湯浅健二の「J」ワンポイント


2011年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第34節(2011年12月3日、土曜日)

 

継続こそチカラなり・・順当に栄冠を勝ち取った柏レイソル・・心から祝福します・・(RvsRS, 1-3)

 

レビュー
 
 とてもエキサイティングなリーグ最終日。ものすごくワクワクしながら埼玉スタジアムへと馳せ参じました。そして、私が以前から予想していたように、シーズンを通し、攻守にわたってとても「安定したサッカー」を魅せつづけた柏レイソルが、初のリーグ制覇タイトルを手中にした。

 「J2」から昇格して、すぐに「J1」も制してしまうという前代未聞の快挙。それも、内容からしても、まさに順当と言えるリーグ優勝だった。とにかく、日本サッカー史に、これから長きにわたって燦然と輝きつづける素晴らしいパフォーマンスではありました。

 ということで、今日は、もちろんレイソルを中心にコラムを展開します。今シーズンのレイソルだけれど、かなり観ていますよ。スタジアムでもテレビ中継でも。

 例えば、以前のレッズ戦前期のマリノス戦後期のマリノス戦ガンバとの勝負マッチ、ホームで負けたアルディージャ戦と同じくホームで大勝を収めたアルビレックス戦、そして前々節のエスパルス戦と前節のセレッソ戦など。それらのゲームのコラムも参照して下さい。読み返してみても、その論旨はかなり統一されていると思う。

 そんなレイソルについては色々と書くことはあるけれど、この試合については、彼らの安定感というテーマに集中することにしましょうかね。そう・・様々な意味合いを内包する、ハイレベルな臨機応変の(質実剛健)バランスサッカー・・

 そこで、ネルシーニョ監督に、こんなニュアンスの質問を投げた。

 「前々節のエスパルス戦・・前節のセレッソ戦・・ともに先制ゴールを決められ、追いかけるという展開になった・・それでもレイソルは、動じることなく、自分たちの安定サッカーで、逆転ドラマや引き分けを勝ち取った・・この日のレッズ戦でも同じように劣勢に立たされそうなシチュエーションがあった・・それは、レッズの柏木陽介にゴールを決められてからのゲーム展開・・」

 「・・ただレイソルは、見事に、そんな劣勢の風をはね返した・・たしかに(ネルシーニョ監督が言うように)二点をリードした後半の立ち上がりは、ちょっと集中力を欠いていたレイソルだったけれど、そこから(失点という最高の刺激によって1?)再び高い集中力ベースの安定サッカーを取り戻した・・本当に素晴らしいゲーム展開だった・・」

 「・・そこで質問だが・・ハーフタイムに、ネルシーニョさんは、我々の(レイソルの)スタンダード(サッカー)を後半も貫くゾという発言をした・・この、我々の(レイソルの)スタンダードという表現には、ものすごく重要なキーポイントが内包されていると感じた・・ネルシーニョさんがスタンダードと呼ぶモノのなかで、もっとも重要な要素は何だろうか??」

 またまた長くなってしまったけれど、例によってネルシーニョさんは、とても誠実に、こんなニュアンスのコメントをくれた。曰く・・

 ・・我々のスタンダードという視点では、前半のサッカーが理想に近いモノだったかもしれない・・守備での(有機的に連動しつづける)協力プレー・・互いのポジショニングバランス・・レイソルの選手たちは、それぞれのポジションの役割を、しっかりと理解し、そして忠実に実行していた・・

 ・・攻撃でも、どのように攻めるのかという統一されたイメージがうまく連動し、機能しつづけていたと思っている・・それらの、攻守にわたる多くの要素の一つでも欠けたら、我々のスタンダードとは言えない・・

 ・・もちろん過去のゲームでは問題が生じるケースもあった・・たとえば守備のマークが甘いとか、カバーリングが遅れるとか、攻撃を仕掛けていくサイドが偏ってしまうとか・・ただ我々の場合は、そんな問題が生じても、一言、スタンダードを思い出せっ!と言えば、すぐにチームが理解し、まとまるんだよ・・この試合でも(ちょっと集中を欠いて)後半に失点したよな・・その直後に、スタンダードというキーワードを使って、やらなければならないプレーを思い起こさせたんだ・・それが、とても大事なことだった・・だからこそ、最後には勝ち切れたと思っている・・

 フムフム・・

 サッカーでは、一言で、全員が、同時に、共通のイメージを抱けるようなキーワードを作り上げるのは、本当に大事なことなんだよ。

 例えば、読売サッカークラブ時代のこと。当時は珍しかった外国人プロコーチが監督に就任した。オランダ人のファン・バルコム。彼がまずやったことは、チーム共通の「イメージ・キーワード」の開発。そして、「ダイジョ〜ブ!」というキーワードが使われるようになった。

 何が大丈夫なのかよく分からないシチュエーションも多々あったけれど、そのキーワードを聞いた選手たちは、一様に落ち着いたプレーをするようになった(ミスに縮こまるのではなく、再び前向きにプレーしはじめた!)ことも確かな事実だった。

 また、ジョージ・与那城やラモス瑠偉は、「ユックリ〜」というキーワードを開発した。もちろんそれは、前へ急ぎすぎるチームメイトのアドレナリンをダウンさせ、落ち着かせる効果があった。

 ネルシーニョ監督も、同じように、『スタンダードッ!』という表現を編み出したんだろうね。

 そして、その言葉を聞いた選手たちが、すぐに(落ち着いて!)それぞれの状況で自分たちがやらなけれはならない(チーム戦術的な)プレーを、自分たちなりに考え、工夫し、そして勇気をもって実行していくように、(J2時代を通じて!?)粘り強くトレーニングしていった。フムフム・・

 その他にもネルシーニョ監督は、色々な重要キーワードを連発してくれた。

 ・・例えば・・スタンダードという言葉の意味合いを、選手のなかで戦術の整理がスムーズにいったという風に、より具体的に表現したりした・・

 ・・また、スタンダードという言葉が内包する具体的なプレーとして、(攻守や、セットプレー等との)切り替え・・とか、日々のトレーニングでの選手との(粘り強い!?)コミュニケーションの重要性とか・・

 ・・誰でも、どのポジションでもこなせることが大事(ポリヴァレント性!)・・レイソルでは、そのコンセプトでトレーニングを重ねている・・だから誰でも、どこかのポジションに入ったら「その役割を果たせる」・・だから、ポジションチェンジを繰り返しても、選手は、その時点でのポジションの仕事をしっかりとこなすことができる・・等など・・

 また、ある記者の方が、「シーズン中に危機的な状況に陥ったことはなかったか?」と質問したのに対し、ネルシーニョ監督は、自信に満ちあふれた表情でこう語った。

 ・・シーズンを通し、常に「やるべきこと」は分かっていた・・だから、問題が起きても、どのように対処すべきか明確に判断できたし、実際にすぐに(効果的に)処理できた・・

 サッカー内容でも、順当に栄冠を勝ち取ったと高く評価できる柏レイソル。私は、彼らのシーズンを表現するのに、「継続こそチカラなり・・」という言葉ほど相応しいモノはないと確信します。

 ファンの方々やステーキホルダーも含めた柏レイソルの皆さん。本当におめでとうございました。心から祝福します。

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 スミマセン・・レッズについてのコメントは、機会を改めます。悪しからず・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。