ここでは、「結果」としての、ゴールと失点を比較します。「結果としての」といったのは、例えばゴール数ですが、それは「シュートを打った結果」であり、失点も、相手に打たれた「被シュート」の結果だということです。

もちろん、この「一試合平均ゴール数」、「一試合平均失点数」によって、各チームの「最終順位」がほぼ決まってくるわけですが、各チームの「攻撃力」、「守備力」を直接的にあらわす数は、それぞれ「シュート数とシュート決定率」、また「被シュート数(相手に何本シュートを打たれたか)と被シュート決定率(そのうち何本決められたか)」なのです。

さてグラフを見てみましょう。左から「最終成績」にもとづいて各チームを並べました。また、棒グラフの青が「ゴール数」、赤が「失点数」です。ある程度「キレイ」に並んでいるでしょう。もちろん、「勝ち点勝率」のランキングと、ゴールと失点の「バランス」がですよ・・

まあ、ジュビロが「シーズントータルチャンピオン」に相応しいチームだということが如実に証明される数字ではあります。ゴールは、「ゴン」のおかげでダントツ。また失点もエスパルスに次いで二位ですからね(エスパルスはどちらかといえば守備が強いチーム)。

この青棒と赤棒の「差」が得失点差であり、前述の「指数」のベースです。前述したのですが、「指数と勝ち点勝率ランク」のバランスが良くなかったアントラーズとセレッソについてもう一言。グラフで明らかなように、両チームともに、勝ち点勝率ランキングの「両隣さん」たちと比べ、失点の多いことが目立つじゃありませんか。やはり、ちょっとバランスを崩していた・・、それでもしぶとく勝ち点をもぎ取ってランクを上げた・・ということが分かりますよね。

とにかく、確実な守備を「スタートライン」に、積極的な攻めを展開したジュビロに軍配が上がったという結果でした。

さて、次は、各チームの「攻撃力」、「守備力」をはかる基準である、「シュート数・決定率」、「被シュート数・被決定率」の比較です。


「シュート数&シュート決定率」比較

攻撃の目的は「シュートを打つこと」。前述したとおり、「ゴール」は結果にしか過ぎません。つまり「シュート数」が、各チームの攻撃力のシンボルというわけです。

ここでも、グラフのチーム順は「最終成績」に準じます。さていかがですか。シーズンを通じて最高の攻撃力を見せたのは、チャンピオン決定性でアントラーズに破れたジュビロ。また、レイソルとベルマーレも、勝ち点勝率のランキングの割には高い攻撃力を見せていました。彼らの「問題」は守備にあり・・ということが一目瞭然ですよね。

シュート決定率で目立っているのが、グランパス、フリューゲルス、そしてコンサドーレ。

これらのチームは、シュート数自体は「比較的」少ないけれども、ゴールだけはしっかりと奪っている・・ということですが、シュートが少ないということは、決定的な場面にしかシュートを打たない?!、またシュートを打てる場面をクリエイトする「力」に問題あり?!、というようなネガティブ分析につながる、というのが原則。ということは、(もちろんフリューゲルスも含め!!)これら三チームがもっとシュートを打つ(打てる)ようになれば優勝間違いなし?! それとも、それにつれて「決定率」も下がってしまうのでしょうかネ。


「被シュート数&被シュート決定率」比較

守備の目的は「相手からボールを奪い返すこと」。前述したとおり「失点」は結果にしか過ぎません。とはいっても「相手からボールを奪い返す頻度」などの数字データはありません。ですからここでは、便宜上、相手に打たれたシュートの数を「守備力」のシンボルと考えようと思います。

ここでも、グラフのチーム順は「最終成績」に準じます。また、棒グラフが「被シュート数」、折れ線グラフが「被シュート決定率」。ということは、被シュート数、被シュート決定率ともに、小さい方が優秀ということになります。チョット、分かりにくかったですかね・・。

さて分析ですが、ここで目立つのは「被シュート数」ではダントツトップ、つまり、相手にシュートチャンスを作らせないチカラ(つまり総合的な守備力)ではダントツトップのジュビロですが、一旦シュートを打たれてしまったら、比較的簡単にゴールを決められてしまう(被シュート決定率では中位にまでランクを下げる)ということです。

また逆に、一試合平均失点数ではトップのエスパルス、被シュート数ランクでは三位に後退してしまいます。つまり彼らの場合は、シュートはされるが、簡単にはゴールを決めさせないチカラが高いということです。

この、「相手にシュートを打たれる危機的状況における、GKの能力も含めた守備力」を象徴する「被シュート決定率」も守備力の要素のひとつなのです。

この「被シュート決定率」ですが、歴代の最高記録は、1993年ニコスシリーズのエスパルスが打ち立てました。その時の記録は「5.00%」。もう信じられない数字です。相手に20本シュートを打たれて初めて失点するという計算になるのですからね(ちなみに、1998年シーズンのトップ、エスパルスの記録は「9.75%」)。その当時のエスパルスにも優秀なゴールキーパーがいました。「あの」クモと異名をとったシジマールです。確かに、優れた被シュート決定率は、ゴールキーパー「だけ」の貢献によるものではありませんが、それでも、普段はあまり目立たない存在のゴールキーパーを評価するための「数字」の一つだとすることが出来るように感じています。



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